第16話 後悔 ※ヘルベルト王子視点

 これで良かったのかと、今も悩んでいる。


 コルネリアに婚約破棄を告げてから、ハースト伯爵家の令嬢であるユウコと新たに婚約した。彼女と出会った時、それが運命の出会いなんだと感じたから。


 彼女は俺のことを深く理解してくれた。彼女と居る時間は、とても心地よかった。王族という立場も全て忘れて、穏やかに過ごすことが出来た。あの頃の俺にとって、心休まる時間だった。


 ユウコと一生を添い遂げることが、俺の人生にとって一番の幸せなんだと思った。この先、王を継承して国を治めていくためには彼女のように心を休めてくれる存在が必要で、近くに居てほしいと願った。


 だけど今、その時の考えや感情は間違いだったのではないかと思うようになった。軽率な判断で動くべきじゃなかった。もっと、ちゃんと考えるべきだった。


 婚約が決まった後、ユウコの振る舞いは少しずつ変化していった。以前のように、俺のことを理解してくれているのか分からなくなった。感情的で自分中心という女に変わっていった。未来の王妃という立場を得た彼女は、徐々に傲慢になっていった。


 それは、婚約する前には見せなかった姿。それが彼女の本性なのか。今のユウコを王妃にしても良いのだろうか。それが、とても心配になった。


 前の婚約相手であるコルネリアならば、そんな心配をする必要はなかったのに。


 コルネリアは、王妃になるために幼い頃から様々な教育を受けていた。彼女なら、立派な王妃になってくれただろう。


 どうして俺は、彼女に婚約破棄を告げてしまったのだろうか。一時の気の迷いで、俺はとんでもないことをしてしまった。今になって、あの時の行いを後悔している。


 前のような関係に戻ることは、もう出来ない。だけど、どうにかして以前の関係に戻すことは出来ないだろうか。ユウコではなく、コルネリアを王妃に据えるためにはどうしたらいいのか、必死に考える。


 だけど、何も良い考えは浮かばなかった。




 コルネリアが宮廷魔術師長のダルセルと婚約したという話を聞いた時、後悔という気持ちは更に大きくなった。


 なぜ彼女は、俺以外の男と婚約してしまったのか。婚約破棄を告げた男が、彼女を責めることなんて出来ないことは分かっている。だけど、こうなってしまうと以前の関係に戻すことは、完全に不可能となってしまった。


 だから俺は、彼女の婚約を素直に祝福することは出来なかった。


 なんで、こうなってしまったのか。俺の後悔は続いた。

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