終わりの始まり
私が『インターネットの終わりの始まり』に気付いたのは高校生の時のことだ。その頃、私はネット上で炎上事件を起こしていた人物と直接コンタクトを取ることに成功し、彼と会話をすることが出来たのだが、その中で知った事実は衝撃的なものばかりだった。
ネットリンチが横行する中で、インターネット上だけで済まない深刻な犯罪が引き起こされるようになったことは、当時からニュースなどで取り上げられており知ってはいたが、まさか『現実でも同じことが行われている』とは考えていなかったからだ。彼は、自分の犯した犯罪を反省することなく、インターネットがもたらす恩恵や自由さを享受するばかりで『インターネットは素晴らしい』と言い続けていたが、「そんなことは絶対にあり得ない」と頑なに信じていたのだ。今にして思えば実に子供っぽい思考だったが、彼なりに真剣に『インターネットの終わりの始まり』を考えていたらしいと分かっただけでも良かったのかもしれない。私もまた、彼が語る理想郷の話を聞いたおかげで、インターネットをただ利用するだけでなく活用する方法を模索してみる気にならなければ今の私は無かったはずだ。
『インターネットを終わらせることが出来るのは、インターネットだけだ』
この言葉が私の胸に今も刻まれているのは、きっと彼の影響が大きいのだと思う。私は今でも彼を尊敬しているし感謝もしているが二度と会いたくないと思っている。何故なら会う度に口論になってしまうからである。
私には、彼に会わねばならない用件があった。しかし今は連絡手段が絶たれてしまっているためそれは叶わない。
だが、もしも奇跡が起きて、どこかの街角で再び出会うことがあるとしたら、まず真っ先に「さようなら」を言いたいと思う。それがどんな結果を招くことになるのか分からないが、それでも、私は彼にさようならを言わなければならない。なぜなら『インターネットの終わりの始まり』は私の手の中に収まっているからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます