第5話 あこがれ
北の大国であるリオニア王国、中部には強大な軍事力をほこるオリオウネ王国、南方には広大な砂漠のなかにギルガンド王国などがあった。
ストーンたちが暮らしているスコル大公国は、オリオウネ王国から独立した新しい小さな国である。
「わしらの住んでいるスコル大公国ではなっ、アンタレス大公がいちばん偉い。
つまり、お前の言うところの王様じゃ。
オリオウネ王国のような広い領土をもつ国では、王の下に領主たちが存在する。
領主たちは公爵、侯爵、伯爵などの名称で呼ばれている。
オリオウネ王国の重臣であったアンタレス大公は、辺境の地の開拓や蛮族の討伐、
海岸付近にあった自らの領地では貿易や漁業をして領土と富を蓄えた。
やがて大公は、母国オリオウネ王国に反旗を
今やアンタレス大公は一国の王様というわけじゃよ」
「なるほど。じゃあ、王と皇帝はどうちがうの?」
ストーンはほかにもまだ疑問を持っていた。
「ずっと昔の話しになるが竜や魔物が住んでいた頃から、いくつもの国々を支配していた古代帝国という大きな国があったのじゃが……、強大な覇権を唱えた『皇帝』と呼ばれる支配者が存在していた」
「『皇帝』か。つまり王の中の王ってこと、すごいなあ!」
ストーンは瞳をきらきらさせている。
「今はもう滅んでしまい存在しないので古代帝国と呼ばれているが、昔は『帝国』とよばれていた。
ほかの国々も国単位で『帝国』に仕えていたので、『帝国』からみると王たちは地方領主のようなものだった。
『帝国』の力があまりにも強かったのでな、大陸は平和であったのじゃ。
平和か……なにをもって平和とよぶのかは難しい話しではあるが、少なくとも大きな戦争は起こらなかった。ストーン、お前は何になりたい。王様になりたいとすれば、それはどうしてじゃ?」
「うーん、かっこいいからというのは理由にならないのですか……」
ストーンは少しはずかしそうに答えた。
「だめではない、そういう理由もけっこう!
あちらこちらで戦乱が起きる、不安定で生き抜くことさえ苦しい世の中であっても、
あこがれや夢を持ち続けていくことは、とても大切なことだ! 」
「ありがとうございます……先生。俺、がんばります!」
「では、そろそろ練習を続けよう」
「はい、お願いします!」ストーンは模擬刀をもつ手に力を込めた。
小屋の影からピティが眺めていた。お菓子と飲み物を渡そうとしていたが、あまりに熱心な稽古姿のストーンをみて、ぼうっとしてしまっていた。
( ストーンくんって、思っていた以上に、ずっと頑張り屋さんなんだ…… )
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