第43話 リーダー

「次に。厄災が疫病だった場合の対策なんだけど、万能薬の在庫を村で増やしてもらいたい」


 


 俺は力強く言った。


 


 万能薬とは名前の通り、あらゆる病気に効く薬で村の雑貨屋に金貨10枚で売られている。かなりの高級品だ。ちなみにポーションはケガに効く薬で銀貨5枚である。




「万能薬か。村人全員分用意するにはとても金が足りねえな」


 


 バルデスが言った。




「すぐに全員分用意するのが無理なのは分かっている。徐々に増やしていってもらいたい。それで、資金のことなんだが俺は今、給料を月、金貨20枚貰っているがその内の5枚を厄災対策資金として村に寄付する。マシュー君やバルガスさんもそうしてくれ。村のためだ。この話は村人にも話してくれ、協力してもらえる人には協力してもらいたい。金は必要だ」


「お前、いい奴だな。分かった、俺も協力しよう。俺は月、金貨120枚貰っているからな、80枚くらいは寄付するか」


 


 バルデスは感心した感じで言った。




「おいおい、親父。そんなに貰ってんのかよ。俺より多いじゃねえか」




 バルガスがバルデスに言った。




「うるさいハゲ息子。それぐらい貰って当然だろ、村長なんだから」




 バルデスがバルガスに言った。




「あとは見張り所の建設と緊急時を知らせる鐘の設置。防衛団とハンターギルドの強化。強い奴のスカウト。俺に行商人も紹介してもらいたい」


 


 俺は矢継ぎ早に言った。




 あとはまあ、後々思いつくだろう。




「レンさん、なんかリーダーみたいです。ちょっとびっくりしました。意外な一面ですね」


 


 マシュー君が驚きの表情をしながら言った。


 


 甘いな、マシュー君。俺は派遣で働いていた時、ラインのリーダーをやっていたことがあるのだ。なめてもらっては困る。俺は結構、有能なのだ。しかし、人間関係の煩わしさが嫌で辞めてしまったが。時給も100円しか上がらなかったし。




「すまん、俺もちょっといいか」


 


 山田純太が薄暗い声をあげた。




「俺に金を稼がせてくれないか、ハンターでも防衛団でもいい」


「うちは無理だな。ハンターは村人のために働く信用第一な仕事だ。あんたみたいな闇の予言者はお断りだ」




 ヘンリーが見下すように吐き捨てた。




「防衛団でしごいてやってもいいが、防衛団は掛け持ちの奴が多い、あんた、畑仕事しろよ。じゃが芋の収穫を手伝ってくれ。自然にふれることで、その汚え闇を追っ払っちまいな」




 バルガスはそう言うと、山田純太の肩をかなり強めに叩いた。


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