第36話 黒戸 紅た秘密結社
ここは桜島市、東京の西に位置する市の一つ、人口百万人が暮らし、商業や工業も盛んな大都市で、北は山に囲まれ、南にはそこそこ大きな湖が存在し、自然豊かな土地と中心地には大きなビルが立ち並ぶ大都市が形成された、とても自然と都市が上手く融合した恵まれた地域である。
そんな桜島市の北、地獄山の
この中学はかつて全国でも有名な問題児達が集まる、日本政府が唯一全国で指定した、危険中学校の一つであった。
だが何故私、
〜桜野中学校生徒会室〜
「雫ちゃん、全ての事は上手く運んでる?」
私は現桜野中学校三年で現生徒会長兼桜野中学番長兼桜野中学校裏番長を務める上にもう一つ、白愛会会長の裏の更にその裏の顔を持っている、黒戸 紅は黒縁眼鏡にエメラルド色の三つ編みをした、現生徒会副会長兼白愛会副会長の
「はい会長、
雫は眼鏡をクイッと持ち上げ淡々と答えた。
「も〜う……雫ちゃんは堅いよ、今は二人っきりなんだからいつもみたいに名前で呼んで」
私は駄々をこねて雫に文句を言う。
「ダメです、会長……普段からアホ
雫は表情を一切変えず、淡々と私に苦言? 悪口を
「ア、アホ面? ま、まぁ聞かなかった事にしましょう……それよりそんな固い事ばかり言って、白お兄ちゃんはそんなお堅い雫ちゃんは嫌いだよ」
私はイラッとしつつ腹が立ったがその事は心の奥にしまい、心が広い私は雫ちゃんが一番嫌がる様な事を言って話を続けた。
「なぁ、ななな……し、白くんが私の嫌いって言ってましたか? わ、わ、私はまさか嫌われてるんですか!?」
雫はさっきとはうって変わり、お兄ちゃんの名前を出すと慌てて動揺し、白お兄ちゃんにどう思われてるか心配になっている。
「はっはっはっ冗談、仕返しだよ、本当はお兄ちゃんね『雫ちゃんは元気にしてる? また遊びにおいでよ』って言ってたよ」
私は雫の慌てぶりを笑い、お兄ちゃんが本当に言っていた事を話してあげた。
「ほ、本当ですか嬉しい? ぜ、是非! また遊びに行かせてください、紅会長がいない時にでも邪魔なので」
雫は喜びながらもちょいちょいイラッとする様な事を言ってきた。
「んっ? あれちょっと雫さん、それはどう言う意味かなアッハッハッハッ……カチン! 誰が邪魔じゃ、誰が! こんな地味で暗い黒縁眼鏡の女とお兄ちゃんを私が二人っきりにするわけねーだろ、バーカ、バーカ」
心の広い私も流石に堪忍袋の緒が切れ、このあわよくばお兄ちゃんと二人で仲良くイチャイチャしようとする側近に罵声を浴びせた。
「はぁはぁ〜!? 何言っちゃてくれちゃってるんですかねこの貧乳、チビの幼女体型は」
雫もキレ、生徒会長室では犬も食わない醜い罵声の小競り合いが始まった。
私と雫がこうしてなんでも言い合えるような仲になったのもあの日……そう、あの聖夜の夜から始まった。
ーー
ーー
ーー
〜数年前の聖夜の夜〜
「あなたお兄ちゃんに全てのこと打ち明けて話してないわよね? 」
私は雫を座布団に座らせると、私はベッドに座り問い詰める。
「えっ? わ、私は全部話したよ……全部……信じてもらえないのはしょうがないけど……」
さっきとは雰囲気の違う私に戸惑い、ビクビク震えながら雫は答える。
「なら具体的に聞くは、何故に貴方が美希ちゃんにそんな事をしなきゃならないの? そもそも骨川って奴は雫を利用しなくても勝手に仲間内で美希ちゃんを
私は不思議に思いながら自分の考えを述べてから雫に聞いた。
「そ、それは……それは……無理、言えない」
雫は顔を赤くして頭を振る。
「言えないって……だったら私は貴方を信用出来ないし、骨川に脅されたってのも嘘で、実はあんたはその骨川って奴とグルなんじゃ……」
私は雫の態度に腹が立ち、敵とみなし追い詰めようとしたが。
「ち、違う! 違うの……紅ちゃん? あの日……私はただ、ただ……黒戸くんに……白くんにラブレターを渡したかっただけだったの……」
雫は大声で叫び否定し、私に恥ずかしそうに話し出した。
「ラ、ラブレター? だ、誰に……?」
私はこの話の流れでなんとなく分かってはいたが、敢えて雫に問いかけた。
「わ、私ね……白くんが、白くんが昔から好き、大好き! 他の誰よりも一番に白くんが大好きだった……なのに……なのにいつも白くんの側には美希ちゃんがいた……美希ちゃんが……」
雫は恥ずかしそうに話しながらも、『好き』と言う気持ちだけは強い意志で訴えかけるが、『美希』と言う単語を出すともの凄く悲しく辛そうな表情と声色になり話を続けた。
「私は骨川君からそう言われた時に確かに嫌だった……けど、どこかで私の心のどこかでね、骨川君が美希ちゃんと白くんを引き離してくれるんじゃないかって……そんな期待してる自分がいたの、だから、だからまさかここまで色々な人を巻き込んでしまうなんて……ごめんなさい紅ちゃん……」
雫は緊張からか体を震わせて、涙や鼻水を垂らしながら酷い顔で、私に何度も頭を下げて謝った。
私はベッドから降りて雫ちゃんの頭を無い胸に押し当て、優しく抱きしめ。
「どう雫ちゃん……心の
私は雫の頭を撫でながら本当の気持ちも伝えると、しばらく部屋に沈黙が走る。
「私もね……お兄ちゃんが……白が大好き、誰にも負けないくらい一番大好きで愛してるの」
私の白への思いを雫に伝えた。
「えっ!? でも紅ちゃんと白くんは兄妹なんじゃ……」
雫ちゃんは突然の私の告白に頭が混乱し戸惑っている。
「うん……そうだよ、でも関係ない好きなものは好きなんだから……だから雫ちゃんゴメンね、白は渡せない……えへ」
私も雫ちゃんに負けじと白への想いをぶち撒け、雫ちゃんへのライバル心を剥き出しに挑発した。
「うん、分かった……紅ちゃんには悪いけど、私のが好き、一番白くんを好きなのは譲れないし、私の方がもっと、もっと白くんを愛してるもん」
雫ちゃんはさっきまで泣いてたのが嘘のように、私に対してムキになって言葉を返してきた。
それを見た私はなんか可笑しくて笑い、雫ちゃんもまた私を見て笑っていた。
その夜、私と雫ちゃんは同じ布団で眠くなるまで一晩中一緒に色々な話で盛り上がり本当の意味で仲良くなった。
〜早朝〜
「ねぇ雫ちゃん!」
私は起きるなり、朝の挨拶もそっちのけで隣で寝てる雫ちゃんを叩き起こし、ある提案を雫ちゃんに持ちかけた。
「えっ!? な、何?」
雫ちゃんは驚き寝ぼけていた目が見開いて私を見つめる。
「雫ちゃんは今は学校行ってないでしょ? 私も今は怖くてなかなかいけないでいるの、だから一度さ雫ちゃんは留年して私と同級生になろ?」
私は真剣な目でこれからの未来の話を打ち明けた。
「えっ!? で、でもそんな事出来ないよ、義務教育なんだよ」
雫ちゃんは困った顔をしていた。
「義務教育とか関係ない、出来ないんじゃないよ、しようとしないだけ、その制度はあっても実際に使ってないだけで、
私はこんなにお兄ちゃんの事を好きでいてくれる彼女をほっとけなかった、一晩寝たフリをしてずーと雫ちゃんの事を考え最終的に辿り着いた答えがこれだった。
「 もし仮に学校行けるようになったとして、永遠に同じ学年で骨川に絡まれ、同じ事の繰り返しが続くだけなんだよ、我慢できる? 逃げる事は悪い事じゃないし、逃げる手段があるなら逃げよう、それに学校に行きたくないわけじゃないんでしょ? 同じ学年なら私も守ってあげられる、それに私も雫ちゃんに守ってほしい……雫ちゃんとならまた学校に行ける気がするの……」
私は色々と言葉巧みに彼女を誘った。
「うん……ても、ほら……」
雫ちゃんはなかなか乗ってこない。
煮え切らない彼女に少しイラッとしながらも。
「ほらそれに学年下げたら、お兄ちゃんを先輩って呼べんだよ」
私は投げやりに、思いつきで適当に言ってみた。
「えっ!? あっ……えへ」
「ん!?」
なんか雫ちゃんの顔が一瞬ニヤケたような……
「擬似年下キャラに、後輩キャラ、美希ちゃんなんかの良くある結局主人公とは結ばれないような幼馴染キャラより遥かに人気がある後輩キャラになるチャンスなんだよ雫ちゃん!」
私はここぞとばかりに雫ちゃんに畳み掛け、後輩キャラを力説する。
「やる! 私は白先輩の後輩になる」
雫は目を輝かせて私にうったえる。
「えっ!? あっ、う……うん」
あまりの急な即答に私は若干引き気味に頷き、雫ちゃんを誘う為に一晩かけて色々考えた戦略の時間を返せ! と心で叫んだ。
「でね雫ちゃん、これとは別に私ね考えていた事があるの……私、黒戸 紅は秘密結社を作るわ」
私は雫ちゃんを見つめ、真剣な口調で発表した。
「? ? ? はい?」
雫ちゃんは顔は笑っているが、目が『コイツ大丈夫か? ついにネジが一本ぶっ飛んだな』と言った様な表情を浮かべた。
「まだ会員は私と雫ちゃんの二人だけど、
私は腰に手を当て、天井を指差しながら自信満々に彼女に話した。
「えっ!? もう私も入ってんの? は、白愛会って、もう名前も決まってんだね……それに桜野中とか、覇権とか、ごめん全く頭に入ってこなかったよ」
雫ちゃんには数ミリも響いてなかった。
「とにかく黙って私について来て、勉強も修行も一緒に頑張ろ!」
私は無理やり握手をし。
「んっ!? なんか今サラッと『修行』とか聞こえたんだけど」
雫ちゃんは私の発言する言葉一つ一つに引っかかっていたが。
「気のせい」
私はニコニコしながら政治家の様に握手を続けた。
ーー
ーー
ーー
そう、これが我々の秘密結社『白愛会』、白を愛する会の始まりである。
その後白愛会は紅の十億円の資金を
会員も年齢問わず女性限定だがかなりの人数が在籍し、桜島市だけでも会員は数千単位で色々な所で暗躍している。
そしてその巨大な秘密結社を一つに束ねるのが白愛会会長を務める私、黒戸 紅と白愛会副会長の緑山 雫であるのだ。
「この前に捕まった
雫ちゃんは淡々と入手した情報を雫ちゃんなりに整理し報告したあと、お兄ちゃんに手をまた出すんじゃないかという怒りで感情的に先制攻撃の指示を訴えた。
「ダメよ、私達……白愛会はあくまでお兄ちゃんを影で見守るのが鉄則、お兄ちゃんの生活を邪魔してはダメ、それがどんな時でも…… だから雫は辛いと思うけど、本当に最後の最後お兄ちゃんが助けを呼ぶまでは、その時まで我慢してちょうだい、それに……その情報はまだ骨川の全貌を調べきれていないわ、感情だけで動けば必ず足元をすくわれるわよ」
私は雫を説得する様に話す。
「ですが……ただこれだけ情報があれば十分かと、今の白愛会の皆んなの力があれば……この前みたいに事前情報を掴めていない為にあの久須の
雫は拳を握り、爪をめり込ませながら怒りを抑えて謝った。
「副会長はそうでなくちゃね、でもちょっと笑えない冗談が聞こえたんだけど……勘違いしないでね雫、あなたの白じゃないの、私の大好きな白なの、そこはちゃんと理解してね」
私は部下の失言を優しく正した。
「何をおっしゃります会長、私の大切な大好きな白くんで間違いはございませんが、何か文句でも」
雫副会長は私に睨み、私も睨み返す。
「では、これ以上会長と白くんの話をすると会長を攻撃し兼ねますのでここで私は失礼します……あと白くんの復帰の日は先に学校に潜り込むのでお忘れなきよう」
雫ちゃんは少し怒って部屋を出て行った。
「分かってるわよ」
私もムスッとした顔で返事を返した。
「少しあの子たちは不安ね……戦いにおいて一番大切な事は
紅はそんな不安を抱きつつ骨川の資料を改めて見直した。
そうこの不安が的中するとも知らずに。
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