大食い魔女の異世界グルメ~オリヴィエの異世界旅行記より~

宇部 松清

 俺が知り得る限り、魔女っていう生き物はかなりの美食家だ。

 まぁ魔女ってのはかなり長生きするからな。やっぱり美味いもんでも食わないと退屈なのかもしれない。


 だから、


「ねぇ、サルちゃん。何か美味しいもの食べに行かない?」


 なんて言われたら、一体どんな美味いもん食わしてくれんのかと、興味津々の俺である。

 ただ、彼女らはとにかく味さえ抜群に良ければ見た目がどうでも構わないわけで、イクウィップスオオウミウシの臓物やら、まだ半分生きてるデンゴロスジャンボヒヒの脳なんていうのも、美味いと聞けば何の抵抗もなくぺろりと食べてしまう。


 だから、普通なら『NO嫌です!』なんだろう。でも俺は一も二もなく『OK行こう!』だ。


 だって俺は彼女のことが大好きだし、彼女の方でも俺はなくてはならない存在なのだ。


 何せ北北西出身のこの魔女は、俺の力がないと空も飛べないほどに魔力が弱いのである。彼女が落ちこぼれとか、そういうことではない。北北西の魔女は皆そうなのだ。


 だからこの場合の、


「食べに行かない?」は

「食べに行きたいから連れてって」なのである。


 これはこの世の美味しいもののすべてを食べ尽くさんとする若い魔女オリヴィエ・ファ・ユランティ・ヨランカ・グズムンラナガン・ノーヴァ・レーニヒ……(以下略)と、彼女のであるこの俺、樹齢2500年の樹人サルメロ=サルバルが旅の中で出会ったグルメの記録である。



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