義姉から引きこもりは出て行けと言われましたけど、出ていくのはあなたですよ?でも、私はやさしいので3カ月の間だけ出て行ってあげます。
創造執筆者
第1話 最愛の父の死
先日、私の大切な人であるお父様が亡くなった。お父様と言っているが血の繋がった親子ではない、私は養子だ。
私が悲しみに暮れている中、それは帰ってきた。私の義姉であるタニラだ、彼女がこの家に帰ってきたのはいつぶりだろうか?お父様は伯爵の位を国から授かっていたが貴族としての才能が全くなかったのだ。
だから、次第に経営は立ち行かなくなり、借金だけが増えていった。そんな中でお父様は懸命に努力を続けていたが、彼女はそんなお父様を見捨て、玉の輿にすがるべく家を出ていったのだ。
私はそんなお父様を見捨てることが出来ず、たくさん勉強をして自身で商売を始めた。そうしたらその商売が大ヒット!一生かかっても使いきれないお金を稼ぐことに成功したのだ。
私はすぐさま、大好きなお父様にこのお金を使ってほしいと訴えた。しかしながら、お父様はうなずいてくれなかったのだ。これはお前が稼いだお金なのだから自分で使いなさいと。
だから私は折衷案として借金のかたに持っていかれそうになったこの屋敷を買い取り、お父様に住んでもらっていたのだ。もちろん、今までお父様にはお世話になったのだ、食費も何もかも、私の使いきれないお金から支払っていた。
そうして、お父様は莫大な借金を抱えたまま、亡くなった。私が借金を代わりに返すと言っても、子供にそんなことはさせられないと言われて断られたからだ。
そんな中、彼女は突然帰ってきて、こう言ったのだ。
「シーラ、私はアルフレイ様と幸せになるの。だからあなたが屋敷にいると邪魔なのよ、今すぐに出て行ってちょうだい!」
そうして、彼女と共にこの屋敷にやってきていた彼もこういった。
「すまないね、僕たちはこの屋敷で暮らすことになっているんだ。君も、いつまでも自立しないで家にいるのはどうかと思うよ。二、三日あげるから僕たちの屋敷から出て行ってくれ。」
恐らく、この男性がアルフレイ様という奴だろう。確か、彼の実家は貧乏侯爵家として有名だ。金はないがそれに見合わない爵位だけはある、それがこの国での彼の実家の評価である。
この二人の思惑など、簡単に分かる。今まで、出ていったきり連絡もよこさなかったのにお父様が亡くなったとたん現れた義姉、侯爵家の人間であるのにもかかわらず伯爵家の屋敷に住むと言い出すアルフレイ様、二人はお父様の遺産をすべて自分たちのものにして贅沢を尽くすつもりだったのだ。
この国の法律では、遺産を受け取ることが出来るのは夫婦か血のつながりのあるものだけである。つまり、養子の私はお父様の遺産を受け継ぐことが出来ない。
だからこそ、出て言ったはずの義姉がこの屋敷にやってきたのだ。ある日を境に大金持ちになった伯爵家の財産、屋敷も金も何もかも自分のものになると分かったのだから。おそらく、彼もその遺産のおこぼれに預かろうと義姉を落としたのだろう。この女はイケメンに弱いから。
しかし、彼女たちは知らないのだ。ここにあるものはすべて私のものであるということを。お父様のことを気にもかけなかった彼女たちは知らない、お父様の遺産など借金しかないのだということを。
借金を負わないようにできる遺産放棄が法的に行えなくなるまでは3か月、私はせいぜい彼女たちの言う通り、その間だけは出ていかせてもらう。
3か月後に私が帰ってきて、自分たちが相続したものは莫大な借金だけで、既に遺産放棄もできない状態と知った時、彼女たちはどんな顔をするのだろうか?
私はそんな顔を想像するだけで笑みがあふれだしそうになるが我慢して今だけは彼女たちの言う通り、屋敷を追い出されてあげるのだった。
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