第15話 屋敷はようやくシーラの手に
「さて、ようやく屋敷に帰ってこれたわね!本当に長かったわ。」
「それはこちらのセリフです、まったく、この三か月間は地獄のような日々でしたよ。」
ビートルはやれやれと疲れたような顔をしているがこの男がこの程度のことで疲れるはずがない。そのことを知っているシーラはジト目を向けるものの、彼が気にした様子はない。
「はいはい、悪かったですね。まぁ、あなたには苦労をかけたとは思いませんが、他の人たちには迷惑をかけましたからね。
皆さんを集めてくれますか、ようやく彼らを追い出せたとみんなに伝えてあげないといけませんから。それに、この三か月間、頑張ってくれたんですから。彼らをねぎらってあげないといけませんね。」
「およおよ、私は悲しいです。ご主人様の為にここまで頑張ってきたというのに。」
ビートルは泣きまねをしているが涙など一向に出ていない。彼の嘘泣きなのだ。いや、もはや嘘泣きなどというクオリティーですらない。あまりにも嘘くさすぎる。
「いいから、みんなを呼んできて。」
「仕方ありませんね、かしこまりました。」
それからしばらく経ち、屋敷に勤めている全員がかき集められる。彼らはいったい何事かと思い心配そうな顔をしているがシーラの姿を見るや否や、笑顔になる。
彼らも、シーラの顔を見てようやく理解したのだ。ここ三か月間、この屋敷に不法に居座っていた二人がいなくなったという事実を。
「皆さん!まずは集まってくれてありがとう。みんなにとにかく耐えて欲しいとお願いしてから3カ月もの月日が経ったわ。この三か月間、本当に頑張ってくれたわね。だから、私も約束を果たしに来たわ!みんなも気が付いているかもしれないけど、すでにこの屋敷を占拠していたやつらは追い出したわ!
これからは、理不尽な命令も従う必要はないわ!私のわがままでみんなに苦労を掛けてしまったわね、でも、これでおしまいよ!本当にありがとう。あなた達のおかげで、あいつらにも報いを受けさせることが出来たわ。」
そんな彼女の演説に、使用人たちは口々に彼女に言葉をかける。
「何を言っているんですか!俺たちがここで働けているのはご主人様のおかげなんですから、それくらい安いもんですよ!」
「そうですよ、旦那様の時からご主人様にはお世話になっていたんですから、それくらいのことはさせてください!」
「旦那様がお給金を払えなくてクビになりそうだった私を救ってくださったのはご主人様です!ご主人様を陥れようとしたあいつらなんて地獄に落ちればいいです!そのためなら、3カ月なんて短い期間、耐えられますよ!」
シーラは自身のわがままで彼らを3カ月もの間、あの二人の元で働かせていたため、使用人たちから文句の一つでも言われるものかと思っていたが、彼らは誰一人として文句などは口にしなかった。
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