第63話 それは嘘か真実か
「――いまのはちょっと焦ったなぁ」
「え? 嘘まだ、無傷――」
「スピィ!?」
エクレアが驚愕の声を上げた。スイムも驚いている。それは僕も一緒だった。
でも、どうして?
「どういうことよ。私たちは貴方の障壁が嘘だともう知っている! 効果なんて無いはず!」
「はは。せやな。確かにわいの障壁には少しだけ嘘があった。実際は魔導具に頼ってたんや。しかも耐久制限があるからスライムの攻撃にも少々焦って避けた。それが正解や」
耐久制限があっただって? それがライアーの言う真実――
「そんな都合のいいことあるわけないじゃない!」
フィアが叫ぶ。確かに都合がいいと言えばその通りだ。ライアーも魔導具揃え過ぎと思わなくないし。
「何故そう思う? わいの力が嘘を本当にする力だからでっか? せやけど今確かに攻撃は防いでみせた。それやのに嘘やいい切れるんでっか?」
「う――」
フィアがたじろぐ。そうなんだ少なくとも今の僕の一撃は確かにライアーが防いだ。そのせいで、いやそもそもそれが駄目なんだ!
「駄目だみんな! こいつの言うことに耳を傾けちゃ!」
「そんなのもう遅いやろ――」
くっ、確かに聞いてしまえばどうしても疑心暗鬼に陥る。ライアーの言ってることが必ずしも嘘だとは思えない。
「けどな。もうわいも余裕がない。せやからこれで終わらせるで」
そしてライアーが袋から奇妙な箱を取り出した。
「これはわいの秘密の魔導具や。強力な破壊魔法が込められていてさっきの魔石なんぞ比べ物にならん威力や。お前らも含めてこのあたり一帯を全て消滅させる。本当はそこまでするつもりなかったんやけどなぁ。もう仕方ないで」
「それこそ嘘よ信じるわけないじゃない!」
「これが嘘? 馬鹿いいなさんな。これは当然わいにもリスクがある。これ、つこうたらわいの防御も完全に消え去るんやで。もっともそれでもわいは生き残れるがな。後先考えない無様な手やけど仕方ない」
「だ、だからそんなの――」
「本当にこれが嘘だとあんたらいい切れまっか?」
「「――」」
「くっ、駄目だこのままじゃ!」
エクレアもフィアも黙ってしまった。嘘だと確信出来ない表情だ。これなら例え本当だったとしてもそして嘘だったっとしても当たり一面瓦礫の山になってしまう。僕たちだって無事では済まない。
何か、何かあるはずなんだ。切り抜ける手が。
「こうなったら私の魔法で!」
「はっは。別にえぇで。そんなことしたらこの魔導具に誘爆するだけやけどな。結果は同じや」
杖を向けたフィアだったけどライアーの話を聞いて引っ込めてしまった。これじゃあ下手に魔法をあてるわけにもいかない。
「私の武芸だって下手に使えないじゃない」
エクレアの属性は雷。それだってもし衝撃を与えたら――あ!
「エクレア――僕達はいいパートナーだったよね」
「え?」
「はは。何や諦めたんかい。ま、それが賢明やなどうせなら好きな女と一緒に死んでやったらえぇやろ」
僕の発言にエクレアの短い声、そしてライアーの煽るような声が重なる。
「ちょ、好きなって何よ!」
「水魔法・水飛沫!」
何かフィアが叫んでいたけど、ここは急がないといけない。僕の魔法で狙いを定めライアーにだけ水を掛け地面を濡らした。
「ブッ! な、何やこないな悪あがきしてからに!」
「ねぇ知ってる? 水って雷を通すんだよ?」
「は? 何いうとるんや。そんな馬鹿な話あるわけないやろ」
「はぁああぁあああぁああ!」
僕のセリフでエクレアは察してくれたようだ。雷を纏わせた鉄槌を片手にライアーに向けて駆け出す。
「何やわかっとるんかい! 下手に衝撃を加えたら誘爆するで!」
「わかってるわよ! だからこそここを! 狙う!」
「は?」
ライアーがキョトンとした顔を見せる。エクレアが狙ったのはライアーとは関係のない地面だったからだ。
「アホかそんなもん何の意味、が、グギイイイイイイアァアアァアアアアァアアアアアアァアアアアアァアアアァアアアァアァアアアァアアアアアギイイイァアアアァアアッ!」
不可解な顔を一瞬見せたライアーだったけど刹那その表情が一変した。雷に撃たれたような絶叫を上げ――煙を上げながらそのまま倒れていった。
「残念だったね。雷は水を伝って相手を感電させる。その知識がお前にはなかった――だから防ぐことが出来なかった」
そう。もしあいつのいう攻撃を防ぐ障壁というのが、嘘を本物に変えた力だったとしても自分の知らない攻撃まで防ぐ事はできない。そして例えそれが本当だったとしても魔導具で防ぐことは不可能だ。だってそんなこと知ってるのは僕とエクレアだけ。つまり感電を防ぐ術式なんて作れない――そう、つまり僕たちの作戦勝ちだ!
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