第004話、治癒院 一日目、後編


2022/03/04、修正してます。


休憩室は診察室より置くにあり、狭い部屋だ、イスと机があり、疲れた場合は横になれるように簡易的なベッドもある。


「ふぅ~、やっと一息ついたな~」


俺がイスに座り、お茶を飲んで休んでいるとイワ先輩が休憩室に入ってきた。


「お疲れさまです、どうでした?」

「イワさん、お疲れさまです、さっきはすみません」


どうもあの男性はこの治癒院によく来るそうで、今まではあんな態度はなかったらしい、女好きのようだ。


「いえいえ、あの方はどうも女性と接したくてここに来るみたいで、怪我も大したことはなかったです」


(やっぱりそうか、元気だったもんな)


「断れないんですか? 出禁にするとか」


できれば、出禁にしたいんだけど、新人がいきなりこんな提案はどうかと思ったが、常連ならこれからも来るだろうし、あまり関わりたくはない。


「まぁ、セクハラとかが過ぎるようであれば出禁にできますが、今のところそこまでは無いですし、あの人は寂しいんでしょう」


イワ先輩は穏やかな笑顔で話す、あの男性は女性に対しては怒鳴ったりはしないようだ。


(でもあんなのに絡まれて大変だよな~)


「多いんですか? あんなやから


「そんなにはいないですよ、患者さんは様々です、病だけでなく性格などによっても関わり方を考えないといけませんしね、ここには治癒師を補助する男性のスタッフもいるので、いよいよの時はそのスタッフを呼びます、あと"やから"という言い方はあまりよくありませんね」


イワ先輩は笑顔のまま、俺の言葉について、指導する。 つい本音が出てしまった、気を付けなければと俺は反省した。


「すみません…… そういえば、まだ男性のスタッフには会ってません」


ここに来てから女性の職員しか見てない、男性はいないのかなと疑問に思った。


「男性のスタッフさんは主に補助員さんですね、普段は治癒前の聞き取りや治療後の片付け、治療後の患者さんの相手等をしてますからね、午後からは治癒院内を歩いてみてはどうですか? 他のスタッフにも顔合わせした方が良いでしょう」


「そうですね、挨拶していきます」



***



午後から、治療院の中をひとりで歩いてまわる、適当に歩いてよいと許可をもらったのでブラブラしてみる。


「まぁまぁ広いな、ん? こっちは建物が新しいな」


建物が新しくなった、後から増築したのだろうか。 そんな風に考えながら歩いてると突然後ろから声をかけられた。


「誰ですか?」


男性のスタッフだ、背は低めで小太りしている、メガネをかけたオッサンだ。


「初めまして、治癒師のサルナスです」

(オッサンだ、補助の人かな?)


「治癒師? あなたは男ですよね?」


オッサンは怪しいといった感じで俺を見てきた、誤解があるといけないので、すぐに名札を見せる。


「はい、珍しく適正があるそうで、名札です」

ニゴッ


名札には治癒師と書かれている、オッサンはそれよりも俺の笑顔が気になる様子。


「なんか、笑顔がぎこちないですね、そんなんでよく治癒師になれましたね、大丈夫なんですか?」


(初対面で失礼なオッサンだな)


「えと、、、治癒師の補助の方ですか?」


俺は表情を崩さずに会話を続ける、相手は名乗ると同時に愚痴をいいだした。


「そうですよ、タケーダです、治癒師は楽ですよね、給料は良いし、魔法かけて終わりだし、その後の片付けはしなくていいし」


(なんか、面倒くさいオッサンだな)


「失礼しました、新人でもあなたの方が立場は私よりも上ですしね、先ほどの発言は忘れてください、では」


「これから、よろしくお願いします」



***



さらに数分ほど歩いていると、二人目の男性を見つけた、また補助員さんかな、今度はこちらから声をかけてみる。


「こんにちは!」


男性はこちらへ振り向いてくる、今度の男性は目が大きく穏やかな顔をしてた青年だ、俺とあまり年がかわらないみたいだ。


「こんにちは、えーと、新人さん?」


「治癒師のサルナスです、今日からここで働いてます」


男性は嬉しそうな表情を返してきた、愛想が良い。


「あ~噂の! 腕が良いと聞いてます、補助スタッフ主任のヨネーです、よろしくお願いします、男性は少ないから嬉しいですよ歓迎します」


(さっきのと違って感じの良い人だな)


「主任さんですか、よろしくお願いします」


ヨネーさんは喜んでいる様子だ、男性のスタッフは少ないらしい。


「そうなんですね、何人ですか?」


「僕を入れて5人ですね、治癒師(女性)は20-30人くらいかな」


治癒師の女性は男性の4-6倍か、多いな。


「そんなに違うんですね」


「ええ、だから男性の治癒師さん、歓迎!」


(優しそう 年は同じくらいかな)


「よろしくお願いします」


少し雑談をしつつ、俺はイワ先輩の元へ戻っていく。



***



本日のお仕事おわり、初日だから疲れた。


「今日はお疲れさまでした、他の男性スタッフには会えましたか?」

「はい、二名ですが会えました、ひとりは主任さんと聞きました」


俺はイワ先輩へヨネーさんのことを話した、タケーダのことは、別にいいか。


「さっそく主任に会えたんですね、男性は少ないから、あなたが来るのを喜んでましたよ、では明日もよろしくお願いしますね」


「はい、お疲れさまでした」



***



帰宅 時間は18時、サラリーマン時代に比べて格段に早いな、初日としては満足している。


「まずまずな、スタートだな、給料は魔法道具の時よりは少ないけど残業はないしね、あの頃は夜中に帰ってたから今の方がいいや」


さて、寝るまではまだ時間がある、何をしようか迷う。


「さてと、時間があるな…… 筋トレでもするか、研修の時以来、ハマってしまったんだよな、全集中! 筋肉の呼吸~!!」



時間は23時


「そろそろ寝るか、明日はどんな患者さんが相手かな、、、 ぐ~…」


俺は筋肉の回復を促しつつ、眠りにつく。

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