第48話 世界の裏側③

救済と救世の女神:はい、本物でーす。やすっぽい登場の仕方で申し訳ないんですけれど、お知らせ事項が二つほどありまして急遽赴いた次第です。さて本題なんですが、悪い知らせと良いか悪いかわからない知らせ、どっちの方が先に聞きたいですか?

さんぽマスター:只今チャットは無効化されています。

イリオモテ大和撫子:只今チャットは無効化されています。

ロマン奇行:只今チャットは無効化されています。

救済と救世の女神:あ、すみません。自分が話をしている時に煩くされるのが箪笥の角に小指をぶつけることよりも嫌なものででチャットを停止していたのを失念してました。

メメント森:おい、こんなアナウンスがあるなんて聞いてないぞ

救済と救世の女神:あ、君のは切り忘れてました。しまった、これじゃあ場が締まら無いですね。

メメント森:只今チャットは無効化されています。

救済と救世の女神:まあ、僕が話したいほうから喋りますね。まず一つ目は、ある大学が、今尚ACT倶楽部の閲覧数一位である記事に引用されていた論文について言及したんです。その内容と言うのは、ここ最近までこの論文を改めて研究し、発展実験を行っていた人物がいたということでした。ここで学術的で専門的な言葉を織り交ぜながら細々とその内容に迫ることも興味をそそられはしますが、こうして非常事態的に元々の口調を全く踏襲せずに出てきたことからもご理解いただけるように時間がないわけです。手短に言いますと、この著者は偉大な心理学者であるジークムント・フロイトの考えを引き合いに出し、『日頃、意識と無意識を九対一の割合で使っている我々は、睡眠時の夢ではその境界が取り払われ己の願望を抽象的にイメージ化する。しかし、その反対にそのイメージが途轍もなく具体的で五感の全てが現実と同様に機能してしまうような夢に関しては、それぞれの無意識が保持している願望をありありと叶える展開がなされる。つまり、件の夢は人間の無意識の持つ破滅への羨望、無への退行を映しだした人間に予め備え付けられた機能だと私は考える』と語っています。貴方たちにとっては自らの正義を肯定するという点で、いい知らせとも取れるのではないでしょうか。

そして、二つ目。僕はこのサイトに現れる人をあの記事のリンクから飛んできた数人で制限していたのですが、このインターネットの世界と言うものは恐ろしいもので、この場所の存在を(インターネット上に風と言うものがあるかは知りませんけど)風の噂として聞き、情報を収集し、この場所にいた経験のある者を見つけ出し、それを頼りに解析し、僕の隠蔽工作によって到達こそ完遂されなかったものの暇を持て余したハッカーと思われる人間がこの暗号化された空間をこじ開けようと試行回数を重ねて、もう、そこまで来ていると言うことなんです。ちなみに、ロマン奇行さんもその人ではなく不特定の誰かからこの場所を発見されないように、勝手に防御機能をつけていてくれたみたいですが、鍵をかける場所にはお宝が眠っていると思われるように、逆効果で油を注いでしまったみたいです。

要するに、ここはあと数分で好奇心の怪物によって破壊されます。まあ僕も甘かったですね。最初この場所にたどり着くまでにいくつか人を厳選するための仕掛けを用意したのですが、一人それを掻い潜った上で去ってしまい、その人物が、もといエンジョイ商法さんがそのハッカーに情報を与えてしまったわけですから。

そりゃあ、十三人もいれば裏切り者が一人出ることぐらい容易に想像できたはずなんですが。

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