12.とある影その2の独白
どうもー。
どんなときにも楽しくがモットーの王家の影でーす。
最初にシンシア様に餌付けされちゃった影の一人ですよー。
今日は特別に楽しいことが起きていますねー。
いえーい、緊急会議に召集されましたー。
みんな影なのに、堂々と殿下の御前に集まっていまーす。
普通はこんなことしないんですよー。
今までの影なら、統括職一人が御前に失礼して、やり取りしていたんですけどねー。
殿下の配下になってから、変わっちゃいましたー。
違うかなー。
殿下がシンシア様に一目惚れしたあの日からかなー。
「やはり殿下のサプライズを今すぐにご提示するしかないかと」
本当なら一人で殿下と会話をしていたはずの統括職が、俺たちの意見を総まとめにしてくれましたよー。
もうそれしかないでしょー、殿下!
「くっ。それしかないか。結婚してから驚かせたかったのだがな」
殿下が悔しそうにしていますけどねー。
そもそもねー。気付いておられないようですけどー。
殿下、信用されていないんですよー!
あの猫ちゃんたちのこと、知っているって伝えたらいいのに。
それで一緒に迎える準備をしておくねって言うだけで済む話なのに。
重々しく悩んじゃってさー。
そうやっていい婚約者の振りをして、向こうからいつか言ってくれる日を信じているんだってさー。
いやー、それはないわー。
本音を晒さない相手に、本音を語ってくれるわけがないでしょー。
殿下は俺たちのシンシア様から、言ってもどうにもならない相手と思われているんですよー。
殿下もおかわいそうですねー。
なんなら俺たちの方が信頼感得ちゃってますからねー。
もちろん、こんなこと言えないっすよー。
言ったら俺ら全員解雇されちゃうからねー。
それで誰も助言しないで、放っておいたんだけどー。
真面目な仲間がこれでいいのかって悩んでいたけどさー。
殿下だって若いしこれから学ぶでしょーって放置したわけー。
そしたらなぜか、殿下はどんどん昏い方に向かっていってねー。
余計に何も言えなくなったべ!
結婚さえしてしまえば、あとはこっちのもんだって?
邪魔者は消えてくれるから?
猫と一緒に閉じ込めてしまえばいい?
いやいや、あんた。
いずれ王妃になる人に何言ってんだべ?
王妃様をお城の奥に閉じ込めておけるわけがないべさ。
え?制度を変える?
それは俺たちのシンシア様が泣いちまうべ。
この国のためにと頑張ってきたシンシア様の努力の全否定になるっぺな。
おっと、故郷の言葉が出ちまったべな。
主さまがあんまり情けないもんだから、つい素で突っ込みたくなるんだっぺね。
不敬にもあんたとか言っちゃったけどー。
心の声だから許してねー、殿下。
さぁ、早くこの不毛な会議を終えてくださいなー。
俺たちのシンシア様が待っているんでー。
そろそろ交代の時間なんだっぺー。
「だがしかし……あのサプライズはせめてシアの誕生日まで取っておきたいところだ。他にすぐに実行出来る良案はないか?」
まだ会議を続ける気ですかー、殿下。
もう答えは出たと思うんですけどー。
それにねー、殿下。
おそらく……いいや、間違いなく。
公爵家の皆様が今頃同じように会議を開いていると思いまっせー?
ぐだぐだと話し合っている時間はもうないんですよー。
タイムリミット来ていますってー。
家ごとこの国から離反されちゃっても知りませんからねー。
あ、そのときは俺も一緒にこの国を出て行くんで。
そうならないように頑張るべさ、殿下。
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