第217話

「確か…………ルルカでしたか。

 私が何を理解してないと申すのですか?」


 レイシス姫が不機嫌な感じを出しつつ聞いてくる。

 アルタナの王族として、奴隷から意見を言われるなどこれまでなかったのかもしれない。

 対してルルカは他国の王族相手というのにひるむ様子はない。


「主が申しました『仲良く』の本当の意味は、私共とねやを共にし皆で主にご奉仕することです」


「ちょっ!!」

「ななななっ??」


 なんてことを言い出すんだ!!

 いや、まぁ当然それ込みでの『仲良く』なのだが、モノには順番というものがあるだろうに。

 

「そ、そなた達は普段からそのようなことを…………

 は、は、破廉恥なっ!!」


 レイシス姫がこれだけ動揺してるってことは、高貴な女性はマグロが基本なのだろうか。

 しかし異世界に来てから出会った中で一番エロい女性は、貴族の奥方であるティリアさんなんだがなぁ。

 王都の商業ギルドのエメリナさんもエロかったけど、初モノオンリーだったのがな……

 騎士爵の暮らしぶりは庶民と大差ないらしいが、こういった性に対する考え方でも上位貴族とはかなりの隔たりがありそうだ。


「ツムリーソ!!」


「は、はい!」


「そなたは自分の妻となる女性にそのような……は、破廉恥な行為を望むのですか?!」


 ここは変に取り繕わずにありのままを話すか。

 赤の他人に自分の性事情を話すのは気が引けるが…………

 しかしこの機会に話しておかないと次にいつこんな機会があるか。そして俺の好みではない女性が嫁候補になり強引に結婚を推し進められたら……、誰も幸せにならない。

 俺には2人がいるからまだいいとしても、アルタナ貴族の女性にとっては冒険者風情に嫁ぐだけでも思うところはあるだろうに、夫から愛されもしないでは不憫すぎる。

 よし!


「望みます。ええ、もちろん望みますとも!

 ルルカが申し上げた通り、奴隷達と寝所を共にして自分に奉仕してくれる女性を望みます」


 なんか……、最低なことを言ってないか? 俺……大丈夫かなぁ。


「…………」


 レイシス姫も言葉が出ないみたい……ってドン引きされてないか? コレ。


 まぁこのことが原因で縁談がダメになったとしてもそれはそれで仕方ないだろう。

 元々俺には結婚願望なんてなかった訳だし。

 レイシス姫から強引に持ち掛けられている縁談なのだから、当然ながらキッパリと断るという選択肢もある。


 ただ……、国益を最優先させているとはいえ、レイシス姫が俺のことを高く評価しているのは確かだ。

 敬愛しているイリス姫様の手前もあるだろうが、俺の意志や嗜好を尊重する姿勢を見せてくれている。

 まだレイシス姫個人の発案に留まっていることも大きいのだろうけど。

 これが国が主体となっての縁組ともなれば俺の意向など全く考慮されなくなるだろう。

 そうなるともうこの国から逃げ出すしかなくなる。そして逃げ出した先でも同じことが繰り返される可能性が高いのであれば、いっそ俺の好みと近い女性を選んでもらって結婚してしまうのも一つの手だ。



 レイシス姫はショックを受けたのか言葉少なに帰って行った。


「ルルカ、よく言ってくれた」


「差し出がましいとは思いましたが……」


「ああいうことは中々言い出せないから助かったよ」


「あのお方とはどういった経緯で?」


「前々回にイリス殿下と謁見した際に…………」


 簡単にレイシス姫との経緯を2人に説明する。


「最初は俺をアルタナ王家と繋がる貴族へ婿入りさせようとしてたのだがな。

 方針を転換したみたいだ」


「もしあのお姫様が条件に合う女性を見つけて婚姻を迫ってきたらいかがなさいますか?」


「2人にも関係あることだから3人で慎重に判断しよう。

 独断専行はしないから安心してくれ」


「かしこまりました」


「ロザリナもいいな?」


「……はい」


 2人と仲良くできて俺好みの女性なら断る理由なんてないけどな!




……


…………



「昼のロイター子爵との面談で、王都にある魔術研究所に入るのに必要な伯爵の紹介状をもらう為にアルタナ王国で開催される武闘大会に出場することとなった」


 夕食の準備をはさんで今度は武闘大会出場のことについて話す。


「ルルカは観戦するだろ?」


「そうですね……そうします」


「うん。

 ロザリナは出場するでいいな?」


「よろしいのでしょうか?」


「以前も出たいと言っていただろ? 何も問題ないぞ」


「わかりました。出場させて頂きます」


「ツトムさん、その伯爵様の紹介状は武闘大会に出場するだけで頂けるのですか?」


「いや、出るだけではダメで、本選に進むか予選で負けた場合は相応の相手に負けることが条件だな」


「予選の組み合わせが重要になりそうですね」


「アルタナ王国開催ということで獣人の出場者が多くなるのも気掛かりだ。

 奴らの身体能力は半端ないからな」


 ランテスクラスがゴロゴロいるようなら勝ち抜くのは相当厳しいだろう。


「ギルドで聞いたところ出場の受付は7日後までらしい。そして俺は5日後に城に呼ばれている(姫様のご褒美)から、6日後にアルタナ王国へ出発することにする」


 予定が詰まってきた感じだな。もっとも現代生活と比較すればなんてことはないけど。

 明日はレイシス姫をアルタナに送って、明後日は……、明後日こそは帝都で3人目の奴隷を!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る