好きと言えない症候群

興梠司

第1話

僕は人に好きだと言えない、例え彼女に「好き?」と聞かれても、うんと頷くことしかできない。「すき」という二文字が言えなく別れたことは何度もあった。


3時間前に別れた彼女もそうだ「好きって言わなかったら別れる」と原宿の歩道橋の上で言われたから「好き」だとは言えなかった、好きというくらいなら歩道橋の上から落ちたほうがマシだと僕は切実に思った、3時間前から僕には彼女はいない、だけど僕はモテる。


4時間後幼馴染みの彩花から公園に呼び出されていた、公園は二人が幼い頃に遊んだ公園で思い出に詰った公園、夕日が僕ら二人を照らしてくれる。僕と彩花はベンチに座り思い出話に浸っていた。

僕の心の中は「告白確定演出!金保留」だと叫んでいた、彩花が僕のことが好きなのは知っていたが2年間僕にはひっきりなしに彼女がいたので彩花が告白できるチャンスなど一度もなかった。


「俊介って今付き合ってる人いないの?」

「いるわけないじゃん」

そういるわけ無い、3時間前にわけのわからない別れ方をしたので3時間彼女がいないのだ、僕は彩花からの告白フラグで盛り上がっていた。


「今って彼女欲しいの??」

「う、うん」

彼女が欲しくないわけがない、ましてや学校でマドンナ扱いされていた彩花なんて俺にさせ高嶺の花だったのだから彩花と付き合えるのは俺からしても本望だ。


「実はね、俊介に紹介したい人がいるの」

「………」

僕の頭の中も・・・

彩花からの告白だと思ってる意気込んでいたのに、違うこの紹介。。確定演出がひっくりがえった瞬間だった、前田慶次がキセルを持っているのに当たらないあの瞬間と同じ気持ちだった。


彩花が紹介したい女の子、由美はミニスカートにいつでも谷間が見えそうなハイネックを着ていた、僕はガッツポーズをした、彩花に劣るがかわいい女の子、街で歩いてたら振り返るレベルの女の子。


「由美です、ずっと前から俊介くんのことが好きでした」

「俊介、由美ちゃんいい子だから大事にしてあげて」


こちらがうんとも言わずに付き合うことが始まった、恋愛の大運動会。

どうせ、僕はすぐに別れることになるのだろう思っていた、女の子はこっちが「すき」と言わなければ不安になる生き物だと知ってはいたが、実行には移せなかった。


一緒にいるから好きってことでいいやんと僕は思っていたし、「すき」という文字を言葉にすると陳腐に聞こえてしまい、好きと言えなかった。


3年前の春

「俊介は私のこと好きだよね」

「好きだよ」

そんなことが繰り返させれいた毎日、僕はユキミのことが大好きで高校を卒業してもなにしても、一緒にいるものだと思っていた。だってお互い好きなら別れることなし、例え悪魔の大王が舞い降りたとしても二人で乗り越えれると思っていた。

別れは一瞬だったユキミから「ごめん、好きな人ができた」と言われた。

僕の頭の中は真っ白になり、好きな人は俺じゃなかったのかと頭をかいた。


僕は好きという本当の意味を知らなかった、好きだと言われてもどうせ嘘だろうと思っていた。本当に好きなら、僕の他に好きな人ができることなんてないと思っていた。



        好きってなんだい?


僕の頭の中はなかにはその言葉が毎日巡回している、好きだと言っているのに裏切られて三年前僕は好きだという言葉を封印した。


由実と付き合いはじめだが由実の愛情表現はすごかった、毎日好きと言わなければ帰らない、かえしてくれない。

僕はひとり暮らしだから支障はないが由美は実家暮らしでおかたい家だったので早く帰らなければならないはずなのにガン無視を突き通していた。 


どうせ、一緒にいるならと始まった同棲、僕は仕事に行くたびに彼女がラインで「私のこと好き?」と聞いてくるがスタンプもしくは既読無視をする。

既読無視をすると由美から電話が来たりするが仕事にかこつけて、電話もフルシカトを突き通す。


そんな好きって言葉が大事なのか? 

好きって言葉がそんなに大事だと思ったことはなかった。「好きって言わなければわかられる」と言われてても別れればすむはなしだった、別れてもすぐに彼女ができるのだ困ることは無かった。好きとはもっと簡単なものだと思っていた。

キスよりも簡単な陳腐なお守り程度にしか思っていない。


とある日彩花の自殺が僕の耳に入った、由美は自殺のことを黙っていた、このときばかりは僕は由美を殴った。彩花会えない現実に涙が出そうだった、泣いている由美を家に置き彩花の実家に走っていった。その時の記憶はない、なにかにぶつかったかもしれない、ぶつかっていないかもしれない。

お母さんに挨拶をし仏壇まで案内をしてもらった、仏壇には笑顔で写る彩花の写真が並んでいた。


「す、好きだったのに、彩花好きだったよ」

と僕は泣きながら声にした。

「好きだって言えるじゃん」と後ろから鼻声の声がする、泣きながら由美が

追いかけてきたのだ。

由美は僕を肩から抱き寄せた。

「先輩の前だけどこれからは一緒にいよう」と


僕はその後も人に好きだと言うことは出来ない

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