第50話 ギルドに動いてもらう
アクシス家は有力貴族の一つだ。自分で育った家でもあるから、これは幼い頃から両親からも言われ続けた。
それだけ様々な場面で顔が利くのも家の強みだろうね。冒険者ギルドとは言えアクシス家に刃を向けるのは容易でない……我が家ながらとんでもないよ。
「ま、先ずは調査だな。とにかくこっから先はこっちに任せておけ。ネロ、お前は狙われてる当事者なわけだしな。今後は身の回りには気をつけることだな」
「ネロのことは任せてよパパ!」
サンダースに注意を促されるとエクレアが胸を叩いて頼りがいのあるセリフを口にした。守られる方として見られるとは、何だか男としてはちょっと情けなくも感じる。
「――エクレア。ネロとは今後もパーティーを続けるつもりなのか?」
「当然よ。パパだってこんなことでやめるなんて言ったら逆に怒るでしょ?」
エクレアからの不意打ちにサンダースが苦笑いを見せた。
「たく。そういうところは女房そっくりだな。あいつも負けん気が強かったしこうと決めたら一歩も譲らなかったからな」
「ついで頑固なパパの血も引いてるしね」
えっへんと胸を張るエクレア。サンダースがやれやれと頭を擦った。
「ま、娘の言うことにも一理ある。そもそも冒険者なんてもんは危険がつきものだからな。だけどなネロ――わかってるな?」
「は、はい」
「スピィ?」
サンダースの眼力が凄い。エクレアに手を出したら許さんぞと言った殺気さえも感じるよ。
もっともエクレアが僕なんて相手するわけないし、手なんて出したらその時点でエクレアに殺されそうだしね……。
「ネロってば何か失礼なこと考えてない?」
「そ、そんなことないよ」
「本当かなぁ~? スイムはどう思う?」
「スピィ~♪」
エクレアがスイムを抱えて撫でながら聞いていた。スイムもエクレアに構われるのが嬉しいみたいだね。
「ま、こっちの話は以上だ。後はダンジョンの事があるだろう? 受付に戻れば対処してくれるだろうさ」
「はい。それでは失礼します」
「あ、パパ。今日はネロとご飯食べてくるから夕食はママと二人っきりで仲良くね」
「う、うるせぇ。てか二人っきりでかよ!」
「スイムも一緒だも~ん」
「スピィ~♪」
何かサンダースの荒ぶる声が……そもそも夕食の話って……。
「えっとそんな話してたっけ?」
「えぇ~? 折角パーティーを組んで初めてのダンジョン攻略したのに祝勝会もしないつもり? スイムも一緒にご飯食べたいよねぇ?」
「スピッ♪」
「ほら。スイムもこう言ってるよ? ネロこないなら私とスイムだけで祝勝会しちゃうよ?」
「スピ~?」
スイムが一緒にいかないの~? という空気を滲ませてこっちを見ていた。うぅ、何だかズルいけど一緒に食事出来るのは寧ろ嬉しい……。
「じゃあ、報告が終わったら行こうか」
「やった♪」
「スピィ♪」
エクレアが笑顔になりスイムもプルプルと震えてご機嫌な様子だ。
そして僕たちは一階に戻ってフルールと話した。
「ダンジョンで幾つか戦利品があって、スキルジュエルっぽい宝石も見つけたんです」
「そうなの? なら素材と纏めて鑑定に掛けるわね」
そして僕たちはスイムから取り出した素材やスキルジュエルを渡した。更に今回のダンジョンは僕たちが初攻略だけあって特別報酬として10万マリン出ることになった。
ちなみにダンジョンを攻略するとギルドカードに記録される仕組みになってる。なんでもダンジョンに満ちている魔力の反応で攻略状況が記録される仕組みらしいんだよね。
「やったねネロ。これだけあればちょっとぐらい贅沢しても大丈夫だよ」
エクレアは夕食の事を言ってるんだろうね。確かに食事代としては十分だと思う。
「フフッ、二人共随分と仲良くなれたようね。じゃあ素材とスキルジュエルの鑑定は――そうね今日はもうこの時間だから明日の朝になると思うけどいい?」
確かにもう夕方だしね。ギルドとしても一番混雑する時間だからこれからすぐに鑑定は難しい。
「はい。宜しくお願いします」
「何のスキルが付与されてるか楽しみだね」
「スピィ~♪」
僕が承諾するとエクレアがスイムに向けてそんな事を言っていた。確かにこういうのは何が出るか待ってる間も楽しかったりもするもんね。
「それと、ダンジョンでの事もあるからね。町中では流石に大丈夫だとは思うけど、くれぐれも気をつけてあまり遅くならないうちに切り上げることも考えてね」
「はい。わかりました。心配してくれてありがとう」
「ちょっと過保護な気もするけどね」
「何言ってるの。特にエクレアはマスターの娘なのだからね。そういう目で見られるのは嫌かもしれないけど、どうしようもないことだってあるんだから」
「は~い」
フルールから心配もされてしまったよ。でも、確かにそうだね。エクレアは僕を守ってくれると言っていたけど男として僕の方こそしっかり守ってあげないと――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます