第13話 私とあなたは赤の他人なんですから

「そ、そうだ。シーラ、た、助けてよ。あなたならお金をたくさん持っているでしょ?このままじゃこいつらに殺される、助けてよ!私たち家族なんでしょ?」


「そうだ!こいつはお前の姉なんだろ、それなら助けるべきだろ!このままだとこいつらに売り飛ばされてしまうんだぞ。金なんていくらでもあるんだから代わりに払ってやれよ!」


そんな声をかけられるも、シーラははなから彼らに協力する気などない。なぜなら、この借金取りたちを呼んだのは彼女自身なのだから。


「何を言っているんですか?彼女とは家族でも何でもないですよ?私と彼女の関係は赤の他人です。どうして、他人の借金を立て替えないといけないんですか?」


「なっ。」


そんな発言にアルフレイは絶句してしまう。まさか彼女が自分の姉を見捨てるなどとはみじんも思っていなかったからだ。


「それに、私がこの方たちに教えてあげたんですから、借金の取り立ては3カ月だけ待ったほうが良いって。なんでそんなことを言ったかくらいわかりますよね?あなた達が借金から逃げないようにですよ。ですので、私が代わりに支払うことなど絶対にありません。


大丈夫ですよ、私も苦労はしましたけど、この屋敷を買えるだけのお金を手にすることが出来たんですから、お金なんてすぐに返せますよ。だって、私と違ってあなた達は生まれながらの貴族なんですから、きっと私よりも優秀なんでしょうね?」


「そういうわけだ、いやぁ~姉さんには本当に世話になったぜ、取り立てを止めろと言ってきた時はどうしてやろうと思ったけど、今じゃ感謝しているよ。」


「良いんですよ、人助けをすることって素晴らしいことですからね。それに、借りたものを返すのは当たり前ですから。」


「おぉ~、姉さん言うじゃね~か。まっ、そう言うことだな。借りたものを返す、こんなの親から始めに習うことだろ。さて、それじゃ、こいつらは連れていくぞ。」


すると男たちは二人を連れて行こうとする。しかし、それを止めようとするのは先ほどまで黙って話を聞いていた兵士たちだ。


「ちょ、ちょっと待て、彼らは貴族なんだぞ!今から何をするか分からないようなお前たちに連れて行かれそうになって、みすみす逃すわけにはいかないだろ。そんなことをすれば我々が貴族に何をされるか分からない。」


そんな彼らの懸念はもっともだ。特に、アルフレイの父親は侯爵なのだ。そんな彼の息子が連れていかれるのを見ているだけで何もしなかったと分かれば後からどんな罰を受けるか分からない。しかし、その点に関してもシーラは既に根回しを終えている。


「それに関しては何も問題ありません。実は三日前に彼の父親に面会を申し込んだんです。そこで、今回の経緯をすべて話しました。そうしたら、すでに遺産の放棄もできないということで彼をかばえば自分にも被害が来ると思ったのでしょうね。


すでに、彼との縁を切ったそうです。ですので、彼はただの伯爵の夫となります。侯爵家とは何の縁もないんですよ。侯爵から今回の件は関与しないという旨の書類を受け取っています。」


そう言って、シーラは兵士たちのリーダーに書類を差し出すのであった。

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