第32戦記 不穏な空気
黒い凶星との死闘を乗り越えて心の休息を取るGトルーパーズ。
事件はすぐ側まで迫っている。
【最終自衛隊総司令部】
戦いから帰還したGトルーパーズ。前回より身体が慣れてきたのか、さほど疲れていない。
杏花「前ほどの疲れはないわね」
明日美「確かに」
萌「前はもう歩きたくなかったもんね」
悠理「それにしても、敵全員が戦う度に強くなるなんて驚きだね」
麻里奈「RPGゲームみたいでござるな」
杏花「その度に私たちの方が強くなってるから、心配ないわよ‼︎」
直虎「みんなー、お疲れ‼︎」
悠理「直虎さん‼︎」
直虎「悠理くん、男を上げたわね‼︎」
悠理「男を上げる?」
直虎「もう、照れなくていいのよ‼︎ 女の子っていうのは、そういういざという時頼りになるギャップのある男が好きなもんよ‼︎」
悠理「わわ…、ちょっと…‼︎」
直虎「そうそう麻里奈、あの子のメンテナンスが終わったわよ」
麻里奈「本当でござるか‼︎」
一人の女性研究員が麻里奈のペット・ギアである十兵衛を連れて現れた。
この女性研究員の名前は「レーチェル・ヴァイン=シュタイン」。クールで端正な顔つきのセミロングヘアーの女性でメガネをかけている。
「オリオン星人」の優秀な女性科学者で直虎や福山とは旧知の仲であり、バスターシリーズやジェネバスターの開発計画「I
直虎「紹介するわね。彼女は研究班の主任、レーチェル・ヴァイン=シュタイン。この子は麻里奈のペット・ギア、十兵衛よ」
※レーチェル・ヴァイン=シュタイン=以下、レーチェルと略。
レーチェル「よろしくね」
G・T「よろしくお願いします」
レーチェル「遅くなってごめんね、皇さん。時間はかかったけど、演算ユニットと簡易装備の取り付けが終わったわ。これで「サポート・ギア」として戦闘をバックアップ、短時間なら単独で簡易作戦行動も可能よ」
麻里奈「かたじけのうござる、レーチェル殿‼︎」
十兵衛「麻里奈、元気デアッタカ⁉︎」
麻里奈「十兵衛、これで一緒に出動できるのう‼︎」
萌「これが十兵衛⁉︎」
明日美「私も初めて見たわ」
杏花「5年くらい前、麻里奈が夏休みの工作で作って、学会からも注目されたのよね‼︎」
十兵衛「小生ノ名ヲ、存ジテオッタカ‼︎ 小生モ、オ主ラノ名ヲ、存ジテオルゾ‼︎」
杏花「へえ〜、感心感心‼」
十兵衛「火星帰リノ、帰星子女デ、女子水泳ノ地球代表選手、杏花・E・ティアー‼︎」
杏花「うんうん、それで⁉︎」
十兵衛「ツンデレデ可愛イスギル、巨乳スイマーデアルト話題‼ 怒ルト恐クテ、男ヨリ腕ッ節ガ強イ‼」
杏花「それは余計な情報よ‼︎」
十兵衛「杏花恐イ、杏花恐イ‼︎」
麻里奈「まあまあ姫、抑えて抑えて…」
十兵衛「大人気若手小説家、雪月萌‼︎」
萌「あたしも…⁉︎」
十兵衛「アイドル並ミノルックスデ、オタクニ大人気‼ ソノ反面、腹黒デ毒舌家デ、インタビュアーヤ、アシスタントヲ度々、泣カセテイル‼」
萌「否定できず…」
麻里奈「そう落ち込まずにお嬢…」
十兵衛「大人気グラビアアイドル、華園明日美‼︎」
明日美「まあ、お利口さん‼」
十兵衛「華ノヨウニ麗シキ女子、T173・B100(I)・W60・H100ノ、ダイナマイトセクシーボディノ持チ主‼ 世ノ男ノ目線ヲ釘付ケニシ、スケベ心ヲ絶賛鷲掴ミ中‼ 明日美、ボインボイン、ボインボイン‼︎」
明日美「いやん、十兵衛くんのエッチ…♡」
麻里奈「ヌフフ…、AIの目線も釘付けにしたのぉ…、明日美殿…」
杏花「ちょっと、アンタ十兵衛に一体どういう学習させてるのよ‼︎」
麻里奈「十兵衛は人間により近い人格形成と学習能力を身につけさせるため、リアルな人間の男子の自律回路を組み込んでいるのでござるよ」
萌「なるほど」
明日美「だから女の子に目がないのね」
そのあと、十兵衛は悠理をじっと見つめた。スキャンして人物を特定しているようだ。
十兵衛「……………」
悠理「何?」
十兵衛「照合ナシ…。オ主、何者?」
悠理「大和悠理」
十兵衛「大和悠理…、照合ナシ。謎ノ多イ奴ダナ」
悠理「…?」
十兵衛はアームを前に差し出し、悠理に握手を求めた。
十兵衛「小生ノ名ハ、十兵衛。以後、オ見知リオキヲ」
悠理「よろしく」
悠理と十兵衛は互いに握手した。
直虎「それにしても、小学生でこれを作るなんてあなた本当に天才ね」
麻里奈「伊達にMENTORの会員、IQ500の天才少女をやってはござらんよ」
レーチェル「「プラズマエンジン」を小型化した「アステロイド・プラズマエンジン」を搭載するなんて、まるで小型アーマード・ギアね。
十兵衛くんの開発技術は、今や宇宙連邦政府軍のアーマード・ギアや兵器群にも流用されているわよ。もちろん、うちもね。
研究班の連中も研究・開発が捗るとみんな絶賛してるわ」
麻里奈「まあ…、拙者の父上が科学者でござったからな…」
杏花「そうだったの⁉︎」
萌「初耳」
明日美「著名な方なの?」
麻里奈「ま…、まあ…」
杏花「気になるー‼︎」
萌「教えて、教えて‼︎」
悠理「僕も興味あるなぁ」
悠理たちが興味津々に近寄ると、麻里奈は顔を背けた。
麻里奈「む…、昔の話でござるよ‼︎ 十兵衛、一緒にカラオケルームでミニライブの練習でもするかの‼︎」
十兵衛「スルゾ、スルゾ‼︎」
麻里奈は顔を背けたまま十兵衛を連れてカラオケルームへ向かった。
悠理「どうしたのかな?」
明日美「まずいこと言ったかしら?」
杏花「いつも変わり者だけど、何か変よね?」
萌「何か隠してるね」
直虎「詮索はやめなさい。麻里奈も色々と事情があるのよ。あなたたち4人に事情があるようにね」
杏花「そうね、深掘りされるのは嫌だからね」
最終隊員「立花司令、大変です‼︎」
直虎「どうしたの⁉︎」
最終隊員「とにかく、今すぐ司令室まで来て下さい‼︎」
直虎「分かった、すぐ行くわ‼︎」
悠理たちと直虎とレーチェルは司令室へ向かった。司令室には富士山と福山もいた。
富士山「立花司令‼︎」
福山「よう、立花。レーチェルも一緒か。三人も揃うなんて奇遇だな。おっと、いけない…‼︎ 今は上官でしたね、立花少佐」
レーチェル「久しぶりね、福山くん」
直虎「どうも、福山特務大尉…‼︎」
杏花は目をキラキラと輝かせて福山の方を見つめていた。
福山「ん…、俺に何か用…?」
杏花「福山さん♡ あ…、福山特務大尉♡ 私、新しく最終自衛隊に配属になりました、杏花・E・ティアー隊員です♡」
福山「ああ、これはどうも。君の噂は聞いているよ。何でも水泳の地球代表選手なんだってね」
杏花「はい♡ 是非、今後ともよろしくお願いします‼︎ 福山特務大尉♡」
福山「福山さんでいいよ、杏花ちゃん」
富士山「静かに‼︎ 今日の政見放送だ」
メインモニターを見ると政見放送が流れており、そこには徳川が映っていた。
直虎「えっ…、嘘でしょ…⁉︎」
徳川「この度、新日本政府の第368代内閣総理大臣として就任いたしました、前副総理の徳川家人です。
阿蘇部前総理の不祥事による内閣総理大臣の辞任…、一国の政治家として今回の一件は、はなはだ
つきまして、……………」
レーチェル「以前から政権奪取を狙っていた男ね。密かに星龍會と結託し、色々と工作をしているとの情報を諜報班が掴んでいたみたいだけど、本当だったようね」
福山「徳川の側には脇坂、小早川、朽木、赤座、小川…」
悠理「ねえ、あの人って悪い人なの?」
萌「あたし政治のこと興味ないから全然知らない」
杏花「名前と悪い噂なら知ってるわ」
明日美「自分の地位と名誉のためなら手段を選ばない人よ」
「バンッ…‼︎」
富士山が両手をメインモニターの前につき、顔を下に向けた。
富士山「最悪のシナリオだ…‼︎ こんな展開になってしまったのは、私にも責任がある‼︎」
直虎「長官、落ち着いて下さい‼︎」
富士山「徳川の本当の狙いはバスターシリーズとジェネバスターの奪取…‼︎ 奴は必ず隙を突いてここを狙ってくるに違いない‼︎
私もいつまで長官と大臣の職に居続けられるか分からんぞ‼︎」
直虎「長官…」
富士山「立花司令…、私に万が一のことがあれば、あとのことは頼む…‼︎ 私の代わりを…、Gトルーパーズを導いていけるのは君だけだ‼︎」
直虎「はい…‼︎」
富士山「福山くん、レーチェル博士、立花司令のサポートを頼むぞ‼︎」
福山・レーチェル「はい」
徳川「よって
「パチパチパチパチパチ…‼︎」
新日本政府の議員たちから徳川に拍手と歓声が上がった。
脇坂「上手くいきましたな…、徳川総理」
徳川「次はバスターシリーズとジェネバスター…、そして富士山の辞任と最終自衛隊の解体だ」
小早川「徳川総理、本当に大丈夫なのですね…⁉︎ くれぐれも秀憲を面倒事には巻き込まないでいただきたい…‼︎」
徳川「安心しろ小早川。我々には、あのお方がついているのだぞ」
その頃、麻里奈はカラオケルームでミニライブの曲を練習していた。
曲はアンドロメダまでかけぬけ隊の1stシングル、私をアンドロメダまでつれてって♡だった。
麻里奈(歌)「きっと、きっと、つれて行って〜‼︎ 天の河を越えて〜‼︎
もっと、もっと、つれて行って〜‼︎ 私と君で〜‼︎
アンドロメダまで〜〜〜‼︎」
麻里奈「ふぅ〜、今日も絶好調でござる‼︎」
十兵衛「オ上手、オ上手‼︎」
麻里奈「さて、一休みするかの…」
杏花「麻里奈ーーー‼︎」
麻里奈「あの声は杏花姫…」
杏花「麻里奈‼︎ やっぱりここにいた‼︎」
麻里奈「どうなされた、皆の衆⁉︎」
杏花「どうなされたじゃないわよ‼︎ 大変なことが起こってるのよ‼︎」
麻里奈「大変なこと…⁉︎」
悠理たちは麻里奈に政見放送のことを話した。
麻里奈「徳川家人が総理大臣に…⁉︎」
杏花「徳川のことだから、バスターシリーズやジェネバスターを狙ってくるわ‼︎」
十兵衛「狙ワレル、狙ワレル‼︎」
萌「それどころか、長官も引きずり下ろされるかもしれないってさ」
明日美「阿蘇部前総理は、「
麻里奈「逆に徳川の黒い噂は、UV tuberのジャーナリストたちの間でたくさん流れているが、ほとんどは検閲に引っかかっているでござる…」
杏花「そうそう…、徳川が星龍會と裏でつながりを持っているとかね…」
麻里奈(せ…、星龍會…⁉︎)
杏花「「TRUST《トラスト》」とか言う三流ゴシップ雑誌の、三流記者が書いた記事かと思ったら、まさか本当だったなんてね。
この前のチンピラ軍団だって、どうせアイツがけしかけたんでしょ‼︎ 本当に汚い奴よね‼︎」
麻里奈「あ…………っ‼︎」
悠理「どうしたの麻里奈。顔色が悪いよ」
麻里奈「大丈夫でござる‼︎ ちょっと…、疲れているだけでござるよ…‼︎」
十兵衛「小生モ、付キ添ウゾ‼︎」
麻里奈は休憩室へ向かった。
直虎「みんな、どうしたの?」
明日美「立花司令」
悠理「麻里奈が星龍會って言う名前を聞いたら、顔色を変えてどこかへ行ってしまったんです」
萌「本当にどうしたんだろうね」
直虎「麻里奈…」
Gトルーパーズたちが戦っている間に、徳川は阿蘇部おろしで総理大臣の地位に就いてしまった。
これから先、最終自衛隊はどうなるのか?
そして、麻里奈は過去に一体何があったのか?
【次回予告】
ナレーション:
福山滋です。俺の名前を覚えてくれたら嬉しいな。
徳川の奴、もう最終自衛隊にまで手を伸ばしてきたか。あたり一面を宇宙連邦政府軍の奴らに囲まれ、俺たちは大ピンチだ。
さて、このピンチをどうやって…。
あれ…、どうしたの…、杏花ちゃん…⁉︎
次回、宇宙創戦記XTENTION‼︎
【第33戦記 Shout《シャウト》‼︎】
と言う話らしい。お楽しみに。
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