リルケ「真面目な時」(訳:立原道造) 『立原道造全集 第四巻』より


今どこかで世界のなかで泣く人は

理由もなく世界のなかで泣いてゐる人は

あれは私のことを泣いてゐる


今どこかで世界のなかで笑ふ人は

理由もなく世界のなかで笑ってゐる人は

あれは私のことを笑ってゐる


今どこかで世界のなかで歩む人は

理由もなく世界のなかで歩いてゐる人は

あれは私の方へ歩みよつてゐる


今どこかで世界のなかで死ぬ人は

理由もなく世界のなかで死んで行く人は

あれは私の方を見いつてゐる

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