第37話 距離感

「いや、私コーヒー好きじゃなかったと思って」


「やっぱ、返す」


 リナはそもそもコーヒーが好きではなかった様だ。


 自分から誘って来たのに………と思ってなぜか残念な気持ちになった。

いや、期待してたわけじゃないんだ。でもなぜかそんな気持ちになったんだ。


 コーヒー飲めないって、先に言ってくれてたら他の飲み物にだって出来たんだ。

そんな事を考えてしまった。


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 リナから手渡されたコーヒー牛乳を飲む………美味しいんだけれど何かが違う。

ゴクゴク、、、ゴクゴク、、、うん。美味しい。でも何かが物足りない。

でも、これが普通なんだ。


「おいしい?」


「美味しいよ」


「やっぱ、ちょっと飲もうかなぁ。んー。でもぉコーヒーは………あんまし……」


 そんな、あまり内容の無い会話をしつつ、隣会って座る俺たち。

隣り合っていて触れてはいないんだけれど、お互いに体温を感じれる。そうすると特に喋らなくても、間が持たないような感じはしない。

でも………休憩時間もそろそろ終わりかな。


「そろそろ戻ろうか」


「うん」


 そう、言って席を立って歩き出した。リナは付いて来て、昨日の様に俺の手に触れて来ようとしたんだけれど、、、近づいて来た時に思わず離れてしまう。


 するとリナは立ち止まってしまった。


「どうして………」


「どうしたんだ?」


「いった君、昨日よりも私と距離がある気がする。なんか避けられてる?」


「え、、、そんな事はないと思うけれど。普通に仲良しじゃない?」


 お互いに見つめ合う俺達………彼女は不安そうな顔をしていた。

リナに惹かれてるのを自覚してから、少し距離を取ろうとしていたかもしれない。

今のところ、俺かサオリが居なければ、目の前の彼女は学校でも家でもボッチなんだ………その事を思い出した。


「ごめん、ちょっと思うところがあってさ。でも、もう大丈夫」


 そういって、隣に寄り添ってから手を差し出した。

そうすると、リナも握り返してくれた。。。

柔けぇ………女の娘の手ってなんでこんなに柔らかいの。

それに小さくて肌がすべすべだ。男の手とは全然違う。


「じゃ、戻ろうか。ちょっと恥ずかしいけれど。このまま」


「うん」


 もうドキドキして来て、完全に目は覚めた。そして、教室に近づけば近づくほど………緊張する。。。けれど、そのまま席に戻っても特になにも言われなかった。


 まぁ、もう休憩時間終わりだし。わざわざ気にするほどの事でもなかったんだ。思い返せば教室を出る時も、手を引かれて出たんだし。。。


 それからは何事もなく、昼食の時間になったので、俺はカバンからりんごを取り出して食べ始める。


 サオリは、教室を出て行く時に、一声かけて来た後、学食に行ってしまった。今日もランチ後ミーティングやるとかで、全身から行きたく無いと言う雰囲気を出して居てちょっと怖い………後ろに居る石井君、あとは任せた!


リナは今日はお弁当持って来て居たようで、自分の席で食べ始めてるが、この前よりもちょっと多い?


「今日、お弁当がちょっと多くない?」


「うん。ママに少し多めにしてってお願いしたから、食べる?」


「それなら、お肉ほしいかなぁ」


 そう言ってミートボールの方を見る。あ、ミニトマトも欲しい。


「ミニトマトも貰える?」


「おっけー」


 そう言って、お弁当と箸を手渡してくる。

んー『あーん』はしてくれないのか。いいけど。


 モグモグ。うん。お肉美味しい。この間食べた卵焼きと同じく、今日のお肉もチーズ入ってる。


「このハンバーグもチーズ入ってるけど。チーズ好きなの?」


「うん。チーズはパパが好き、だったから………」


 え、この場合なんて言ったらいいの。。。どっちのパパ?

とは言えないよな………? 話の流れからすると離婚した方のパパっぽいけれど。


「へぇ、俺も好きだよ。チーズ」


「私も好き」


「じゃ、ミニトマトも貰うよ」


 そう言いつつミニトマトも食べる。うん。いいな、今度からミニトマト持って来るのもいいかもしれない。でも、りんごの安定感は捨て難い。。。んー。


「どうかしたん? 考えこんじゃって」


「あ、いや。りんご以外にも何か持ってこようかなぁ。どうしようかな。と思って」


「うちから持って来るよ?」


「いや、毎回だと悪いだろ」


 そう言いながら、お弁当を返えした。


「もういいの?」


「大丈夫。ありがとう、美味しかったよ」


「よかった♪」


 リナの嬉しそうな顔を見ながら、俺は残りのりんごを食べ始める。いつも2個持って来てるけれど、お弁当シェアしてもらう日は1個に減らしてもいいかもしれないなぁ。そう思いながら隣のリナの姿を眺めつつお昼時間を過ごした。


つづく

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あとがき


女の娘と席を向かい合わせないで、あえて隣のまま食べるの良いなと思います。


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