第68話
『ですので3人目までの近接攻撃系同士の対戦に勝って初めて挑戦者側に勝機が生まれるのではないでしょうか?』
『挑戦者側には厳しい条件か!! 一方対戦相手のヤコールのパーティーはいかがでしょう?』
『主力である魔術士2人を4番手5番手に配置してリーダーのヤコールが3番手を務める5回戦勝負の時と同じ布陣で来ました。それと魔術士2人は新しい魔法を覚えて実力が上がったとの噂もあります。万全の体勢で隙がありませんね』
『皆さんお待たせしました。これより5等級昇格試験を始めます!!』
わー!! わー!!
『試合方式は勝ち抜き戦! ルールは相手を気絶させるか、立ち上がれないか、降参するか、審判が判断するかで勝敗が決まります』
『殺傷能力の高い攻撃は禁止。倒れた相手への追撃も禁止です。ただし、倒れた相手の首筋に武器を添えることで勝利することは可能です。武器はそちらに用意してある木製の物を使用してください』
『では1人目の方は中央へ!』
「頑張れよー」「やっちまえー」
「小遣い全額賭けてんだ! 負けたら承知しねぇぞ!!」
1人目は互いに剣と盾のオーソドックスなスタイルの戦士だ。もちろん剣は端に置いてある木製の物だ。
審判はギルドの職員だ。
動きに隙が無くかなりの強者なのかもしれない。
もしかしたら謎の実況アナもギルド職員なのだろうか?
「はじめ!」
声と同時に相手が仕掛けてきた。
数合打ち合い横腹に一撃が入り負けてしまった。
「それまで!」
「すまない……」
「ドンマイですよ」
回復魔法を掛けてあげる。
「ドンマ??」
『解説のラックさん、今の勝負いかがでしたか?』
『さすがホッジスですね。危なげない戦いでした。若い人はホッジスの盾捌きを参考にすると良いと思います。基本に忠実で且つ剣術との連動も勉強になりますよ』
こちらの1人目には触れもしない。
いや、触れないことが情けなのかもな。
『ザルクパーティーの2人目の方は中央へ!』
2人目はワトスさんだ。
木製の斧を2本持っている。
「はじめ!」
今度は睨み合いからのスタートだ。
『両者中央で対峙したままだ! ラックさん、ワトスは両手に斧を持っていますが……』
『斧のような重量を生かす武器は模擬戦のルールである木製武器の使用によってその特性を殺されてしまいます。それを補う手段としての2本斧なのでしょう』
ワトスさんが動いた!
2本の斧による激しい攻撃だ。
ホッジスは盾を巧みに操作し堅実に防いでいく。
盾だけじゃない。体の使い方が上手いのだ。
体の動きに盾をスムーズに連動させている。
そして盾は鉄製、斧は木製、必然的に斧は破損していき……
ホッジスは斧が砕けたワトスさんの首筋にそっと剣を添えた。
「勝負あり!!」
「すまん」
「いえ、良い戦いでした」
『ホッジス2人抜き!! 5等級トップクラスの実力を遺憾なく発揮しております!! ラックさんいかがでしたか?』
『長期戦を不利と見たワトスが攻勢に出た判断は決して間違いではなかったと思います。ただ、ホッジスの防御の壁がぶ厚く、そして高かった。その防御技術はもはや4等級クラスでしょう』
この試合ルールだと盾持ちは相当有利だなぁ。
盾も木製なら条件は5分なんだが……
本来試合は昇格を審査する場で勝敗は度外視するということなんだろう。
『ザルクパーティーの3人目の方!!』
「おう!!」
『リーダーザルク、意地を見せるか!!』
「はじめ!」
開始と同時にザルクさんから仕掛けた!
ザルクさんも盾持ちで互角な戦いを演じている。
円を描くように細かく移動しながら戦うザルクさんと、どっしり構えて重厚に防御するホッジスの戦い方は対照的だ。
さしずめアウトボクサーVSインファイターの構図だ。
足を使ったザルクさんが優位に試合を進めていく。
しかし……
10分を経過した辺りからザルクさんの動きが落ち始め、ホッジスのシールドバッシュを喰らってしまった。
なんとか立て直そうとするものの、足を奪われたザルクさんに抗する術はなく……
最後は倒れたところに鼻先に剣を突き付けられてしまった。
「それまで! 勝者ホッジス!!」
首筋に武器を添えなくても突き付けるだけでいいのか。
『激戦を制したホッジスが3人抜き!! このまま1人で勝ち切ってしまうのか? 解説のラックさん、なかなか見応えのある試合でしたが?』
『ええ。両者の攻防が高いレベルで行われた素晴らしい試合でした。最後は地力の差が出てしまいましたがホッジス相手にあれだけ戦えれば十分評価できるでしょう』
手数と有効打はザルクさんが圧倒していた。
5回戦(5R制)なら判定勝ちだったろうに。
「ツトム……」
「良い試合でしたよ、凄い勝負でした」
「頼む! なんとかあいつに勝ってくれ! 悔しくて今夜は寝れそうにない」
「ツトム勝って!!」
「お任せあれ」
さて、武器をどうするか……
上手く扱えるのは槍なんだが、リーチの長さを生かすことはできないだろうなぁ。
となると剣か……
盾は収納に入れてある木製の物しかないし使ったことあったっけ? というぐらい経験がない。
二刀流もやったことないからいつも通り剣1本でいくか。
『ザルクパーティーの4人目は中央へ!』
『さあラックさん注目の魔術士ツトムの登場です。ここまでの展開をどう見ますか?』
『5等級トップクラスの看板に偽りがないことを嫌と言うほど見せ付けているヤコールパーティーに対して、城内ギルドでは無名の魔術士ツトムがどんな戦いをするかが注目ですね』
「はじめ!」
とりあえず普通にいくか。
剣で攻撃していく。
ホッジスはもちろん敗れた3人より明らかに素人臭い剣術での攻撃だ。
『え?』『へ?』
??…ざわ?ざわ??……ざわざわ??……
「????」
ホッジスは驚いてるみたいで盾で防御するだけだ。
『ラックさん、ツトムは魔術士という話なのでは?』
『情報では確かに……魔術士だと……おかしいな??』
ざわざわ…ざわざわ……ざわざわ……
ふふん。
俺は最先端の近接攻撃型魔術士だ。
調べが足りなかったなぁ、斎藤は……こほん、ラック!!
初めてラックに(情報戦?で)勝って気分の良くなった俺はノリノリで攻めていく。
「ホッジス! 魔術士でないなら警戒する必要はない。早く終わらせろ!!」
ヤコールパーティーから指示が飛ぶとホッジスが攻めてきた!
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