第31話 テンペスト 竜騎士、飛ぶ!!
「リオンたちがどこへ行こうとしているのかは知らぬ。だが、ギルガンド軍もまた、例のものを狙っている。この船から出てくるのを今か今かと待っているぞ」
レントゥたちが船室から眺めていると、遠くに
「
副官のマリオスがたずねた。
「その必要はない。もし、あの傭兵がほんとうに竜騎士の
リオンとストーンはレントゥの船から降りて行った。
「でも、ほんとうに来てくれるなん思わなかったよ」
「呼んでいた……から」
「えっ? 呼んでいた? 聞こえるの?」
「さあ、よくわからない」
「そうか。じゃあ、君を呼んでいたのは僕じゃないかもしれない。付いてきてくれる……こっちだよ」
急いで橋の階段を駆け上がるリオン。
その時、地面にいくつもの黒い影が出来て、ふたりは空を見上げた。
「
空を埋め尽くすように
「まさか、こんなのがほんとうにいたなんて……。それで、レントゥ
「リオン、残念だが、この俺でも倒せて一頭くらいだ。だが、何がなんでも俺はお前を守る!!」
「その言葉、待っていたよ。この
「ああ、初めてあった場所だな……」
「そう、あの夜、偶然に通りかかったストーンに僕は助けられた」
「そうだったな。今、こんな話をしている場合じゃないだろ」
ストーンは抜刀してすっと構えた。
「それが偶然じゃなかったんだ……って言ったら?」
「なっ、なんだって?」
「呼んでいたんだよ、ストーンのことを。ねっ、ストーンって、泳げる?」
「あたりまえだ。このスコルの海で育ったんだからな。漁師の息子だ、剣よりも得意なくらいだぜ!」
「じゃあ、取って来てもらってもいいかな。ここって、けっこう深いよね」
そういうとリオンは橋の下の海を指さした。
「まさか、この海の底に沈めて隠していたのか」
「そういうこと。あの子が呼んでいる……行きなさい!」
リオンに言われて、ストーンは橋から勢いよく飛び込んだ。大きく水柱が上がる。
空からはワイバーンが近づいてくる。
最初の一撃、リオンは咄嗟に後ろにはね飛んで回避した。さきほどまでリオンの居た場所がまさに海の
「あの夜の刺客が生ぬるく感じるくらいの破壊力だね。ストーン、早く来て~」
それに呼応するかのように、今まで雲一つない晴天だった空が一瞬で夕陽の色に変わるといくつもの雷鳴が遠くで光る。
続いて鼓膜を破りそうな轟音が来た。
煉瓦の橋がこなごなに砕け散り、水中から巨大な何かが姿をあらわす。
光り輝く夕陽の色をした竜が翼を広げて浮かび上がって来た。
小型の竜だが、小さいといっても飛竜たちの二倍の大きさはある。ストーンは、その背に乗っていた。しっかりと竜の首をつかみ、いっしょに空へと舞い上がっていく。
「えっ、剣を拾ってくるんじゃなかったの……」リオンも驚きを隠せない。
「俺も驚いているさ、だがな、これならあいつらと戦える!」
「隊長、
「そんな報告はいらぬ、とにかく戦え!」
「そんな攻撃、効くものか」
竜とストーンの相性はいいようで、
「今度は、こちらの番だ」竜は急上昇すると身を
速力をあげて後方から近づき、ストーンは剣で
「
海の中で昼寝でもしていな」
バランスを失った
「ふーん、あんな戦い方もするんだ。いつも……殺すとか叫んでいたのと別人だね」リオンは妙に感心していた。
「隊長、半数以上、
「まずいな。ようやく再編された
「了解!」残っていた
「あれが……
船の艦橋から見ていたレントゥがつぶやく。
リオン達を冷たくあしらったが、もしもの時は艦砲射撃で援護するつもりであった。
「もう私の過保護な手助けは必要なさそうだな。リオン……いやレオナ皇女殿下」
レントゥは、ほっとしたような寂しそうな複雑な表情を浮かべてつぶやいた。
副官のマリオスを呼ぶと、船の臨戦態勢を解いた。
「あの青年に任せて大丈夫なのですかね」副官マリオスが問いかけた。
「貴様も見ていただろう。やつは本物の
「大丈夫とお聞きしたのは、貴方様のお気持ちのほうですよ」
「なんのことだ。私はただの保護者だ、気にすることはない、マリオス。船を出せ、リオニアへ帰還する」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます