第6話 示談

「卓也さんはいつも渡してくれるってカナコさんが言ってました」




あいつはやはりなんちゃって慶應ボーイだった


社会勉強だけは相変わらず真面目にやってたらしい




ってゆーか、タクシーで帰ろうとしてるのかよ


キミは自分の足元に感じないのか?この揺れを


なんて贅沢な女だ




「わかったわかった、払うよ。んで、家どこなの?」


「え、家ですか?」


「ざっくりでいいから教えてよ」




(この子ほんとにタクシー代もらう気あるのか?)




「えっと、、、調布らへんです」




(“らへん”ってなんだよ。まあ職業柄、具体的な場所は言えないのか。それにしてももっと都心に住んでるかと思ったが、調布だと少し離れてるな・・・)




「じゃあ5,000円で足りるかな?」








「あの・・・カナコさんからはタクシー代は最低でも1万円と言われてるので、1万円でお願いします。」




「いっ、イチマンエン!?」




(1万円なら八王子まで行けるぞ?さては田舎者だって思われたくないから調布って嘘ついたなこのイモ娘め!)




時間にするとわずか数十秒くらいだろうか。


急に黙り込んだ俺を見てその女は言った。




「あの・・・もういいです、5,000円で」


示談は成立した

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