37.旅路
椅子に向かい合って座る青髪の男と赤眼の男が列車に揺られていた。
栗色の髪の少女の隣に座るバーズにツェンが告げる。
「あのよぉ」
「何だ?」
青眼の男の返事に赤眼の男が苦々しげに言った。
「何でこいつが隣にいる訳?」
「俺とシルファが一緒にいるのがそんなに不自然か?」
その言葉に赤眼の男はバーズの隣に座る栗色の髪の少女に視線を向ける。
「こいつだなんて、シルファちゃんに失礼じゃないかしらぁ?」
ツェンの隣に座る黒髪の女がそう告げると、赤眼の男が女に向き直り叫ぶ。
「お前ぇのことだよ!!」
突然の大声に長い黒髪の女が嘆いた。
「青眼の悪魔に母と引き裂かれ、父親にはこの言われ様・・・」
涙ぐむ女の言葉にツェンがハンカチを差し出して応える。
「お嬢様」
「うぅ・・・」
呆れ顔をしたシルファの横に座るバーズが言った。
「白々しいな」
「白々しいのはテメェだろ。俺の質問に答えろ」
視線を青眼の男に移した赤眼の男が刺々しく告げる。
「何でリネアが俺達と一緒にいるのかねぇ?」
「それが彼女の任務だからだ」
「俺を東国に置いていくんだったよな?」
「俺からそう言った覚えはない」
隣の座席に座る長い黒髪を後ろで束ねた男をちらりと見た赤眼の男が言った。
「ログからはそう聞いているぜ?」
「お前がそう聞こえただけだろう」
その返答を受けてツェンが問いただす。
「俺に嘘吐いたってことか?」
「極力お前達親子の願望には応えているつもりだが」
バーズが青い眼を輝かせてツェンに告げた。
「毎度毎度イライラさせられるのは承知の上だがよ、質問に答えろ」
「そいつは嘘は吐いていない」
列車の窓から外の景色を見ている金髪の少年の前に座っているログが言葉を挟む。
「知っての通り親子三人で静かには暮らせない訳だ。お前が東国に留まれば他国からの牽制は強まり、三人で東国から出ようとすればあの国はエルやシルファを人質に取ってでもお前を留めようとするだろう」
そう答えた男の隣の座席で外の景色を楽しんでいた金髪の少年が振り返った。
「ンなこと聞いている訳じゃねぇんだよ」
「ついてきちゃダメ?」
潤んだ瞳でツェンを見つめながら言うリネアに、血走る眼でその目を見つめながらツェンが応じた。
「んな可愛く言っても駄目なモンは駄目だね。とっとと帰れ」
次の駅への下車アナウンスが流れた列車の中で、苦々しい顔をしてツェンがリネアの腕を掴んで座席を立つ。
「そんなに自信がないのか?」
「ああ?」
バーズの挑発的な言動に、リネアの腕をしかと握り締めたツェンが不機嫌そうに答えた。
「彼女を守り切る気がないのなら、そのまま次の停車駅で降りろ」
「テメェに決められる話じゃねぇな」
息をつく間もなくバーズが言葉を返す。
「お前のために子供達を危険に晒すつもりはない」
「ここまでリネアを連れて来たのはテメェだろ」
「私は列車の旅を楽しもうと言っただけだ。お前は彼女が傍にいるのならば全力で守るんだろう?」
そのやり取りの途中で静かにエルが告げる。
「俺が迷惑なら降りる」
そう言って席から立ち上がった金眼の少年の手を栗色の髪の少女が掴んだ。
「エルは悪くない」
「俺のせいで喧嘩してんのを見るのは気分が悪ぃんだよ!!」
掴まれた腕を放そうとしてエルが言った。
「君が降りるなら、私も一緒に行く」
「お前は関係ないだろ!!」
その言葉にエルの腕を両手で握り締めて少女が引き留める。
「あんまり人を心配させないでよ。一人で降りてどうするの?言葉も通じないくせに」
「子供達って言った」
頭に血が上った金髪の少年が今にも己が責められそうなことを警戒した表情をして叫ぶ。
「俺が迷惑なんだろ!」
シルファの腕を振り切って車外へと走り出そうとしたエルの腕を掴んでツェンが告げた。
「だったらバーズはお前を引き取ったりしてねぇよ。こいつぁ俺の話だ」
「この関係が崩されるのが俺には迷惑なんだよ!!」
その言葉を聞きツェンがバーズに視線を向ける。
「俺達が揉めているのは悪かった。説明をするから席に戻ってくれないか?」
「他のお客さんもいるから、大声を出すのは迷惑よぉ?」
二人の言葉にエルは黙って席に着いた。
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