第7章 今週の週末
第29話 情報紙を読みながら
5の曜日のお昼前。
お仕事は休みだしお買い物も終わった。
開拓地に行く準備も出来ている。
掃除も終わったし洗濯物は取り込むにはまだ早い。
私はリビングのテーブルへ。
カイアさんから貰ったエルミナレルを広げ、まずはざっと全体に目を通して内容を確認。
どうやらこの新聞が情報発信を担っている訳だ。
つまり日本におけるネットのようなものなのだろう、きっと。
ショッピング、コンサートや演劇、漫談や講演会の開催、趣味のサークルや講習会情報。
個人間売買の仲介コーナー。
恋人あるいは遊び友達、友人募集の出会い、文通仲介コーナー、なんてのまで載っている。
載っている情報はヘラスやその周辺に関する事がほとんど。
つまりこの新聞、ヘラスを中心とした地域を対象に発行しているのだろう。
全国の大きい都市全てにこんな新聞があるのだろうか。
知識魔法で調べるとどうやらあるらしい。
人口の多い都市では枚数も多いし、同じターゲット相手に複数紙出ているところもあるようだ。
他の世代や性別用の新聞なんてのもあるのだろう。
それぞれの情報の需要にこたえている訳だ。
とりあえず一番はじめから読んでみる。
お店の紹介、服飾系からグルメ系まで。
使えそうな、または興味を持てそうなお店はあるだろうか。
ブラッスリーやパーラーも載っている。
ヘイゼラールもワルトナイヨも、私がリアさん達と食べに行っている時、結愛達が行った『カールマイア』というお店も載っていた。
なお紹介はどのお店も名前と場所、2行くらいの説明だけだ。
カールマイアの場合は、
『フラムレイン北東側にある明るく清潔感ある店。酒から肉料理、甘味までメニューは豊富。テーブル席が多いが消音魔法が弱くかかっており静か。価格帯は高め』
となっている。
カイアさんから名前が出たミルクラスやルアセリアも出ていた。
『ミルクラス:フラムレイン中央部のブラッスリー。テーブル席が多く仲間内でわいわいやるに適した店。価格帯はやや高め』
『ルアセリア:フラムレイン中央部にある入りやすいパーラー。甘味の種類は豊富で軽食類も多彩。人数にかかわらず女性向け。やや高め』
こんな感じで情報は最小限。
きっとこれ以上は知識魔法で調べろという事なのだろう。
もっと詳しくイラストまで入っている店もある。
けれどこれは広告とかタイアップ臭い。
そうやって出ている店でも知識魔法でいまいちと出るものがあるし。
飲食店の場所そのものは街の様々な場所にある。
フラムレインの他にもミッドタウン地区、ニュータウン地区、アップアイランド地区、ボックステイル地区等に多い。
そしてフラムレイン地区にある店は何処もお値段高め~やや高め。
他も地区によって割と価格帯が違っている。
この辺が治安を含めた客層の差なのだろう。
カイアさんが調べる場所をフラムレインに指定した理由がわかる。
ならグラハムさんに会う次の次の候補に良い店はあるかな。
そういう会があるかどうかはわからないけれど。
場所はフラムレインで、値段やや高めで。
いくつか見つかって店をメモしておく。
なかなか便利だな、この情報紙。
それでは他に何か有用な情報はないか、続いて見てみよう。
服飾店はざっと見るだけにするつもりだった。
でもケーラアーケードが載っていたのでつい見てしまう。
なるほど、レアさん達が最初に私に対して服を見繕ってくれた店、あれは結構お安めの店の模様。
というか、スニークダウンという地区そのものが『高級店しか行かないような層でも
だからお店も品物も『高級店より流行に速く高級店並みの品質でより安く』を狙っているようだ。
ケーラアーケードの他、ラフザックという男性用の似たような
いわゆる意識高い系の地区という事だろうかとも思う。
でも意識が高い代わりに値段の割に品質が低い、なんて事では無い。
それで値段が安いのだから悪くはないのだろう
そしてここまで見てやっと気がついた。
リアさん達もきっとお金持ちというか、少なくともヒラリアにおいては上の方の階層なのだなと。
アスクライテやヘイゼラールあたりは高級店だとカイアさんは言っていた。
しかしこの情報紙で見るとワルトナイヨも結構高級な方という分類だ。
選んだのはきっと単に勤務先や今住んでいる家から近いからという理由だけでは無い。
『このくらいの店でないと安心できないし満足できない』レベルがワルトナイヨあたりなのだろう。
何か随分日本にいた頃と違ってしまったなと思う。
勿論悪い事ではない。
ありがたいし、結愛の為にも良いことだ。
でも和樹さんと、そしてちひさんにはやっぱり申し訳なく感じる。
服ひとつにしてもちひさんが気を配ってくれていた。
私はカイアさんが教えてくれるまで気づかなかったのだけれど。
だからと言って何か出来る訳でもない。
それがもどかしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます