28 サーチェス医師夫人シャーロットが語る②
あっと言う間だと思いません?
そりゃそうですよ。
このひと達は何だかんだ言って、国内の不満をぶつけまくった結果として外交関係の要であった王室をぶち壊してしまった訳ですから、後はもう大変。命令系統とか滅茶苦茶になって、当時戦争していたフランスは戦争も経済も滅茶苦茶。
要するに、頭でっかちが大局観無しに色々やっちゃいけない、ってことですわ。
じゃあ何で軍人のナポレオンが政権をそれでも結構長くとれたか、というと、軍隊ってのは完結した組織ですからね。
その指揮官をしているというのは国の運営に近いものがありますもの。
そりゃ理念だけで正義を振りかざす人々よりは、長続きしますよ。
……と、また話がずれましたわね。
そうそう、例の機械にかかった中に、私と同じ名のシャルロット・コルデーという女性が居るんですね。
暗殺の天使、っていう二つ名がついているんですが、24歳で例の機械にかかったとか。
これがままだ王妃が死刑になる前なんですね。
ところで彼女の罪はその名の通り、暗殺ですね。
当時の革命家の中でも大物のマラー。
彼女は7月13日に暗殺決行して、公判が17日。
そしてそのまま刑場に引っ張り出されるのですよ!
何というか、簡単過ぎませんかね?
いや無論、確信犯で殺人なんですから刑はともかく、その捕まってからの時間ですよ。
その短絡さが、革命の立役者自体も殺したってことでしょうねえ。
結局それで国は大乱れ、そりゃあ王政復古にまでなったりしますよ。
……と語ってしまいましたけど。
ええ、つまり怖い話はここからでしてね。
私の夫が医者でしょう?
そうすると、ここで「更に人道的な死刑の方法」というのが、医者の間でも話し合われるんですって。
例えばその、機械にかかって落とされた首にしても少しの間は意識があるとか無いとか。
そういう議論もあった訳で。
だったら、そういうものなく、何の苦痛もなく死なせるにはどうすればいいのか、という話になる訳ですよ。
だったら眠る様に死んで行く薬を与えればいいんじゃないか、というのが医者としての夫やその周囲の見解なんですがね。
ちょっと不思議な話があった訳ですよ。
夫の知り合いの医者なんですがね。
何故か彼の周囲の人々が、不慮の死を迎えているのですわ。
何もそのひとがその薬を使って、とは限らないですけど。
でも交通事故だったり、唐突な路上での心筋梗塞だったり、投身自殺だったり、とまあ様々なバリエーションで親戚縁戚、そして同じ町に住んでいる人々とか亡くなっているんですって。
そうすると、どうなのか気になってしまうんですよねえ……
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