第118話

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そんなトオルを見送ったかよこは、密かに笑みを浮かべる。彼女が意気揚々と話してくれたおかげで、かよこの中には相当の情報量が募っていたのだ。「ふふふっ。馬鹿な子」自分で自分と友人を危険の晒しているなんて、きっと彼女は気づいていないのだろう。なんと愚かで、愛らしいのか。キヨラ共々、水神にして使役してもいいかもしれない。「ふふ、せいぜい絶望するといいわ」




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それからかよこはトオルに取り入った後、キヨラとも接触を果たした。相変わらず忌々しいオーラを持っている彼女に笑みを送りながら、かよこは術を練っていく。高く高く持ち上げた方が、その分落下する勢いも凄まじいものだ。どんな顔をして絶望するのかと想像しながら、かよこは二人に親身になって煽てていく。そして——その時はやって来た。退院を目の前にしたトオルに「とある漫画家が私の友人でね、貴女に会いたいそうなの。ぜひ会ってくれないかしら」と声をかけた。とある漫画家は事前にトオルから聞いた、彼女の憧れの人物の名前。もちろん、そんなものは嘘なのだが、トオルの喜びようといったら可哀想なほどだった。


そして約束の日。待ち合わせと称して病室で待ち続けるトオルに、口元が歪むのを抑えられない。約束の時間をとうに過ぎてもやってくる気配のない人影に、トオルはとうとう泣きそうな顔をして俯いた。隣にいたキヨラが顔を顰める。その様子に、かよこはここぞとばかりに姿を現した。トオルの目が縋るようにこちらを見上げてくる。「か、かよこさん」「ふふっ、どうしたの。トオルちゃん」「あ、あの、あの方ってまだ……その……」言っていいのかと躊躇うトオルに、かよこはニンマリと笑みを浮かべた。「あの方って一体誰なのかしら?」「えっ、だ、だってご友人だって」「ふふふ、そんなの嘘に決まってるでしょう?

そんなことも分からないのかしら?」あははは、と高笑いをするかよこに、トオルとキヨラの目が大きく見開かれる。信じられないと言いたげな表情に、かよこは煙管を手にするとひとつ大きく煙を吸い込んだ。ふぅ、と術と共に煙が吐き出される。「あなた、ここ病院よ!?」「だからどうしたのかしら?」キッと睨みつけてくるキヨラにほくそ笑む。煙が病室に充満し、その煙がどんどんと分厚く、濃くなっていく。かよこはほくそ笑んだ。「その信頼感。どこまで続くのかしら。見物ね」

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