第18話 穏やかな日々
ダルセル様と婚約してから、色々な事件があった。
婚約が決まった後、その話を聞いたマルシャル様やノルベール様が屋敷に押し寄せてきた。だが、ダルセル様が立ちふさがって守ってくれた。私は何もせずに、彼らは帰っていった。
その後、大臣と騎士団、宮廷魔術師達の関係は悪くなったらしい。私が原因のようで、申し訳ない気持ちになった。だけどダルセル様は、君は何も気にする必要はないと言って、慰めてくれた。
それからダルセル様が各方面に手回しして、彼らの関係は改善したそうだ。元の関係に戻れたようで良かった、と思った。
一番大きな事件は、私が暗殺されそうになったことだろうか。とは言っても、私がそれを知ったのは全て終わった後だったけれど。
気づかない間に、ダルセル様が全て処理していた。なので私は何も知らないまま、危険を感じることもなく事件は終わっていた。
私を暗殺しようとした犯人は、ユウコだった。どうやら、ヘルベルト王子が婚約を破棄した私に未練があったらしい。婚約破棄を告げられた後、地方に引っ込んでから会っていないのに。何を未練に思ったのかしら。
それが気に入らないから、暗殺者を仕向けたらしい。あの光景で見た、私のような軽率な行動をしてしまったようだ。だけど私が見た光景と、逆の立場になっていた。まさかユウコが、私を殺そうとするなんて。
ユウコの計画は成功することなく、全て事前に察知されていた。。暗殺者の動向、計画の日時と内容、雇い主の情報も全て。
暗殺しようとしていたことを知ったヘルベルト王子は激怒して、ユウコを処刑するように指示した。そして、その処刑は即座に実行された。
再会することなく、ユウコは居なくなってしまった。私にとって、それで良かったけれど。
ヘルベルト王子は、婚約破棄の件と新たな婚約者が起こした問題の責任を取って、王位継承権を放棄することになった。
そして彼の代わりに、今まで存在感の薄かった第二王子が新たな皇太子となった。
なぜか今まで、彼についての話題は一切なかった。ヘルベルト元王子が注目を集めていたから、なのか。とにかく、その王子の存在感は非常に薄かった。だが実際は、それなりに有能だったらしい。
新国王として即位した後、彼が治める王国に混乱は生じなかった。そして、平穏な日々が訪れている。新たな王の無難な活躍に、ヘルベルト元王子の存在は忘れ去られていった。
処刑される未来の恐怖も薄まり、他の男達の求婚も収まった。私は中央に戻ることにした。そこで、ダルセル様と一緒に暮らしている。
それから数年後。
「ダルセル様、この子は無事に生まれてきてくれるかしら?」
「安心しろ、コルネリア。母子共に健康そうだ。魔術で確認したが、無事に生まれてくるだろう。何かあった時にも、色々と備えている。だから大丈夫だ」
少し膨らんだお腹を撫でながら、ダルセル様に尋ねる。すると彼は、力強く答えてくれた。その言葉が、私を安心させてくれた。
今までずっと守ってくれたから。あの時に抱えていた恐怖は、もう感じなかった。ダルセル様の言葉は、いつも本当だった。
決して後悔はさせない、という彼の言葉も嘘じゃなかった。
「お前は今、幸せか?」
突然、ダルセル様が不安そうな表情を浮かべて聞いてきた。投げかけられた疑問に驚きつつ、すぐに頷いて答える。
「もちろん、幸せよ」
「……そうか。よかった」
私の答えを聞いて、嬉しそうに微笑むダルセル様。そして、続けて次の質問。
「ならば、私のことは……」
言葉の途中で黙ってしまったダルセル様。だけど私には、彼がどんな言葉を求めているのか分かった。なので、素直な気持ちを答えた。
「もちろん、ダルセル様を愛していますよ」
「……そうか!」
出会った当初、色々と複雑な気持ちを抱えていた。けれど、もう何年も彼と一緒に過ごしてきた。それで知ることが出来た、彼の素晴らしさ。私のことを大事に守ってくれる。大切にしてくれる。そして、これから生まれてくる子供も。
「私も、コルネリアを愛している。これからも、ずっと」
そう言ってダルセル様は、私を優しく抱きしめてくれた。
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