廃墟の星
河野 狐
プロローグ 廃墟の星
ある宇宙に灰色と茶色で色づいた廃墟ばかりの惑星があった。この宇宙で最も活発に生命活動が行われている星の一つだったこの惑星は、かつて奇跡と呼ばれ、知能を持った支配者達が高度な文明を築いた。砂漠にそびえ立つ廃ビル街、各地に点在する高度な電波塔、惑星に残された彼らの遺産達がそのかつての栄華を淡々と物語っている。
まだこの惑星が緑で青かった遠い昔。星が色を変えてしまうのを危惧していた彼らだったが、彼らには時の流れを変えることができず、ゆっくりと、ただゆっくりと、この惑星は緑から茶色へ、青から灰色へと姿を変え、山の熊や、海の鯨、街の蟲々をも巻き込み、永い年月を掛けて数を減らしていった。
それでもこの惑星は自転を続け、残った住人に朝と夜を与え続けた。それに応えるかのように、世界の色が変わろうと住人は生き続けた。星の自転に合わせてただ生き続けた。熊は小さい木の実を貪り、鯨は灰色の大海を泳ぎ、蟲々は星夜に羽ばたいた。そしてかつての支配者達もこの星に、生きていた。終わりゆく文明と共に。
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