第25話 新たな仲間

「全くとんでもねぇよお前は。まぁとにかくそれならますますDランクで問題ねぇよ。既にフルールにも伝えてるからギルドカードの内容は書き換えておいて貰え」

「わかりましたありがとうございます」

「別にお前の実力を評価しただけだ。それよりさっきの話忘れるなよ」

「わかりました」


 こうして僕とサンダースとの話は終わった。するとキュッと僕の手を握る柔らかい感触――


「パパの話が終わったなら今度は私とだね」

「え、えっと」

「おい、ちょっとスキンシップがすぎねぇか!」


 ニコッとエクレアが微笑みかけてくれた。顔から火が出そうな程に熱くなってるよ~。しかもサンダースに凄く睨まれてるし。


「おいネロ。言っておくが娘におかしな真似したら――」

「し、しませんしません!」

 

 凄みを利かせて釘を刺されてしまった……いや絶対そんなことないと思うけどね。そもそもこんな可愛い子が僕なんて相手するわけないし。


「ごめんね。パパってば普段は強面で通してるのに、私に対してだけあんななのよ。最初冒険者になるのも反対されてたぐらいなんだから」

「ははは――」


 気持ちはわからなくもないけどね。エクレアは可愛いし、親なら危険な目にあって欲しくないと思うものなのかも。


「それで考えてくれた? デートの事?」

「いや、ダンジョン探索だよね?」

「うんうん。ダンジョンはやっぱり冒険者の憧れさもんね」

「スピィ~?」


 エクレアが目を輝かせて言った。スイムが、そうなの~? といった感じで頭を動かして鳴いた。


「でもどうして僕を?」


 ちょっと気になったので聞いてみた。水の紋章を持ってる僕はすぐに水属性だってわかってしまう。だからこれまでも相手してくれる人は殆どいなかった。


「それは貴方が私の理想そのものだからよ!」

「え、えぇええぇええ!?」

「スピィィィィイ!」


 僕が驚くとスイムも一緒になって驚いてくれた。それにしても、いきなりすぎだよぉ。


「そんな理想だなんて――」

「そう。ネロこそが私の理想の魔法の使い手だったのよ! だから一緒にダンジョンに行こう? ね?」

「え?」


 エクレアが僕をじっと見て改めて誘ってきた。あぁ、なんだそういうことなんだね。


 うん、そりゃそうだよね。僕自身が理想的なわけないし。あれ? でも魔法って……。


「えっと、僕が扱うのは水魔法なんだけど」

「勿論知ってるわよ。だからこそ理想なの!」


 そ、そうなんだ。これには驚いたよ。まさか水が理想と言ってくれる人に出会えるなんて。


 でも、そんなこと言ってくれる子にこれから先出会えるかわからない。ガイだってパーティーは組んでくれたけど水属性そのものには期待されてなかったし。


「ね、お願い。一緒に」

「うん! 一緒に行こう! 僕も誘ってもらえて光栄だよ」


 決心してエクレアの申し出を受けた。彼女も目をパチクリさせていたけど。


「や、やった! 嬉しいよネロ! 一緒に頑張ろうね!」


 すぐに両手を握って喜んでくれた。何か凄く照れくさいけど、僕にも改めて仲間が出来た、そんな気がしたんだ。


「ところでダンジョン探索だけど場所は決まってるの?」

「うん。ここから北東にある山にね出来て間もないダンジョンがあるの。まだ最初のボスも倒されてないらしいんだよね」


 最初のボス――ダンジョンには階層がある。基本は地下に向かうタイプが多いけど中には塔のようなタイプもあるらしい。


 どちらにしてもダンジョンは基本その時の最下層か最上層にボスが出る。その時のというのはダンジョンはボスを倒すと何度か階層が増える傾向があるからだ。


 つまりダンジョンは最初の攻略だけでは終わらない。階層が増えた後はまた最深部に別なボスが現れる上により強力な敵も増えていく。これをダンジョンが成長するというんだ。


 勿論その分見つかる宝もより良いものになっていくんだけどね。


 ただ、ダンジョンも無限に階層が増えるわけじゃなくて成長限界がある。成長限界に達した状態でボスを倒したらダンジョンは崩壊する。


 ダンジョンは成長すればするほど攻略が難しくなるから見つかって間もないダンジョンは僕たちみたいなDランク冒険者にとっては狙い目だ。


「じゃあ探索許可をもらっておかないとね」


 ダンジョンは誰でも自由に入れるわけじゃない。基本的には冒険者専用で攻略難度によってもある程度制限される。


 だからダンジョン攻略にはギルドの許可が必要だ。


「うん。じゃあ受付に行こう。パーティー登録もしないとだし」

「え! パーティー……組んでくれるの?」


 エクレアからのパーティー発言に少し動揺してしまった。僕からお願いしたり探してもらったりすることはあっても相手から積極的にパーティーを組もうと言われたことないから――


「一緒にダンジョン攻略に行くんだし当然よ。それに私にとって理想のパートナーなんだよ? だからこれからも一緒に組んでくれると嬉しいのだけど駄目?」


 顔を覗き込んできて聞いてきた。その仕草はずるい――こんなのいいよと言うしかないじゃないか。


「も、勿論組んでくれるなら僕も助かるよ!」

「やった♪ スイムともこれで仲間だね」

「スピィ~♪」


 エクレアがヒョイッとスイムを持ち上げてから抱っこした。スイムが嬉しそう。あとちょっとだけ羨ましい――て、何を考えてるんだ僕!


 とにかくエクレアとパーティーを組むことも決まったしフルールに申請を出しておこうかな――

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