第49話 密書

ある日、元就は使者から密書を受け取った。

「義隆殿じゃな……」

元就は手紙を読み、隆元や家臣団を呼び出した。

「兄上―」

少輔次郎と徳寿丸は、隆元に訴えかけるように見つめる。

隆元は厳しい顔をした。

「ダメじゃ!」

「ワシらも入れてくれるよう、父上に頼んでくだされ!」

「ダメじゃ、少輔次郎は先の郡山合戦でさえ父上の反対を押し切って勝手に出陣したであろう!」

隆元は厳しく注意し、二人は一度引き下がる。


悠月たちも呼ばれたので、一応顔を出すことにした。

「軍議だろ? 俺たちも良いんだろうかね?」

「さあ……。でも、呼んできたのはあちらだし……、良いんじゃないかな?」

「ところで、次の戦は……」

「その話は今からするんでしょう」

くるみは二人の背を押して部屋の中に入らせ、部屋の襖を閉める。


だが、やはり簡単には諦めない二人である。

こっそりと、別部屋に入り込んで、襖を少し開けて盗み聞こうとした。


「こら!」

運がいいのか悪いのか……。

開けた襖は、隆元のすぐ後ろだった。

隆元はいつもとは違い、少し厳しめの声で叱る。


「お主らはまた盗み聞きを働こうとしたな」

元就は苦笑いで注意する。

「こたびの戦はこちらから進軍する故、お主らはこの吉田郡山城で留守を頼むぞ」

「父上、わしは力になれます! 初陣だって無事に帰って来たし」

「初陣と次の戦とは違うからの!」

元就も厳しめに叱る。

「お主ら、もう下がるんじゃ」

「はい……」

徳寿丸は大人しく引き下がった。

彼はまだ初陣もしていない、ただただ幼子なのである。

少輔次郎はむっとした顔をしつつも、最終的には引き下がるしかないと判断して、渋々引き下がった。


「では、軍議を続けるとしよう」

どうやって大内義隆の援軍を務めるか、という軍議が始まった。

元就は密書を広げて、読み上げた。

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