21 クレイブス商会夫人フレアが語る②
で、まあともかく子供達にしても、大きなのが小さなのを相手する様にして、一人にならないように、とか小用で離れる時には、皆一ヶ所で待っているとか、厳命したんですね。
それでも!
あの人混みですよ。
移動するだけでもうごちゃごちゃと。
相手の手を持っていたと思っていても、気がついたら他人の手だった、ってことがあってもおかしくないところ。
――で、結果としては、下から二番目の子が行方不明になりました。
八つになるかならないか、というところの様ですね。
どうして離れたのかさっぱり判らなかったらしいんですが……
その時手を引いていたのは、ご両親だったそうです。
一番小さい子はさすがに人混みすぎるから、一番上の兄が抱えていたんですって。
力もあるし、そのくらい簡単だろう、って。
下から二番目の子は、そこまででもないので、父親が手を引いてたということで。
母親は荷物持ちだったそうです。
後の子達は、メイドの彼女が両手で引っ張っていたということです。
ところがもの凄い混みようの中を抜けた時、父親が掴んでいた手を引っ張ったところ、そこに居たのは別の子だった、というんですよ。
家族一同も、その手にいた子もぎょっとしていた様です。
とは言え、開けた場所だったんで、何とかその子の両親は見つけて慌てて引き取っていったんですが。
そうすると、下から二番目は何処に? ですよ。
メイドの子はまあずっと沈んだままで。
ただね、その理由が一つじゃなくて。
単に弟が居なくなった、ってことだけではなくって、弟が居なくなっても両親がさほど気にしていない様に見えるのが辛いって言うんですよ。
兄も仕方がないだろ、って態度で。
それからしばらくして、人身売買の記事が新聞に出たんですよ。
十歳以下の子供が売りに出された、っっていう。
メイドの子は都会にはそんなことがあるんだ、とぞっとしてましたわ。
そこでひょい、と別の子がこう言うんです。
「もしかして、あんたの弟も売られてるんじゃない?」
それに対してメイドの子は泣きじゃくって反論したんですが……
私ちょっと思うんですよ。
ほら、ヘンゼルとグレーテル。
あれ、何だかんだで貧しさから子供を捨てる親と、それに復讐する子供の話が元になってるとか?
もしかして、博覧会をいいことに、もともと子供を捨てる気だったんじゃないか、ってつい、思ってしまうんですよ私。
ほら、お嫁さんが来たら、働き手も増えるけど食い扶持も増えるじゃないですか……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます