第89話
せめて街の住人だけでも逃がすか?
森の中に村が点在しているということはそこに通じる道があるはずだ。
そこまで住人を護衛すれば……
いや、無理だろ。
この街に何人ぐらい住んでいるんだ? パッと見た感じ3万以上は住んでそうな街の大きさだぞ。
群衆の避難移動はかなり時間が掛かる。(某救助映画を見た印象から)
そんな長時間守れっこない。
それぐらいなら可能な限り魔物を倒してその後は守備隊に任せた方が断然いい。
となるとやはりカギになってくるのは魔力の回復がどうかという点になるか。
もうすぐ森を抜ける。
位置的には街の南東角に向かっている。
周囲の魔物を手早く片付けて土槍(回転)を2方向に発射するのだ。
スゥゥゥゥ、ハァァーーーー。
深く深呼吸をする。
よしっ!!
一気に走りながら森を抜け出して風刃で魔物の首を落としつつ、街の南と東両方に視界が効く場所を確保した。
「砲撃開始!!」
街の南東の地点から西と北に向けて土槍(回転)を発射していく。
南側の魔物の陣容はぶ厚いのでそちらを重点的に倒していった。
東側の魔物を8割方撃破したところで南側を走って街の南西の角に向かう。
この時俺は外套をまとった。名乗り出るかどうかの判断を後でしようと思いとりあえずの処置をしたのだ。
さらに飛ばずに走って移動したのは魔力消費を抑える為で、もちろん死体を収納しながらである。
街の南側はルミナス大要塞を突破した敵がやってくるのでまだ7割程度しか撃破できていない。
生き残りが襲ってくるのを風刃で対処しながら南西の地点に到着した。
今度は東と北に向けて発射していく。
後は街の北西に移動して北側の魔物を蹴散らせばとりあえず一時的な街の安全は確保できる。
…
……
…………
「はぁ…はぁ……」
その後北側の魔物を壊滅させ、北西→北東→南東と走って魔物を回収して森に入り、土魔法で小さな小屋を作って休むことにした。
まずはステータスの確認だ。
大量に魔物を倒したのでいくつかレベルが上がっているのだ。
川端努 男性
人種 15歳
LV32
HP 444/444
MP 1018/4354
力 99
早さ 122
器用 129
魔力 441
LP 40P
スキル
異世界言語・魔法の才能・収納魔法Lv7・浄化魔法Lv7・火魔法Lv4・水魔法Lv1・風魔法Lv8・土魔法Lv8・氷結魔法Lv4・回復魔法Lv6・魔力操作Lv6・MP回復強化Lv7・MP消費軽減Lv7・マジックシールドLvMAX・身体強化Lv4・剣術Lv2・槍術Lv2・投擲Lv1・敵感知Lv7・地図(強化型)・時刻・滞空魔法・飛行魔法
レベルが5つも上がっていた。
それにしても、ステータス表示の項目がLV1だった時の20倍とかそれ以上なんだが……
この世界に転移して来たての頃より身体能力が上がってるのは確かだが、さすがに20倍の力とか早さはない。界〇拳じゃあるまいし。
器用さは具体的に試す方法がないが魔力なんて初期の40倍だ。
ノーマルな土槍を比較しても威力やスピード・射出速度はせいぜい3~4倍といったところだ。
そういえばダメージを受ける度に減るHPも初期の40倍だな。
まともなのはMPだけか?
この数値だけは魔法をあとどれぐらい使えるかで有効に機能している。
後は名乗り出るかどうかという問題なのだが……
転移してきた当初はステータスやスキルの存在を他人が認識してるかわからなかったので、自分だけの固有能力だったら研究対象として拘束されるから隠していくことにしたんだよな。
こちらの世界に来て一月半、結論を出すならステータスやスキルは存在する。だがこの世界の人はステータス表示がされないので認識できず、LP(レベルポイント)を使用してのスキルアップもできない。
これに関してはバレると拘束される状況なのは引き続き同じだ。
まぁ自分で喋らない限りバレることはないので言動や酒に酔ってみたいなのを注意すれば大丈夫だろう。
少し話がズレたが能力を隠すのはそのままとして、武勲や功績を喧伝するのかって点だよな。これまでは特に何とも思わなかったのだが、有名になることのデメリットを最近感じ始めたのだ。
城内ギルドの試験の時の審判や内城の待合室の商人のように得体の知れない連中に目を付けられたせいである。
これでさらに名を上げてしまうと例え他国であっても……いや、他国であるが故に尚更妙な連中に標的にされかねない。
そのことで一番の心配はルルカとロザリナが襲われないかってことだ。俺自身のせいで2人が傷付いたら俺は自分のことを許せないだろう。
いっそもう1人か2人護衛を増やすか?
強さで言えば男性の戦闘奴隷がいいのだが、普段どうするかなんだよなぁ。
護衛である以上は一緒にいないと意味ないし、かと言ってイチャイチャしている同じ屋根の下に男性がいるというのも興醒めだ。
こう戦闘時だけ召喚されるシステムはないものか……
そう考えるとやはり女性の戦闘奴隷ということになる。
護衛されるルルカにとっても同じ女性のほうが何かと安心だろう。
後でこっそりレグの街に入って奴隷商を見てこよう。
また話がズレたが、今度は逆に有名になることのメリットはというと……これが特にないんだよな。
何か揉め事が起きて『そいつあのツトムだぞ。やべぇ逃げろ!』みたいな展開が一切ない。
『あれツトム様よ! 抱いてぇ~』みたいな事も1度もない。
今回のレグの街の防衛に関しても守っていたレイシス姫には感謝されるだろう。もしかしたらレイシス姫がイリス姫に俺の活躍を好意的に伝えてくれるかもしれない。
でもたかがその程度のことで先に挙げたデメリットを受け入れることはできない。
一旦名前が知れ渡ったら後戻りはできないのだ。
そりゃあイリス姫のご褒美(←あるかどうかすら定かではないが)を諦めるのは断腸の思いではある。
でも俺にだって超えてはならない一線があるということはよくわかっている。
ここは当初の目的通り姫様の笑顔を守れることで良しとしよう。
一休みできたので小屋を消して街の様子を見てみる。
今俺がいる場所は最初の地点、街の南東の森の中だ。
見る限り街の東側は住民が出て来て魔物の死体を街の中に運び込んでいる。
南側では軍隊が出て来てレグの街を南下したところにある大要塞へと続く道に防御陣を築いているみたいだ。
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