詩置き場

故やす子

心残り

痛い、痛い、痛い、痛い、すごく痛い


懐に抱えた小さなガラス片が、血管を流れ、やがては脳に至る


二酸化炭素の排出量


調味料の在庫


あとは人生設計だとか


考えることはたくさんあるけど


一先ずは置いといて


華麗に飛び降りる


「見損なったぞ、貴様は自決するような人間ではなかったはずだ」


壁に向かい老人が怒鳴る


「今日帰ったら野球しようぜ」


少年たちが約束する


「プーン」


と、蚊の羽音、やがて蚊柱に


すべて、ないまぜに


囲碁の得意な青年は最早神の領域に


私も強い人間になりたかった


せめて弱くとも優しい人間でありたかった


遠くで鳴る、鐘の音


夕方五時を知らせる鐘の音だ


真っ赤に燃える太陽に、胎動せしは不浄の心


あぁ、もう少しだけ生きたいか、圧縮された人生の終わりに


ひとつ後悔をした、そのほころびから、恨み、つらみ


森羅万象への感謝も忘れ、書き殴ったかのような辞世の句


ヒューヒューもれる息、脂汗、死にたくないと願ってしまった、これが最後の心残り


曲付きはこちら→https://www.youtube.com/watch?v=irq1PF7fm9A

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る