この苦しみ溢れる世界にて、「人外に生まれ変わってよかった」
庫磨鳥
第1章
第1話
221:識別番号01
記憶がないので顔も思い出せないお父様、お母様はどうお過ごしでしょうか?
息子は気がついたら人外になっていました。
脳内でネット掲示板みたいなのができると気付いて、日記代わりにと使い始めましたがレスを一人で埋めることに心が死にそうです。
222:識別番号01
鏡で見た人外である自分の第一印象はまるで西洋甲冑のようで、どっからか盗んできたかと焦りましたが、なんとこれが今の自分の体だと気付いてとっても魂消ました。
頭にある横棒の隙間から仄暗く光るモノアイに気付いた時は自分の姿ながら思わずビクッと驚いてしまい鏡を落としてしまいました。
223:識別番号01
人の温もりが欲しいと思う日々ですが、悲鳴を上げられて化け物と叫ばれることを想像してしまい怖くて探しに行けません。というか、高いビルが建ち並ぶ大都市ながら誰も居ないゴーストタウンとなっており、ビルの中には上半分が折れているのもあります。
もしかして俺のような奴がやったのか? やったんだろうな……。
224:識別番号01
かといって、こんな風に暴れる同族(?)にも会いたくないので捨てられた街を探索して暇な時間を過ごす日々です。
幸いにも無事な缶詰やレトルト食品などに出会えて、漫画をはじめとした退屈を紛らわせる娯楽も結構残っており、申し訳ないなと思いながらも使わせて貰っています。
225:識別番号01
どうやらこの世界は突如現われた怪物に襲われて人類がヤバイらしいです。そんで怪物を殺せる超人的な少女達がいるそうです。雑誌にそれっぽいことが書いてありました。
そんな怪物は『プレデター』と言うらしい=間違いなくそれ俺だわ。
怪物を倒せる少女たちのことを『ペガサス』と言うらしい+遭遇=(俺が)死。
すごくやばい
226:識別番号01
というか今気付いたけど名前が識別番号01ってことは俺だけなのか? 俺が最初? オンリーワン? もしかしてプレデターってもう全滅してる?
227:識別番号01
居たよ! 森に入ったらめっちゃ居たよ!? なんか人よりでかい虫みたいなのがぎょうさんおりましたがや!? だめだあれ話通じないわ! 日本語でハローって言っても通じなかったし、なんなら身の危険感じたわ! もしかして人間と間違えられかけた? 人型なら無差別かよ!
228:識別番号01
はぁ、やっぱり都会での暮らしが一番よ。田舎って虫多くてクソだな。
というか、街に戻って改めてプレデターの事について調べて見たけど、どうにも人型がいないっぽいんだよな。だったら俺ってマジでなんなんだ?
229:識別番号01
なんだか拾った漫画も頭に入らない。五十巻ぐらい続いている作品なのに全く覚えがない。もしかして自分は異世界からの転生者で、ここは地球によく似た異世界なのだろうか?
230:識別番号01
そもそも自分は本当に人だったのだろうか? プレデター(暫定)になる前の記憶は人だったという自負以外にないに等しい。家族の事も自分の事もなにひとつ覚えていない。街にあった長編漫画も見覚えがない。もしかして俺は人と同じ人格を持っただけの生まれて間もないプレデターなのか?
231:識別番号01
おぎゃああああああああ!!
ママぁああああ!!
ミルク飲みたいよママああああああああ!!
232:識別番号01
物は試しで一日中赤ちゃんプレイしても進展無かった。というかなんでか一部始終書き込まれちゃってるし辛い。
233:識別番号01
まあ元人間でも、「じんるいのてきじぇろちゃいバブバブ」でもこのさいどうでもいい。
いや、どうでもよくないけど開き直る。センチメンタルになっている時間はあまりにも無駄。
これからプレデター(仮)人生をどう過ごすかってことが何よりも重要だ。
234:識別番号01
なーんか、プレデターって現在進行形で結構やらかしているらしい。それこそ人類の仇敵ってあだ名に凄い納得してしまうレベル。こんなん人様の前に出たら秒殺やんけ。
……なんか自衛の手段でも見つけようかな。
235:識別番号01
人間と友達になるのがルナティックすぎる事に気づき、泣きながら色々と試してみた。
まず、この身体とにかく走るのが速い。軽くランニングしただけでチーター(動物)に勝てそうな加速力と速度がでてマジチーター(クソ)。もしかしたら本気だしたら新幹線にも勝っちまうかも。
とりあえず逃走能力SSR級でほっとしたぜ。
236:識別番号01
なんかでた。えぇ……。
237:識別番号01
う○こ出す勢いで踏ん張ってみたら触手が出た。先端の形状が蛇っぽいからまさかと思って念じたら普通に口開いた。口の中には鋭い牙と爬虫類っぽいにょろにょろ舌があった。
それが合計八本。手足の様に動かせる。試しに触手たちでコンクリートを殴ってみたら豆腐みてぇに粉砕できた。ヤバイなんか格好良く見えてきた。エロ同人枠だったかとか思ってごめんよマイボディ。
238:識別番号01
数日ぐらい練習してみたら、まぁ便利なこと。触手じゃ聞こえが悪すぎるから蛇筒って名付けた。なんか蛇というか、毒蛇(?)だったらしくて牙を通して毒を注入できる機能があるらしい。
239:識別番号01
毒について何ができるか色々と試したがマジやばいなコレ。感覚的に望むだけで自由自在に色んな毒を生成できるっぽいぞ。
鉄が溶ける毒って自分で自分が怖い。これは禁忌の力だな。
また強くなっちまったか、チート主人公も大変だぜ……木枯らしだけがツッコンでくれて寂しい。
240:識別番号01
街中を駆け回るの超たーのしー! ビル壁を走ったり蹴って飛んだり正に気分はニンジャ! これマジで楽しいぞ! 今日は一日アスレチックデーじゃあああアッやべっ
アイエエエエエエエエエエ!?!?
241:識別番号01
8回転アクセルなんてやるんじゃなかった……天地が分からなくなって車に突き刺さり爆発炎上。慌てて消火効果のある毒を生成して、周辺にまき散らして鎮火。本当になんでも出来るなこの体。もしかして逆に治療薬みたいなのも作れるのか? あれも言うて病気視点では毒みたいなものだし、今度試してみよう。
242:識別番号01
人!? 人だ!? それも美少女かわいい!!
あれが『ペガサス』、生身でプレデターと戦える戦乙女たち! お近づきになりたいけどでかい武器を軽々持っており怖くて近づけません!
243:識別番号01
どうやらニンジャごっこの騒音とかで調査しに来たらしい。暫く見回った後帰って行った。多分だけどここは『ペガサス』が居る拠点から、そう遠くはないようだ。よく今まで見つからんかったな俺……。
244:識別番号01
それと『ペガサス』の女の子になんとか平和的にコンタクトをとろうとして発覚したのだが、どうやら言葉を話せないだけじゃなくて、文字も書けない。というか相手に思いを伝えることが全部できない。
245:識別番号01
文字が読める、言葉も分かる。だけど文字を書こうとすれば思考にもやがかかってなんて書いていいのか理解できなくなる。じゃあ指で文字を指して伝えようとすると文字たちが突然ゲシュタルト崩壊を起こして、どの文字がどういう意味を持つのか全く理解できなくなる。
まじで気持ち悪い……明日考えよう。
246:識別番号01
結局寝れんかったで一晩中考えたけど、まったく分からん。とりあえず現状分かったことは言葉だけではなく文字での意思疎通もできないって事だ。ただどうやら身体を使ってのジェスチャーは例外らしく、文字と違って阻害される感覚は無かった。
……手話の本探すか。
247:識別番号01
手話の本みながら身体を動かそうとしたら全てを忘れたかのように何もできなくなった。
まるで意思疎通の手段が全て妨害されている気分だ。呪われてるのか俺? 神社行ったら治るかな?
248:識別番号01
諦めずに色々と検証した結果、簡単な指の動きとかなら行けそう。サムズアップとかピースとかは行けた。なら握手とかも行けそうだが相手がいない。ぼっちつらい。
しかし、人と友好関係を築くのはマジで難しそうだなぁ……。
とりあえずは『プレデター』のほうで仲良く出来そうなやつ探してみるか?
249:識別番号01
うっしゃあああああごらあああ! 嘗めるんじゃねぇよばかがよおおおおお!!
…………疲れた。
250:識別番号01
森に入ったらカブトガニをめっちゃでっかくしたような同族(敵)に襲われたでござる。前とは違い問答無用だったでござる。足が速いからと調子に乗っていたら百体ぐらいに囲まれたので覚悟を決めて戦ってなんとか勝利。全員冥土に送ってやったぜ。
251:識別番号01
もげた腕が目に見えて分かるほどの速度で再生していっている。やっぱりヤバいなこの体。
でも疲労感が強い。再生にも結構エネルギーが必要になるらしく、『プレデター』になってから初めての空腹感に襲われて、家に放置されていたのをお借りしたレトルト食品をとにかく食いまくった。
いまは体を治すこと最優先ということでじっとしているが…………寂しいな。
252:識別番号01
人と仲良くするのも絶望的、同族からは抹殺対象として見られているっぽい。マジで八方塞がりじゃねぇか。どうすればいいんだよ……。
253:識別番号02
────────ア
254:識別番号01
え?
う、うおおおおおおお!? まさか来たのか!?
は、ハロー! こんにちわ!? 聞こえていますかー!?
あなたは人間? それともプレデターですか!? もうどっちでもいいからお喋りしようくださいませぜ!!
255:識別番号02
──謗・邯────壼ョ御コ
256:識別番号01
日本語でおk
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます