密室空間では嫉妬を止められない①
「結構人いるなぁー」
「人気の映画なのかな」
指定された番号のシアタールームに入ると、結構席が埋まっていた。
「てか透矢。ポップコーン塩バターとキャラメルの二種類買うとか欲張りすぎ。食べれるの?」
「そのための依子だろ」
「うーわ。女の子に食べ物を食べさせて太らせるとかサイテー」
「いやいや!? そんな簡単に太らないだろ!!」
なんか周りからも視線を感じるんだが……きっと気のせいだよな! 女の子のデリカシーの部分とかに触れたとかじゃないよな!!
「まぁ、アタシはいいけどさ」
「いいのかい!」
指定された席に座る。真中ぐらいの席でスクリーンもちょうど見やすい。
それしても………
「たっくん。あーんっ」
「みこたんの手で食べさせもらえるとか幸せ〜〜」
「つよしくん。肩貸して〜〜」
「はいはい。全く。お前は甘えん坊だな」
やけにイチャイチャしたカップル多いな!!!!
「やーん、庄司くんくすぐったいよ〜」
「しっ! 声抑えろよ〜〜」
俺たちの一個隣の男女も何やらいちゃつき始めた。
「………なんか、ごめん」
「なんで透矢が謝るのさ」
すると依子が俺の耳元で囁くように、
「ア、アタシたちも、その……カップルなんだし……別に恥ずかしがることなくない?」
「っ!?」
思わず依子から距離を取る。
た、確かに俺たちは周りでいちゃついている男女と同じ、恋人だが……。
また依子の顔が近づいてきた。
「じっとして」
「え……」
ま、まさかこんなところでキスするんじゃ……。
「お、俺っ! 一回トイレ!!」
俺は急いでトイレに向かった。
「もうっ。ただキャラメルのカスが口に付いたのを……唇で取ってあげようとしたのに……」
◆◇
結局トイレから戻ってきたのは、映画開始の5分前だった。
………色々と落ち着かせてたんだよ。
上から席を探す。すぐさま依子を発見。しかし、空いているはずの両脇の席には、他にも人間がいるようで……
「え、連れがいるからダメ? この後ちょっとだけ遊ぼうよ〜」
「そいつロクでもないって。君みたいな可愛い子を置いていくなんて〜」
大学生っぽいチャラそうな2人組に阻まれ、依子は不服そうな顔をしていた。
けど依子はこういうのに慣れているし、大丈夫だろう。一向に断らないのは不思議であったが。
「ねぇねぇ、さっきから黙ってるけどどうしたの?」
「無視はさすがの俺たちも傷ついちゃうなぁ〜」
「………」
やはり依子は口を開かない。
いつもみたいに冷たくあしらうんじゃないのか。
興味ないと言った態度で、拒絶するんじゃないのか。
——俺以外の男は苦手だったんじゃないのかよ。
「おい」
「あ?」
気づけば男たちのところへ来ていた。
そいつらはめんどくさいと言った表情を浮かべ。
「チッ、なんだよ男連れかよ……」
「ああ、男連れだよ。俺の彼女になんか用か?」
「まあまぁ彼氏さん。そんな怒らないで。俺たちも彼氏持ちの女の子に手を出そうなんて趣味はねぇから」
「でも、こんな可愛い彼女を放置するとか手を出していいって言ってるもんだけどな」
「テメェ……」
「透矢っ」
ここで初めて依子が口を開いた。
なんで今なんだ……。
男2人は大人しく去っていった。暴力沙汰にならなかったからまだマシか。
「透矢、ありがとうね」
「別に」
「……透矢?」
低い声が出て自分でも驚く。
なんで俺、こんなにムカつてんだ……。
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