甘くて、辛い
玉響翔
始まり、そして終わり①
桜並木の下をゆっくりと歩く君は、まだ幼さを残す笑顔で喜んでいるように見えた。そんな君を見て俺は幸せだと感じた。
「綺麗な桜だね、春香」
「うん、本当に綺麗。ずっと歩きたいくらいだよ」
「はぁ、これが毎日見れたらなー」
俺と君はいつの間にか大学1年生で、付き合って一年目。今は一緒に買い物したり、映画を見たり、2人で時間を過ごすことが多い。
今日も買い物の帰りにたまたま見つけた桜並木を歩いているだけだ。
「あ、桜見て思い出したけど、桜田先生のテストの勉強したよね?」
「…………忘れてた」
君に会える嬉しさで忘れてしまっていたこと言わないことにする。
「もー、ホントに忘れっぽいんだから。帰ったらちゃんとするんだよ」
そう言いながらも君は歩くスピードを変えない。
よっぽど嬉しかったんだろうな。俺はそんな君の姿に笑ってしまう。
「はぁー」
頭を抱えて困っているように見せるその姿も愛らしいくて、君が俺の女神だと実感する。
少しの間、静寂が流れ俺は一呼吸置いて君に話しかける。
「春香、高校生の時、俺が言った言葉覚えてる?」
「え……?……!」
君の一言のが、『?』から『!』に変わったのが表情を見るとすぐにわかった。
俺がそんな君に言った言葉、それは……。
ー放課後の中庭ー
「春香、手伝うよ!」
環境委員長主導のボランティア清掃が終わり、誰もいなくなった中庭で君は後片付けをしていた。
(俺が決心したのは、裏で頑張る春香を見たからかもしれない)
「ありがとう、叶冬。これ持ってくれるかな?」
「わかった」
俺と君は、刈った草をゴミ捨て場まで運び、職員室の担当教員に挨拶をした頃には、空は茜色に輝いていた。
「春香!」
荷物を置いたままの中庭でリュックを背負おうとする君を俺は呼び止めた。
君は頭上に『?』を浮かべたまま、俺を見る。
「俺、気付いたんだ。小学校の頃から感じてたこの気持ちに」
まだ『?』を浮かべたままの君に話し続ける。
「思い返してみたら、視界にはいつも春香がいたなって気付いた」
「まだ高校生だけど、俺は君と一緒に生きていきたいと思ったんだ」
君は、ようやく言葉の意味を理解したのか段々と頬を赤らめていく。
それは、完熟したリンゴのようでとても可愛らしかった。
「君の隣に最後までいさせて欲しい。そんな俺じゃダメか?」
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