第172話
近い! 近い!
見た目だとそれほどでもないのに意外とボリュームのある胸元が覗けて……先ほど謁見したイリス姫やレイシス姫のドレス姿の胸の谷間も素晴らしかったが、質素な服装から覗ける谷間もまた格別で…………
こほん!
「あの砦って水源はどうなっているのですか?」
「魔術士がローテーションを組んで砦内の貯水池や貯水槽に給水しています。
一応井戸も掘られているのですがどうも地下水が潤沢ではないようで普段は使わないようにしていますね」
ナナイさんは手を離して元の姿勢に戻ってしまった。当然谷間も見えなくなる訳で……残念ナリ!
それはともかくとして、井戸の水は戦闘時(籠城戦)用にとってある感じか。
砦が魔物に占拠されたことによって使えなくされてたりしてないだろうか? 毒とか入れられて……
まぁその辺の対応は上の連中(伯爵やロイター子爵)に任せるとしても、俺の問題は風呂作りだ。
女性用だけ作ると大多数である男性陣から不平不満を生じさせることになるので、当然両方作ることになる訳なんだが……
「風呂作りに関して問題が三つあります。
一つは砦内部に風呂を作れる場所があるのかという点です。
当然防衛する際の邪魔にならないように作らないといけませんので」
以前見た限りでは砦の北門と南門のところにそれなりのスペースがあるものの、その場所に風呂を作ってしまうと出撃する時なんか不便になるだろう。
「二つ目は自分が作るということは当然魔法で……ということになるのですが、土魔法による建造物がどの程度の耐用期間があるのかまだわかってないのです。一応1ヵ月近くは大丈夫なのですが……」
まぁ仮に1ヵ月で崩れるとしても月一ぐらいなら砦に風呂を作りに行ってもいいけどな。飛行魔法でなら自宅からすぐなんだし。
「三つ目は湯を沸かす際の魔力消費量ですね。依頼期間中であれば自分がやりますので問題ありませんが、自分が引き揚げた後は魔術士隊の方達の負担になるのではないかと……」
さすがに毎日砦に風呂を沸かしに行くのは無理だ。頼まれたらノータイムで断る自信がある!
「作る場所に関しては何とかなると思います。上の方達も兵に気を遣ってお風呂に入るのを我慢するつもりだったでしょうし…………あ、砦の司令官と幕僚に割り当てられる建物はお風呂付なんですよ。
お風呂を作る方針さえ決まってしまえば協力は得られ易くなるかと」
兵達が風呂に入れるようになれば自分達も気兼ねなく入れるという訳か。
「耐用期間は魔術士によってマチマチですので何とも言えません。
ただ土魔術士が魔法で補修することによって耐用期間が延びますので問題はありません」
土魔法で補修すると耐用期間を延ばすことが可能なのか。
西の森に作った拠点や空中展望台を使って試してみよう。
「最後の魔力消費量についてはそれほど心配はしておりません。
なぜならお風呂が稼働すればお湯で体を拭く必要がなくなりますのでその分の魔力や手間暇を活用できるからです」
どうなんだろう?
手間暇に関してはそうなんだろうが魔力の負担増はそれなりのものになりそうだが……
ずっと同じ湯を使う訳にはいかないのだし(=汚いから)兵士の勤務交代に合わせてその都度湯を入れ替えなければいけない。
風呂に入る=その日は戦闘がなかった、ということで魔力を多く使えるだろうという計算かな?
「風呂には普通の火でも沸かせる機構を組み入れる必要があるのでしょうね」
薪で風呂を沸かすという動画を(日本にいた時に)見た限りでは、煙突を付けたり空気の通り道を確保したりでかなり難しそうな印象だったな。
「その辺りの仕様は正式な許可を得てからにしましょう。
許可が出た後ならば専門家に意見を聞くこともできますし」
「専門家ですか?」
建築家を砦に呼ぶのだろうか?
結構大事な話になってきたなぁ。俺の目的はあくまでも2~3時間外出するだけなんだけど……
「はい。軍には野戦築城を専門とする部署がありまして、建築関係にも詳しいですから適切な見解が聞けますよ」
工兵の前身ということなんだろうな。
それにしても風呂のことでかなり話し込んでしまった。
本当は姫様に関することを聞きたかったのだけど(マイナさん(姫様の補佐官)や侍女さん達では姫様に近過ぎると思ってナナイさんに聞こうと思った)、さすがにこれ以上時間を取らせるのは出陣前日の時間の無い中で悪いだろうな。
「では詳細な打ち合わせは許可が下りた後ということで」
「今日中に申請して上を説得しますから!」
ナナイさんは鼻息荒く両手でガッツポーズをしている。
可愛い仕草ではあるが自分の年齢を考えた方が…………
「(ギロ!) ……何か?」
「い、いえ……その、頑張ってくださいね」
内城を出た俺は飛行魔法で西の森の拠点にやって来た。
さっきナナイさんに聞いた土魔法での補修というのを試す為だ。
比較する為に敢えて拠点の建物のほうは何もしないで、空中展望台で試す…………そうだ! ルルカを送った際に思い付いた展望台露天風呂化計画も実行しよう。
お昼はとっくに過ぎているので王都のパンを食べながらまずは土魔法による補修を行う。
展望台は改築?するので拠点を囲む外壁で試すことにした。
強化するイメージで魔力を注いでみるが…………ちゃんと補修できているかよくわからない。
とりあえず外壁全て同じようにして様子を見ることにする。失敗した時は中の建物と同時に崩れるのだからそうなったら誰かに正式に習えばいい。
次は展望台の改築だ。
どうせならと展望台から更に斜め上に階段を作ってその先に風呂を作るが…………ポキッと折れて落下してしまった。
遥か下の地上で凄い音がして森から鳥が一斉に羽ばたき獣だか魔物だかの鳴き声がうるさく響き渡る。
すぐに落下地点に飛んで行くが幸いにも人はいなかったようだ。
下部を支える土台を上からは見えないように如何に重厚に作るかがカギなのだ。
そして階段に手すりを加えてさっきのよりも安定度の増した空中露天風呂を完成させる。
空中風呂の部分は囲いや手すりを作ってないので階段と接続している箇所以外の淵に座るのは大変危険である。
ルルカとロザリナが展望台で服を脱いで裸で、もしくはタオル一枚で階段を昇っていく様子を想像するだけでニマニマしてしまうな!
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