第8話 『亀の老人』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第8話
『亀の老人』
俺の名はイタッチ。あらゆるお宝を盗み、世界を飛び回る大泥棒だ!
「よく来てくれたな。イタッチ殿……」
シワだらけの頬を上下させて、亀の老人は喋りかける。
「爺さん、あんたに呼ばれるなんて、何年振りか……」
「さぁな。お前がオムツをしていた頃か……」
俺と向かい合い、ベッドに横たわった亀の老人。
俺は老人のベッドの横に設置されたテーブルに、フルーツの入ったバスケットを置く。
「裏社会を仕切っていたあんたも、歳には敵わなかったか」
老人の身体には医療器具が取り付けられている。それをつけていなければ、生命活動を続けることができない状態だ。
「お前さんと争っていた日々が懐かしいわい」
老人は目を閉じて思い出す。
裏社会を仕切っていた老人は何度かイタッチとぶつかることがあった。裏社会のお宝にも手をつけるイタッチとは、敵対関係である。
だが、今となれば、それも懐かしい思い出。
「……それで俺に何の用なんだ? 理由もなく呼び出すわけはないよな」
俺がそう聞くと老人は甲羅の中から写真を取り出し、それを俺に渡した。
そこには黄金に輝く亀の甲羅が写っていた。
「こいつは?」
「わしももう、自分の命が短いことは分かっている…………。だから、最後に一眼だけでも、その黄金の甲羅を見てみたい」
「このお宝を俺に盗んで来いってことか……。報酬は?」
「一眼見れれば十分だ。その甲羅を与えよう」
それを聞いた俺はしばらく写真に写った甲羅を見つめる。
黄金でできた甲羅。それだけでもかなりの価値がある。だが、気になることがあった。
「良いぜ。この怪盗イタッチが予告してやる。この黄金の甲羅は俺が盗み出してやる!」
俺はそう言ってシワシワになった老人の手を握る。
「……男に手を握られても、何も嬉しくないわい…………だが」
老人はもう片方の手で握っている俺の手を包んだ。
そして瞑ったような細い目で、俺の目をじっと見る。
「……頼んだぞ」
「ああ、任せておきな」
俺はテーブルに予告状を置くと、老人のいる部屋を出た。
大きな屋敷。使用人が何人もいて、何度か衝突したからこそ、その使用人達の顔は覚えている。
過去には変装した使用人もいる。そんな屋敷を出た俺は、携帯を取り出すと、早速ある人物に電話をかけた。
「久しぶりだな。情報屋……」
「怪盗、お前から俺に電話してくるとはな、それで依頼内容はなんだ?」
「ある人物について調べてもらいたい。…………今回の件はそいつが鍵になりそうだ」
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