第5話 婚約破棄 ~ side マリア ~

「エレノア・ベイリンガル!貴様との婚約を破棄する!!」


ゲイル様が宣言した。

白馬の王子様ほどではないけれど、金髪碧眼のまぁまぁのイケメン。

なにより、今の国王が死ねば、国王になる人。

贅沢し放題!

超玉の輿!!


「俺を立てることもできないお前のような不出来な女は、国母に相応しくない!」


そう言って、ゲイル様が私の腰を抱いて引き寄せたわ。

美男美女、お似合いでしょう?

婚約破棄を言い渡されたエレノアとかいう女が、悲しそうにこちらを見ているわ。

ふふんっ、いい気味。

ゲイル様は聖女である私を選んだのよ!

侯爵がどんだけ偉いかしらないけど、あんたは私に負けたのよ!


「俺は真実の愛を見つけた!皆の者、聞いて驚け!このマリアは、異世界から転移してきた聖女なのだ!!!」


会場がざわつき始める。


そうよ、私は異世界から転移してきた聖女。

平伏しなさい!

って、なんで誰も私を敬わないのよ。

あぁ、まずはこの無様な女の行く末を楽しみにしているのね。

しょうがないわ!

こんな一生に一度見られるかどうかのイベント、私もと~っても楽しみですもの!

この婚約破棄ざまぁイベントが終わったら、みんな私に平伏すのよ!!


ゲイル様も興奮しすぎよ!

ふふふっ、ゲームでも楽しかった乙女ゲームの断罪イベントが実際に経験できるなんて、楽しいわっ!!


「あの!伝説の!『異世界から転移してきた聖女』だ!異世界の聖女が現れた国は、あらゆる外敵から守られ、栄えて金持ちになると言う、あの伝説の異世界の聖女なのだ!!マリアがいればこの国は栄え、贅沢の限りを尽くすことができるのだ!!」


ええ、ええ、贅沢の限りがつくせるのよ!!


私は嬉しくて、ゲイル様の腕に自分の腕を絡ませて、肩に頭を摺り寄せる。

仲の良さをエレノアに見せつけて、その顔が歪むのを楽しむのだ。


「マリアこそ、国王たる俺に相応しい!!!」


国王の妻…つまり、私は女王!!


「エレノア・ベイリンガル!貴様は国外追放だ!」


ゲイル様が、エレノアに向けてびしっと指を指しながら言った。

これが、あの、婚約破棄からの国外追放イベント!


お・も・し・ろ・す・ぎ・る!!


少し距離はあるけれど、エレノアが泣いた!

ぷぷっ、ざまぁ!!


「お父様、お母様、お兄様!」

「「「「「エレノア!」」」」」


なんか家族で抱き合ってるよ、みっともない。

でも、お兄様と呼ばれた人たちはイケメンね。

ハーレムに入れてあげてもいいわ!


暫く抱き合っていた6人が離れた。

あ~あ、おばさん、ショックで座り込んじゃったよ。

これ、侯爵家から除籍されて平民にってパターンにはならないかも?ざぁ~んねぇ~ん!


階段上からゲイル様と見るエレノアは、無様で哀れだわ!

気持ちいい!!


「元婚約者、詐欺師エレノア!貴様は早くこの国から出ていけ!!そして聖女であると長年王族である俺を騙していた罪で、ベイリンガル侯爵家は、取り潰しだ!!!」


ゲイル様が私の腰を強く抱きながら宣言したわ!

除籍じゃなくて、家ごと取り潰しね!素敵!!


「畏まりました!失礼いたします!!」


ダダダダダッ

エレノアが凄い足音をさせながら、会場から走り去ったわ!

そんなに悔しかったのね!!


「謹んで承りました!長年この国に仕えさせていただいたこと、身に余る光栄でございました!!失礼いたします!!!」


ダダダダダッ!!!!

バビュンッ!!!!


ああっ!

あのイケメン兄弟は残っても良かったのに!

後でゲイル様にお願いして、私の護衛に加えてもらいましょう!


会場が騒がしくなってきたわ。

みんながこのイベントを楽しんでいるのかと思ったら…


「エレノア様が聖女?」

「どういうことだ。」

「誰か、事実を知っている者はいないか?」

「16歳のエレノア様が聖女なら、16年前からのこの国の繁栄も納得できる。」

「確かに。」

「待てよ、聖女のエレノア様がこの国から追放されたということは、この国はどうなるんだ?」


会場からそんな声が聞こえてきたわ。


失礼な!

私が伝説の『異世界から転移してきた聖女』なんだから、国は栄えるに決まっているでしょっ!!

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