第16話 お見送り
まゆと暮らし始めてから3日目、買い物を終えてカフェでゆっくりした後はアパートに帰って2人で買い物で買ってきた物の整理をして、まゆが作ってくれた夜ご飯を食べて順番にお風呂に入って2人でゲームをしてから2人で一緒に寝た。
そして、4日目の朝
「りゅうちゃん、本当に1人で大丈夫?」
スーツを着た僕にまゆはぎゅっと抱きつきながら上目遣いで聞いてくる。今日は就職先との打ち合わせの日なのだ。僕が小学校の教師でまゆは保育園で保育士さん。僕は電車通勤でまゆは自動車通勤の予定、だから、今日は出勤ルートの確認も兼ねて電車で勤務先の小学校に行く予定なのだが……
「まゆ、送ってくよ。りゅうちゃんの予定終わるまで近くで待ってる」
そう言って僕を離してくれないまゆが愛おしい。でも、今日ばかりはまゆのお願いを聞いてあげられない。
「まゆ、ごめんね。通勤ルートの確認もしたいからさ…」
「ま、まゆが毎日出勤前にりゅうちゃん送ってく!だから一緒に行こ!」
まゆがめちゃくちゃなことを言い出した。小学校の教師も保育士も朝はかなり早い…僕とまゆの職場はアパートからそれぞれ反対方向にあるので僕を送ってからまゆが遅刻しないように出勤しようとするのはかなり無理がある。朝めちゃくちゃ早く起きないといけない。
「まゆ、ごめんね」
「………」
まゆが目をウルウルさせて何かを訴えかけるような目を向けてくる。やばい、この攻撃をされると僕は数秒で敗北する。
「まゆ、本当にごめんね」
そう言って僕を抱きしめていたまゆをぎゅっと抱きしめ返す。しばらくまゆをぎゅっと抱きしめているとまゆが僕を抱きしめる力がだんだんと弱くなる。
「りゅうちゃん、わがまま言ってごめんなさい…」
「大丈夫だよ。予定終わったらすぐ帰ってくるからね」
そう言って僕から離れていくまゆの頭をなでなでしてあげる。まゆは待ってる!と笑顔で短く返事をしてくれた。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「うん」
玄関から僕を見送ってくれたまゆに手を振ってアパートを出て歩く。振り返るとまゆもアパートから出て見送ってくれていた。なんか恥ずかしいな…でも、すごく幸せだった。
仕方のないこととはいえ、まゆに寂しい思いをさせてしまったのだから、帰りに駅の近くでまゆが好きそうなスイーツでも買って帰ろうかな。と考えながら僕は1人で駅まで歩く。まゆと暮らし始めてから隣にはずっとまゆがいてくれたから、1人で歩くのは寂しかった。
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