不器用な僕の彼女達の助け方

アツシルック

第1話 序章

1999年7月


二十世紀末に差し掛かり世間では終末論や大予言やらでにぎわっていた時代、ある一つの事件がここ桜島市で起こっていた。


それはせみが鳴く初夏の暑い日、日本一の悪の巣窟そうくつと言われる桜島市の桜野中学校で大規模な喧嘩が繰り広げられている最中さなか


「お、おいなんだありゃ!? 逃げろ茜!」

平凡な顔立ちの少年が空中を指差して叫ぶ。


「えっ!?」

茜と呼ばれた少女は空をを見上げると、そこには空間をえぐった様な穴が浮いていた。


穴は薄気味悪うすきみわるい音を響き渡せ、何かを探すかの様にうごめき空を浮遊ふゆうすると、茜と呼ばれる少女を視野にとらえた瞬間、不気味な穴は少女の方へと近づき頭上で止まる、しばらくすると穴から黒い触手の様な物をニョキニョキと伸ばし、触手はその場に入る数百人はいる学生には目もくれず、触手の様な物は茜と呼ばれた少女をつかまえんとする勢いで襲い掛かかった。


少女は恐怖で震え動けない、触手が茜にジワジワと近づき捕まえようとする、しかしその瞬間。


「早くこの場から離れて逃げろ茜!」

平凡な顔立ちの少年は間一髪で茜の間に入り少女を突き飛ばす、黒い触手はそのまま少年に絡み付き穴へと平凡な少年を引きった。


「て、鉄ちゃん!?」

突き飛ばされた茜は少年の名前を叫ぶ。


「く、黒戸!!」

友人らしき髪がボサボサの大柄な男の子がそれを追いかける。


「や、山田……茜を……」

鉄ちゃんと呼ばれた少年はもがくが触手はどんどん身体中に絡みつく。


「て、鉄ちゃん……鉄ちゃん……」

茜は涙目になりながらおびえた声で叫ぶ。


黒い触手は黒戸 鉄と呼ばれてる少年を穴へと引きり込むとその存在を徐々に縮ませ、黒戸 鉄は大勢が見ている前で忽然こつぜんとその姿を消したのだ。


その後、喧嘩どころでなくなった現場では、警察や色々な団体が黒戸 鉄と言う少年の行方を捜査したが何の手がかりは見つからず、目撃者の連中の日頃の操行そうこうの悪さもあってか、生徒達の悪戯と片付けられ捜査は早々に打ち切られた、当然の事ながら警察の捜査記録すら残る事もなかった。


それからこの事は一部の者だけが知る街の都市伝説とかした。

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