第5話

「ポテトってさ、もう一本だけもう一本だけって思いながら摘まんでたらいつの間にか無くなってるよね」

「そうだな。しかし逆に言えば、摘ままなきゃ無くならないってことだ。そこでどうだろう。僕たちがこの手を止めてポテトたちに天寿を全うさせてやるというのは」

「ついに狂ったの?」

 北灯は怪訝な表情を浮かべるが、ポテトに伸びる手はまったく止まらない。くそ、説得の効く相手じゃなかったか。

「でもね豊城くん、ポテトは死んだわけじゃないよ」

「このポテトは北灯の中で永遠となるもんな」

「え、なんで私の言いたいことわかったの。もしかしてテレパシー?」

「そんな粗末な能力じゃない」

「なにこのラスボス感」

 ちゃんと会話しながらも彼女の手はやはり止まらない。頭と手にそれぞれ別の意思があるんじゃないかとすら思える。

 それなら別の策を考えなければ。

「そういえば知ってる? ポテトって元々糖質の多いじゃがいもを脂質の代名詞である油で揚げてるからカロリーがものすごいらしいんだ」

「お、喧嘩か?」

 ナイフのような鋭い殺気を感じて僕は即座に口を閉じた。

 女子高生の天敵であるカロリーを引き合いに出せば多少なりとも効果が出るかと思ったが、その前に僕がデッドエンドを迎えてしまいそうだ。それは絶対に避けたい。

 しかし彼女の手はやはり止まらない。

 むしろ「私は健康のためにポテトを食べてるんじゃない。幸せのために食べてんのよ!」と手が伸びるスピードが上がってしまった。逆効果だったか。

「……ふう。あ、そういえば話があるんだけど」

 そして彼女はいつもより少し早くポテトを食べ終えて、いつものように告白する。

 しかしどうしてこの殺気に満ちた空気の中で告白できるんだ。

 彼女の精神力に脱帽しつつ、僕はまたタイムリープを行使した。 

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