閑話3 霧の花
「本当にすまなかった。」
私たちは《
「いえ、私たちは大丈夫です。幸いにもそう言うことはありませんかったですし。」
リーダーである私が代表して答える。というか、
「だが、我が臣下が君たちを陥れようとしたことには違いない。国の貴族を代表して謝罪する。」
国王陛下どころか、謁見の間にいた偉い人たちや護衛とおもわれる騎士達も一斉に頭を下げる。
「ついては、今回の事件の被害者には、被害者救済のため国より年金を支払うこととなっている。君たちにも支払わせてもらうことになる。支払いは冒険者ギルドを経由して渡すことになるがよいか?」
「は、はい。よろしくおねがいします。」
私たちは頭を下げる。
「しかし、とんでもないことに巻き込まれたもんだな。」
獣人のベティが言う。それに対し私たちは頷いた。
「まあ、私たちは運が良かった方だよ。もう少し国が動くのが遅かったら私たちが最後の犠牲者になっていたんだから。」
「確かに。少なくとも私とお姉ちゃんは貴族の慰みものになったでしょうしね。」
みんな頷く。それくらい危機一髪だったみたい。ちょうど私たちが嵌められる直前に盗賊団が全員捕まる――――というか、裏切っていたから私たちは彼らに保護された。
「しかし、みんな死んだと思ったわね……。」
「フェンリルはないわ……。」
「うむ。」
「勝てないな。」
なぜか私たちを保護するのに
「さて、これからどうしようか?」
「まずはそこの依頼ボードを見るか?」
「そうだね。でもしばらく休みたいかも。」
「だねぇ。」
暫くは王都で休みましょうか。一応私たちにも年金として月一人銀貨5枚が渡されるらしい。
私たちがそんな風に冒険者ギルド併設のカフェで駄弁っていると……。
「あれ?あの時のお姉ちゃん達だ。」
「はい?」
冒険者ギルドに入ってきた白銀の髪の獣人の少女が声をかけてきた。
「どこかで会ったか?」
ベティがその少女に聞く。
「うん。ちょっと前に会ったよ。」
「「「「????」」」」
私たち全員に心当たりはなかった。首をかしげると、彼女は笑顔でこう言った。
「あー、あの時はこの姿じゃなかったからわからないんだよね。じゃあ、こうすれば!」
そう言うと、少女がカッって光ったかと思うと、そこには
「……あ、……あ。」
私たちはあの時の恐怖が蘇ってきた。あの盗賊団から逃げているときに出会ってしまったフェンリルの恐怖に……。
「ルナちゃん!こんなところで人化を解いちゃダメじゃない!」
と、比較的近くからかかった声にビクッとし、シュンと項垂れるフェンリル。
「……ごめんなさい。」
謝るフェンリル。目まぐるしく変わる展開に私たちはついていけてない。
「はい。じゃあ人化をかけ直して。更衣室は貸してあげるからそっちに行きなさい。」
フェンリルが鼻先を撫でられると、再び光る。小さくなっていくその体の
上に布をかけられ、先程の姿に戻った。
「じゃあ行ってくる。」
そう言って、彼女はカウンターの方に向かっていった。
「あれ?あなたたち、《
「あ、オルガさん?なんでここに?」
さっきまでフェンリルに対応していたのはセルウォリスの冒険者ギルドで受付をしている猫獣人のオルガさんだった。
「ええ、この前からこちらに移籍して仕事をしているの。あなたたちは?」
「……実は、ちょっと事件に巻き込まれちゃって。」
「ひょっとしてギルマスの?」
「あ、はい。そうです……。」
「……ごめんなさい。私がギルドに残っていたら巻き込まれずに済んだのに。」
「いえ、ちょっと恐い思いをしましたけど、無事だったので。それにオルガさんのせいじゃないですよ。悪徳ギルマスのせいです。」
「……そう言ってもらえるとうれしいわ。」
そう話していると、更衣室から先程フェンリルになった少女が戻ってきた。
「彼女は、オルガさんの従魔ですか?」
「いえ、今度アダマンタイト
「そうなんですか、王都ってすごいですね。」
私がそう言うと、オルガさんは首を振る。
「いえ、彼は王都の冒険者じゃなく、セルウォリスで冒険者になったあなたたちの後輩よ。」
「えっ?」
私たちは困惑する。だって、セルウォリスの冒険者だったらフェンリルを召喚できるほどの冒険者なら私たちがその噂を知ってるはずだから。
「彼は、あなたたちが依頼を受けている間にセルウォリスで冒険者になって、1日でセルウォリスの冒険者ギルドの闇に気付いて、王都の冒険者ギルドに進言するのに移動しましたから。そんな事情で、彼はセルウォリスの冒険者の殆どと接点はないですよ。」
「あ、そうなんですか。」
私は納得がいった。
「ところで、あなたたち《
「これからですか……。」
難しい話ですね。だけど……。
「フェンリルは恐かった。」
「確かに恐かった。」
「俺はその場面に直接あってないけど、恐いだろうなと思う。」
こくこくとモルも頷いた。
「まーそうよね。フェンリルは恐いわよね……。ルナちゃんは別だけど。」
「そうですね。」
「確かに。」
オルガさんが撫でるフェンリルの少女をみんなで眺める。
「そう言うわけで、私たちはしばらく冒険者は休業ですね。」
私たち《
「そう、じゃあ当面はバイトかな?」
「そうなりますね。」
「じゃあ、ひとつバイトやってみない?」
「「「「バイト?」」」」
「うん、バイト。といっても、他の冒険者と共同になるわね。その冒険者が依頼を受けているときのバイト代行みたいな感じかな。基本危険はないはずだよ。」
私たちは顔を見合わせる。私たちは当面冒険者を休業する。それに、月毎にある程度のお金は手に入る。私たちは頷き合う。
「「「「やります。」」」」
私たちは内容を聞かずにバイトを引き受けてしまったことを後悔することになる。それはこの後すぐのことでもあったし、半年後でもあった……。
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