十話 デート

 土曜日になり、父さんは朝八時ころ家を出た。横井さんとのデート、うまくいくといいけれど。


 なんせ、年代が違うから話が合うのだろうか。でも、二人の話を聞いていると、相思相愛のようだ。だから、大丈夫なような気もするが、わからない。デートをしたことがないはずだから。


 そもそも、父さんは札幌にそんなに行かないのにお店とかわかるのだろうか。横井さんはどうなのだろう? 頻繁に札幌に行くのだろうか。遊びや用事などで。


 とりあえず、横井さんもいるしカーナビもあるから道に迷うことはないだろう。でも、少し心配だ。ちなみに、僕は、方向音痴ではない。地図さえあればどこにでも行ける自信がある。車で移動したいけれど、まだ、十六歳だから免許は取れない。残念ながら、あと二年も待たなくてはいけない。長い。そう考えると、イライラしてくる。正直、待つのは嫌いだ。そういう短気なところは父さんに似ているかもしれない。


 


 そういえば最近、神崎志穂かんざきしほに会っていない。彼女は僕と同い年で高校一年生。女子高に通っている。彼女とは、中学生のとき、同じクラスで仲良くなった。

 いまは何をしているだろう。気になったのでLINEを送った。

<志穂、こんにちは。久しぶり。何してたの?>

 今日は土曜日だから学校は休みだろう。

 スマホを弄っていたのか返事はすぐにきた。

<こんにちは! 昭雄、久しぶりだね。私は服を買おうと思ってサイトを観てたよ>

<そうなんだ、相変わらずお洒落が好きだね>

<うん! そのためにバイトもしてるし>

<えっ! 学校行って、バイトも行ってるの? 凄いね!>

<いや、凄くないよ。週に三回の午後五時から午後八時までのたった三時間だから>

<僕なんか、何もしてないよ>

<そうなの? 欲しいものないの?>

<うーん、あまりないかな>

<そうなんだ。彼女はいるの?>

<いないよ、志穂は?>

<女子高だからねえ、なかなか出逢いがないよ>

<じゃあ、これから遊ぼう?>

 いままでテンポ良くやり取りしていたが、誘ったら急に止まった。

<今日はごめんね。用事あるの。また今度誘ってね>

<わかった、残念>

 お金がないから、僕の部屋でおしゃべりでもしようと思っていたんだけれど。残念、と送ったものの内心、イラっとした。僕の誘いを断るなんて。そういうプライドはある。プライドばかり高くて、行動が伴っていない。仕事だってしないと、収入のことより無職は恰好悪いと思っている。でも、遊んでいたいという気持ちもある。まあ、僕はまだガキだから親に食べさせてもらい、小遣いをもらおう。


                           つづく……

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