4.エルの話(仮)2

「オリエンタルツアーの準備は済んだかしらぁ?」


事務所のドアを開けると黒髪黒眼の女がそう言った。


「済んだと言えば済んでいるが、何日滞在することになるのか分からんからな」


「別にツェンだけ来てくれても構わないのよぉ?それとこれを昨日返し忘れていたわぁ」


そう言いながらリネアがバーズの座っているデスクの上に事務所の鍵を置く。


「本当にただの旅行ならばそれでも構わないが、君の国が何を企んでいるのか分からない以上、ヤツを一人にするのは危険だからな」


「友達想いなのねぇ?」


その言葉に顔を顰めながら青眼の男が言う。


「ヤツのことなど心配していない。下手にツェンを刺激すると君の国が消滅しかねん」


「やっぱり再調査の結果は本当だったのねぇ・・・貴方の記録は大戦時のものまでしか辿れなかったけれど」


リネアに向けて青い眼を光らせながら感心したようにバーズが言う。


「よくそこまで調べられたものだ。大戦時の我々の記録など一部の上層部の記憶にあるのみだったと思うが」


「色々コネがあるのよぉ」


その時、事務所と住居を繋ぐ扉が開いた。


「おー、リネア。もう来てたのか。準備は万端だぜぇ?」


そう告げ赤眼の男が事務所に入り荷物をソファに置くと、二人の子供達もそれに続いた。


「貴方の荷物少なすぎない?着替えとか入ってるの?」


ツェンがソファに置いたセカンドバッグを見た栗色の髪の少女が艶やかな黒髪の男に告げる。


「いいや、俺の旅は大体現地調達さ。特に今回は何日いるのかも分かんねぇしな」


「その格好で行くのか?」


いつもの黒いスーツを着ているツェンを見て金髪の少年が言った。


「こいつぁ普段着みたいなもんだ」


「スーツ姿に頼り過ぎて私服のセンスが消えちゃってなければいいけれどねぇ」


薄笑みを浮かべてリネアが言った。


「東国で俺のコーディネイト力を見せてやるよ、そいつを見たからって惚れるなよ?」


「着るのは囚人服だけになるかもしれないわよぉ?」


薄ら笑いを浮かべたままリネアが答えると同時に事務所の扉が開かれた。


「お久しぶりです」


長い金髪の女がそう言った。


「何をしに来た。しばらくは会えないと約束をしただろう。勝手に事務所の扉を開けないでくれ」


女に駆け寄る青眼の男の言葉に女が答える。


「ごめんなさい。ノックはしたのですが、在宅されているようなので・・・」


「あらぁ、さっき鍵を閉め忘れちゃったかしらぁ?ツェンならともかく貴方に女っ気があるとは思わなかったわぁ」


女の背後に義足の男が立っていることに気づくと、バーズは強引に扉を閉めようとする。


その様子を見たエルが男の顔を認識すると、自分の意識を置き去りにするかのような感覚に陥り男へと飛び掛かった。


「止めろ!!」


その様子に気づいたバーズが青い眼を光らせエルへと振り返る。


金眼の少年はドアを抑える190cmはあろう巨漢の手をノブごと掴むと、蝶番を引き剥がしドアと共に壁まで投げ飛ばした。


事態が飲み込めないままツェンがエルの下に駆け寄ると、エルが男の首を絞めていた。


「止せッ、それ以上は死んじまう!」


赤眼の男の言葉も聞こえていないかのように金色の目を見開いたまま少年は男の首を絞め続ける。


その様子を見かねたツェンがエルを引き離そうとするが、その指が男の首に吸い付いたように離れない。


「バーズ!!」


ツェンの声に立ち上がった青髪の男がその眼を光らせながらエルに近づく。


次第に緩んでいくその手をツェンが男の首から離させると、意識を取り戻したようにエルが後退った。


「どうしたんだよ、おい」


顔を歪ませながら金眼の少年が、そう告げるツェンの後ろで昏倒している男を睨み続ける。


バーズはその間に立つと青い眼を光らせてエルに告げた。


「こんな男を殺したところで君の損になるだけだ、少し落ち着け」


男の前に立ち塞がる2人を見て悲哀と憤怒を織り交ぜた表情でエルが叫ぶ。


「テメェ等もそっち側かよ!!」


少年は階段を駆け下りると街へと姿を消していった。


「エル・・・」


唖然とした少女が呟いた。




のびている男をソファに寝かせるとバーズはリネアに言った。


「シルファと一緒にエルを捜してきてくれないか?悪いが東国旅行は延期させてもらう」


「東国へ戻るのはそう急がないけれど、貴方の痴情の縺れに付き合わされるのはお断りだわぁ。さっきの様子じゃ私やシルファちゃんまでエル君に襲われちゃうじゃない。そちらの都合で延期するならツェンだけでも連れて帰らせてもらうわよぉ?」


事務所の玄関を直しているツェンを見ながらリネアが言う。


「先ほども言ったが、それはできない相談だ。襲われるどころの話ではなくなるぞ?」


「仕方がないわねぇ、ただ貴方の問題に巻き込まれるのはごめんよぉ。エル君があの様子なら尚更ねぇ」


「この人達は誰なの?」


ソファに横たわる男とそれを看病する女を見ながらシルファが問う。


バーズは深く息を吐くと、こう告げた。


「エルの実の両親だ」


「生きてたんだ・・・」


その言葉に少し物憂げな表情をして少女が呟く。


「何か勘ぐっているようだが私とこの女とは仕事上の付き合いだ。このクズを思い出したせいでエルは興奮しているだろうが、君やシルファに手を出すことはない」


横たわる男を見ながらそう言ったバーズが先ほどデスクに置かれたスペアキーをリネアに手渡す。


「エルが見つからなければ東国旅行は永遠に叶わないと思え」


溜め息を吐くとリネアが言った。


「事情は大体察っしたけれど今の貴方、少し怒り過ぎよぉ?」


眉間に指を当てながら言うリネアに、表情を崩したバーズが言う。


「エルが見つからない限り我々は東国には行けない。かといってツェンを一人で行かせる訳にもいかない。ここで駆け引きするのは自由だが、君とて東国旅行の目処も立たなくなるのは困るだろう?探してきてくれるか?」


その言葉に鼻白んだ表情でリネアが言った。


「嫌な男ねぇ。行きましょう、シルファちゃん」


バーズは膝をつき、両腕でシルファの肩を掴むとその眼を見ながら言った。


「エルは今傷ついている。何を言われてもあまり責めないでやってくれ」


バーズは胸ポケットから無線機を取り出すとシルファに手渡した。


「エルの居場所を知っているであろうログという男と繋がっている、後は任せたぞ」


バーズの言葉にシルファが頬を赤らめながら言う。


「ひゃい!お任せ下さい!」


妙な言い回しになったシルファは赤らんだ顔を更に紅潮させた。


「行きましょ」


赤面したまま俯いているシルファの手を掴むと、リネアは修理されたドアを開けて出て行った。




「こちらシルファ、どうぞ」


栗色の髪の少女が無線機に向けて話す。


「こちらログ、現在このチャンネルは他には使われていない。普通に話せ」


無線機から返ってきた武骨な声にシルファが答える。


「初めまして。エルは何処にいるんですか?」


「その事務所を飛び出していった少年なら北東へ向かっている。現在こちらも追跡中だ」


パルクールの要領でビルからビルへ飛び移るログが答える。


「とにかくその子を連れ戻す気があるなら君達もこちらへ向かってくれ。目印は残しておく」


その言葉と共に突然前方のビルの窓ガラスが砕け散った。


「滅茶苦茶しないで!」


無線に向かって叫ぶシルファに無線機から低い声が流れる。


「エルを連れ帰りたいんだろう?モタモタしていないでついてこい」


二人はガラスの割れる方向を目指して走った。






元々彫りの深い顔を更に険悪な表情にさせたバーズが両肘を膝についてソファに腰を下ろしている。


ツェンは両腕を頭の後ろに組み、片足をソファの上に乗せ背もたれに凭れかかっていた。


対面に座る二人の男女を睨みつけながらバーズが言う。


「何故ここに来た。エルにはしばらく会えない、会える状態でないことは伝えておいたはずだ」


俯き気味にバーズの眼を見て女が言った。


「あの子がこちらに保護されたと連絡を受けてから二か月も経つのです。書面での定期連絡ではよく分からなくて・・・」


「連絡先は渡しておいたはずだ。せめて事前に連絡しろ。君だけならともかく、何故この男を連れてきた」


刺々しい口調で告げるバーズを見たツェンが言った。


「お二人さんよぉ、俺はこいつがここまで怒っているのを見たことがねぇんだ。アンタ等エルに何したんだ?」


足をソファから床に戻し煮え滾るマグマのような眼をした男の問いに、二人は強張った表情のまま何も答えない。


「話しづらければ私から話してやろうか?その方が自分達のしたことを客観的に捉えられる」


「言わないで下さい・・・」


そう答えた女にバーズは憤怒の表情で告げた。


「人に言われたくないようなことを5年間もあの子は受け続けていたんだぞ?」


「昔の話はどうでもいいけどよぉ、奥さんは何をしにここへ?」


バーズを窘めるようにツェンが女に質問をした。


「エルを引き取りたいと思って・・・。夫もそう望んでいます」


「ふざけたことを抜かすな」


怒りのあまり堪えきれなくなったバーズが語り出す。


「この男は5年もの間一日中酒を飲み、当時5歳のエルを殴りつけては暴言を吐き、ろくに食事も与えなかったクズだ。そんな男が今更何を望む?」


「エルが家を飛び出して2年が経ち、自分のしたことを自覚し深く反省しています。だからどうかエルに親子3人での生活を与えてやりたいと思い・・・」


いけしゃあしゃあと告げる義足の男に青い眼の男が吼えた。


「戯言をほざくな!!」


バーズの形相に身を強張らせ男が黙る。


「お前が自分のしたことを分かろうが分かるまいが、そんなことはエルにとって何の慰めにもならない。エルが家を飛び出した日、わざわざ両親の性行為を見せつけられたエルの気持ちがお前等に分かるのか?泣いている母親を見て酒瓶で父親の頭を殴りつけた理由が理解できるか?殴られた父親を庇う母親に出ていけと言われた子供の気持ちなど貴様等には分からないだろう!!!」


「もう止めて!!」


頭を抱えて女が叫んだ。


先程のエルの言葉を思い出してツェンが呟く。


「『テメェ等もそっち側』って、そういう意味、か」


元から低い声を更に低くし、バーズが告げる。


「止めてほしかったのは当時のエルだろう。それをたった2ヶ月で払拭できたと思うのか?」


「家を飛び出してから二年の期間もありましたし・・・」


そう告げる男の声を聞いたバーズが拳を握り締めて言う。


「正気で言っているのか?」


「はい?」


男の生返事にバーズは怒号を上げた。


「スラム街での2年がエルの心の何の慰めになる!!ゴミを漁り、スラムで盗みを続けながらただ死ぬように生きていただけだ!!その事は知っているだろう!!」


「私達とのことを忘れる時間になるかと思いまして」


そう告げる男の言葉に青い眼から光を消した巨漢がその太い腕を振り上げる。


「そういうのは俺の仕事だぜ?」


ツェンが青い髪の後頭部を掴むと男の額にバーズの頭を叩きつけた。


「ここから先の話は私がお伺い致しましょう、奥様」


昏倒している二人の男を気にしながらも、女はポツリポツリと話し出した。


「私が悪いんです・・・。エルのことを何も考えずに夫のことばかりを優先して・・・」


目に涙を溜めながら告げる女にツェンは言う。


「私は湿っぽいのは苦手でしてね。エルのためを思うのならこれからの話を致しましょう」


「というと・・・?」


女の言葉に赤眼の男が答える。


「その男を連れてお引き取り下さいませ、マダム」






バーズ達と初めて出会った場所で金眼の少年が瓦礫の上に蹲っていた。


自分が家を飛び出した日の光景が頭の中を駆け巡る。




狭い部屋の一室、トイレから出てきた金色の髪の少年に中年の男が言った。


「その金色の眼が気にいらねぇ。多分お前は俺のガキじゃねぇんだ。だから今作ってるんだよ、俺の子をな!」


眼前で繰り広げられる行為の意味が分からず、飲んだくれる義足の男をエルが見つめる。


視界に泣いている母親が映った。


「見ないで・・・」


懇願する母親の言葉と泣き顔を見た少年は意識が何処か現生から遠退いたように感じられた。


ゆっくりとした動作で床に転がっている酒瓶を拾う自分を、自分が見ている。


その自分が背後から男に近寄ると後頭部に酒瓶を振り下ろした。


頭から血を流し倒れている男に泣きながら声をかける女の姿を、淀んだ瞳でただ眺めている自分がいた。


「なんてことをするの!!」


ナンテコトトハナンダロウ。普段男にされていることを考えながら少年はぼんやりとした意識で答える。


「母さんが・・・泣いてた」


さきほどよりも憔悴した様子で今も泣いている母親を見て、エルは自分のしたことに対して疑問が生まれていた。


「私のことなんてどうでもいいの!!この人に手を出すのなら出ていきなさい!」


そう告げる女の言葉に意識がはっきりしてきた少年が答える。


「俺は母さんを守ろうと思って・・・」


「アンタが生まれてから私の人生は下り坂よ!!出ていきなさい!!!」


愛する母の言葉とは思えず少年は叫ぶ。


「だったら俺なんか生まなければよかっただろ!!!」


ドアを蹴り開けると少年は闇夜を駈けて行った。


その背を見た女はただ泣き続けていた。




誰が悪かったのか結論を下せないエルは頭を抱える。


父親から受けた仕打ちの数々と、それを庇い己の存在さえも否定した母親の言葉が少年を狂乱に染めていく。


膝を抱える少年の脳裏に青い光が浮かぶと、徐々にその記憶が青く染まり薄れていった。


同時に先ほど父親の前に立つ青眼の男と赤眼の男を思い出し、ポツリと呟く。


「アンタ等もアイツを庇うのか・・・?」






割れたガラスを目印にしたリネアとシルファはやがてスラム街に辿り着いた。


「そのまま真っ直ぐ進め」


通信機からログの声が聞こえる。


その指示通りの道を進むと二人は瓦礫の積まれている広場で蹲っている金色の髪の少年を見つけた。


「エル!」


シルファが声を上げ駆け寄ろうとすると、エルは渾身の力で拳を振り下ろした。


「寄るな・・・」


砕け散った瓦礫の破片がシルファの頬に当たる。


「さっきはどうしたの?あんな君は初めて見た」


うっすらと頬から血を滲ませた少女が言った。


「どうしたもこうしたもねぇんだよ!!!」


瓦礫をシルファに投げつけようとしたエルの手が止まる。


「俺なんか必要ないんだろ!!だったらもう近づくな!!」


「君の事情は知らないけれど」


そう言いながら栗色の髪の少女が金眼の少年へと歩を進める。


その首を絞めればいいのかも分からず、エルは眼前に立つシルファを見つめていた。


「さっきの男に酷いことされたんでしょう?忘れろとは言わないわ」


エルの隣に座ったシルファが言う。


「私はエルのことを必要ないなんて一度も思ったことがないから、家族でいて。たった一月の付き合いだけれど私はそう思ってる」


「俺も先生のことは大好きなんだ」


シルファの首を絞めながら虚ろな目をしたエルが言う。


「よしよし、後はシルファ先生に任せなさい」


力が抜けているエルの手を首から外し、シルファはその頭を膝に抱いた。


「また漫画でも読む?」


少女の言葉にしばらく押し黙っていた少年が答える。


「今はこのままがいい」


その様子を窺っていた男が二人に近づく。


二人の下に辿り着く前に男の頭がライフルで撃ち抜かれた。


「何なの!?」


起きている状況が理解できずにシルファが叫ぶ。


ライフルを担いだ黒髪黒目の男が廃墟の屋上から飛び降りると、現れた無数の男達に駆け寄り頸動脈をナイフで切り裂いた。


「ログだ、少し騒がせるぞ」


そう二人に告げたログが、リネアに蹴り飛ばされ失神している男の頭にリボルバーの銃弾を撃ち込む。


「これはどういうことかしらぁ?」


「君を監視していた東国からの使者に北の残党、この辺りを牛耳っているマフィア共だ。あの二人に手が出せないと知ると今度は身近な人間に手が及ぶ。厄介なものを抱えながらどれだけの敵を作るつもりだか」


長い黒髪を後ろで結った男がそう言いながら、銃を向ける男達に疾風の如く近づくと手にしたナイフで次々と首を切り裂いていく。


「やっぱりとんでもない連中と関わっちゃったのかしらねぇ?」


エルとシルファを守りながら手にした拳銃で応戦しつつリネアが言った。


「100年続いた戦争を突如現れてはたったの5年で終わらせた化け物共だ。君の上司も酷い仕事を回したものだな」


「あらぁ?私のことをご存知でぇ?」


リネアの問いに手にした大口径のリボルバーで的確に男達の頭を撃ち抜くとログが答える。


「バーズから大体の話は聞いている。俺はこの子達を護るよう契約を交わした身だ」


生き残りが数人となった男達を殲滅しているログを見てリネアが言った。


「貴方も大概化け物の部類よねぇ」






「戻ったわよぉ」


事務所のドアが開かれ、リネアと二人の子供達を見たバーズが言う。


「手間をかけさせたな」


「構わないわよぉ、でも子供達にはもうちょーっと優しい環境を用意してほしいわねぇ」


耳の痛い言葉にバーズは三人を通して扉を閉めるとこう告げた。


「他に選択肢があるのならばそうしている」


事務所に入ったエルがじっとバーズの顔を見つめている。


「どうかしたか?」


青眼の男の言葉に視線を反らしながらエルが言う。


「さっきはゴメン。アンタを投げ飛ばしたし、先生の首も絞めちまった」


青い眼を光らせるとバーズが告げる。


「それは俺の不手際だ。こちらこそすまなかった。大人の都合に君が振り回されることなどあってはならない。無事に戻ってきてくれただけありがたい」


その言葉に表情を明るくしたエルがバーズに抱き着いた。


自分の腹部に顔を埋める少年の頭を押さえながらバーズが言う。


「本当にどうしたんだ?」


顔を上げ、バーズの眼を見つめながらエルが言った。


「俺達、家族なんだよな?」


「ああ、そう思っていい」


その様子を見ながらツェンが言う。


「そんじゃあ今日はもう遅ぇし、東国旅行は明日にするか。夕飯を作るとするよ、リネアも食べるだろ?」


「せっかくだから頂こうかしらぁ」


ソファに座りTVを見ているシルファの隣にエルが座るとその太ももに頭を乗せた。


「ひゃい!??」


ソファを飛び退いたシルファにエルが言う。


「どうしたんだ?」


「どうしたんだ、じゃないわよ!!セクハラよ!!!」


言葉の意味が理解できずにエルが答える。


「セクハラ?今のが?だって先生がやってくれたんじゃねぇか。あれ気持ちよかったぞ」


その言葉に顔を紅潮させたシルファが叫んだ。


「あの時は特別だったの!!!」


「初々しいわねぇ」


食欲を誘う香りが漂い始めた事務所でリネアが呟いた。

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