第39話 VSハイルトン
ハイルトンが投げた武器。チャクラムというらしいけど、それが高速回転しながら迫ってくる。
それが全部で四本。それぞれが別の軌道で曲線を描きながら迫ってくる。
「水魔法・水守ノ盾!」
水の盾で防御に回す。勿論僕だけじゃなくてエクレアにも盾を用意した。
ハイルトンの投げたチャクラムが盾に当たり跳ね返すことが出来た。
「凄い、水ってこんなことも出来るのね」
「キュピ~!」
エクレアが目を白黒させた。スイムはどこか誇らしげでもある。
「――これが水魔法だと? 信じがたいがやはり貴様を生かしておくわけにはいかんな!」
ハイルトンの目つきが変わる。しかも跳ね返したチャクラムが再び戻ってきた。
「くっ!」
「一度防いだぐらいでこの私の技を破れると思ったら大間違いだ」
チャクラムは何度も何度も僕たちに襲いかかる。エクレアとスイムにもだ。しかも軌道を微調整しながら、どうやらハイルトンの技は投げたチャクラムの動きを操作できるようだ。
「くっ!」
「ネロ!」
「スピィ!」
脇腹をチャクラムが引き裂いていった。僕の方の防御が疎かになりそこを狙われた形だ。
「貴様の魔法には驚かされたが、仲間に集中するあまり自分の守りが薄くなっては仕方ないな」
「そ、そんな私達のために――」
エクレアの顔が青ざめる。かと思えば、キッ、とハイルトンを睨みつけた。
「私は守られているばかりじゃないわ!」
エクレアが飛び出してハイルトンに近づいた。
「武芸・雷装槌!」
エクレアが鉄槌に雷を纏わせハイルトンに振り下ろす。
「なるほど。雷と槌の複合属性というわけか」
「え? は、速い!」
エクレアの一撃をハイルトンがヒラリと躱した。本当に速く、しかもハイルトンはそのまま壁に飛びつきそのまま静止した。
壁に足が貼り付いているんだ。これは一体?
ハイルトンは自分の紋章は投擲の紋章だと言っていた。武芸と扱ってる武器から見てもそれは間違いはないだろう。
それなのにこの動きって――ハイルトンはそのまま壁を走り死んだ盗賊たちの側まで移動した。その動きに合わせるようにチャクラムも奴の手元に戻る。
「どうやら私の方に分があるようだな」
「どうかな?」
僕はポーチから生命の水を取り出し飲んだ。この状況だと悠長にかけてる余裕はない。薬は呑んでも効果はある。即効性は落ちるけど回復効果は患部だけじゃなくて全身に回る。
「ふん。回復薬か。だがそれもいずれ尽きる」
ハイルトンの言うとおりだ。僕の手持ちは四本。生命の水は普通の回復薬よりも効果は高いけど本数に制限がある以上、早々頼れない。
「お前たちにさらなる絶望を与えよう」
ハイルトンがニヤリと笑みを浮かべると、手持ちのチャクラムが炎に包まれた。
あれも武芸なのか? だけど何か忌避感がある。
ハイルトンはくるりと回転しながら四つのチャクラムを投げつけてきた。チャクラムから炎が尾のように生えているように感じる。
あいつはこのチャクラムを自由に操作できる。水の盾でも防ぎきるのは難しい――
「こんなの私が叩き壊してあげる!」
エクレアが勇ましい声を上げ鉄槌を振り下ろした。だけどチャクラムの動きは速い。鉄槌から逃れ軌道を変えエクレアの首に迫った。
「これでまず一人」
「スピィ!」
「させないよ! 水魔法・水ノ鞭!」
水で作成した鞭を複数伸ばした。鞭で絡めチャクラムの動きを封じ込む。
「何だと?」
ハイルトンが目を白黒させた。水の鞭が絡みついたことでチャクラムの炎も消えたからだろう。僕の水なら炎だって抑え込む。
「エクレア無事!?」
「あ、ありがとう助かった。うん、ちょっと火傷したぐらいだから」
火傷――鉄槌を避けたチャクラムでか。
「スピィ~」
「わぁ。ありがとうスイム。ひんやりして気持ちいいよ」
スイムはエクレアを心配して火傷した箇所に体を擦り付けた。スイムの体は冷たい。火傷を抑える効果があるのかもしれない。
だけど――
「……何だその目は?」
「僕の大切な仲間を傷つけた。絶対許さない」
「……欠陥品の分際でこの私に対してその口の聞き方、許しがたいですな――」
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