第15話
ともともダイアリー5/21日付より
反抗期やな、と思った。彼は自由を欲してあらゆる束縛だとか、マナーだとかに戦おうとしている。
それはある種、誤りではないと僕は思っている。皆が呆けて寝るための全校朝礼なら必要ない。それならば、放送にしてもいいし、座らせてもいい。それとも、最初からやらないか。
そして、フレンチのマナーほど馬鹿馬鹿しいものはないだろう。箸だとかスプーンだとかで食べられるご飯をナイフフォークで醜くすくう。皆が楽しく食べるために会食をするんだったら、いつも食べているようなカトラリー(箸とか、ものを食べる道具)で見苦しくないように滞りなく食べればいい。
別に文化の模倣を嫌っているんじゃない。嫌っているのは押し付けのことだ。パスタはスプーンとフォークで食べるし、サラダはあのフォークとスプーンがくっついたトングでよそう。
サラダをナイフフォークで上手くすくうことも教養の一つと述べる奴がいれば、僕は軽蔑する。
まあ、彼に同調したこんな愚痴はおいとく。しかし、その大人からの管理というものが、フィルタリング設定や利用時間制限となると僕は立場を変える。
まあ、現実を言えば、高校生たちにとって悪名高いあんしんフィルターの検索ですらも違法サイトが見つかって閲覧できるという致命的な欠陥も持っていたが、それはおいておく。
本人の安全のためのセキュリティを自ら放棄するのはよろしくないと思う。そして、それを制止したことで、「所詮親なんてもんはしょうもない」と思われるのも、さすがにとばっちりである。
しかも現実、カクヨムに留まらずすでにDiscordという不特定多数の人物と隔離チャットができるというサイトを彼は始めている。まさか裸の写真送って拡散とか、脅されとかはしないだろうが、危険性は分かるであろう。
僕も結局、彼の誘いに応じてDiscordを開始している。別にどうこうないが、電話もした。彼個人に留まらないが、自分たちの世代は少し公開SNSに対して警戒が甘いと思う。僕は一応、矛盾のないように架空の身分を生み出しているが、僕の見ている人たちは、県名を堂々と開示し、居住地が推測されかねない投稿も目立っている。
しかも、最悪なことに、カクヨムの投稿の中で、僕は彼の所在する中学の名前を特定できた。一応本人には警告したが、投稿の編集はされないだろう。
また、Discordではもっとその傾向が大きい。県名と、私服高校であることを述べてしまえば、大体の選択肢は特定できる。
こういうものは、いつか大きな実害を受けない限り恐ろしさには気付けない。僕もまた、実害は受けていないのであるが、周囲には過剰とも取れる保身を続けている。
また気になったのは、親を簡単に切り捨てる思考である。まあ、僕も親へのほだしこそあれど、きずなはないと思っている。他の人間よりはまだ自分に無害であることを確信でき、その上無償で扶養してくれるかけがえのない存在ではあると知っているが。どうしてだか、恐怖が先行してしまう。暴言、ネグレクト、暴行などの体罰はないのだが。
歳を食えば、両親のいることの価値が考えずとも理解できるようになって、何も文句が言えなくなるのだが、彼はまだそのありがたみ、もしくは罪悪感に圧迫されずに棚上げが出来るのかもしれない。
まあ、彼は感情が大きい方だから、その後にいいようもない罪悪感と、感謝に目覚めるのであろうが。むしろ、自分の方が不安だ。親への感謝は、恥ずかしくてとかそういう理由じゃなく、理由の列挙でしかできない。たぶん、感動的な手紙をでっち上げることはできても、心はそこにない気がする。親は僕にとって既得権益なのだろうか。こないだ福岡の労務相談センターに父の労働条件を相談したときにも、自分はあるとき、「過労死なんてされたらたまったもんじゃないですからね」とフッと言葉をもらした。「残された身が辛いんだからさ、全く」とごちるように。
自分の薄情さが怖い。
やはりまた脱線した。だが、親への薄情さというものは、何か記憶に残る。福岡で小2の頃にポケモンのBWがもらえないことを幼馴染に愚痴ったら、割と温厚だったはずの彼が、「買ってくれないと自殺するって親に言えば買ってくれるよ」と言ったことも思い出した。かなり寒気がした。
自分は、モラルとかコンプラとかいった暗記ものは得意で、守る意志はあるけれど、むしろ人とのコミュニケーションの方が苦手だ。最近では感情も活発になってきたけれども、まだまだ人の心も分からない。分かるとしても、現代文のテストを回答するようなさっぱりとした文章。共感はできない。
さてさて。脱線がひどいな、これは。反抗期というものに僕は少し考え込んでしまった。
ではでは。これは本編作ではないが、つい言いたくなった。誰か読んでくんないかな…。
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