第2章 座敷牢
「いったい、何をお考えになられているのです、若・・・?」
筆頭家老の豊川左近が、大きな声で言った。
「お前も、お前じゃ。若のお目付役として仕えるものを、幼い頃から一緒に悪さばかりしおって。わしの若い頃など・・・」
二人は城の奥の座敷牢に入れられ、説教されている。
和正は懐に手を入れ、横を向いている。
(ふん!クソオヤジ。自分だって若い頃、さんざん上様と遊び歩いたくせに・・・)
定康は頭をもたげ、神妙にしている。
「まーまー、よいではないか左近。こうして定康も反省しとるようじゃし・・・」
君主の泰正がとりつくろうように言った。
「何をおっしゃられるのですか。昨日謹慎がとけたばかりというのに、さっそく夜、城を抜け出しての朝帰りですぞ。このままでは我、松島藩の将来は心もとなりません」
左近が唾を飛ばして言うのを聞きながら、定康の母、時子は含み笑いをしながら言った。
「まったく両人とも、誰に似たのかしら?」
その言葉に、左近は咳払いをして言った。
「とにかく・・・明日には江戸家老の剣持が来て、幕府からの重大な任務をさずかってくるという事ですから、若にはお気の毒ですが一晩、ここで我慢していただきます。和正!よいか・・おとなしくしとるんじゃぞ?」
終始横を向いたままの和正であったが、座敷牢の前から人影がなくなると、定康のそばににじり寄っていった。
「まったく親父の奴は、しつこくてかなわんです。しかし、若には感心したでござる。じっとうつむいたまま微動だにせんだ。さすがは次期藩主じゃ・・・って、寝てんじゃないか?」
定康はずっとうつ向いたまま目をつぶり、静かに寝息をたてていた。
和正もヤケになって寝転ぶと、やがて軽いイビキをかいて眠ってしまった。
冬のシンとした空気が冷たかったが、座敷牢には小春日和の日差しが入り込み二人の影を幾分、長めにおとすのであった。
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