状態変化

トンケント

羊のぬいぐるみ

 そこに姉妹がいた。凛と恵美である。

 羊のぬいぐるみに変身できるステッキを持っている。二人は交代でぬいぐるみに変身して、スリルを楽しんでいた。

 いつもは部屋で30分程度のお遊びだが、今日は違った。半日ほったらかす放置プレイだ。

「私がやりたい!」

 恵美は頬を赤かくしながら手を挙げた。凛はゾクゾクしながらその勇姿を見つめていた。二人ともいつも以上のスリルで、ドキドキが止まらない。


 ステッキを持った凛が恵美を羊のぬいぐるみに変身させた。そして優しく羊ぬいぐるみとなった恵美を棚の上の方に置いた。

 凛は一階に降りると、リビングにいた母に挨拶した後、遊びに行った。


 夕日が沈みかけた頃、凛は家に帰ってきた。おかえりなさいも言わずに、母は話し始めた。

「ちょっと聞いて。凛ちゃん達の部屋に猫が迷い込んでニャーニャーうるさかったわ」

「えっ?」

「これあなたのでしょう?こんなになって、もう処分する?」

 母が持ってきたのは、ボロボロになった羊のぬいぐるみ。

「いやああああああっ!」

 凛は慌てて裁縫道具を取り出して、音を立てながら階段を上がっていく。手には妹の恵美を持って。

 部屋に入ると呼吸を一つして、すぐに縫っていく。その間に母の呼ぶ声があったが、聞こえるはずがない。


 夕食食べずに作業は終わった。

 整ったぬいぐるみに羊の姿はなかった。

 恐る恐るステッキをふって元に戻す。

「うえっ」

 凛が吐くのも無理もない。

 人の姿に戻った妹からは全身から裁縫の毛が・・・

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