8話 魔法陣が生んだもの

8-1 恩を売ろうか

 支部長からもらった…というか、教わった“魔法陣”とかいう紋様の書かれた紙。

 暗くなると光りだすその紙の魔力の源を探るため、俺達は箱で覆って丸一日放っておくことにした。

 夜になり、レイルと2人で、まだ光ってるか確認する。

 「さて、と。どかすぞ。光ってると思うか?」


 「まだ光ってるくらいだと、洞窟に入る時便利だよね」


 「魔素が減らないからな」


 箱をどかすと、紙は光っていなかった。


 「やっぱり光ってないね」


 「丸一日はもたないか」


 目に力を込めてみても、ただの紙にしか見えない。…いや、待て。


 「ほんの僅かだが、魔素を吸い込んでないか? これ」


 「ん~、たしかに。なんだ、じゃ、これって吸い込んだ魔素を使って光ってたんだ。

  わかっちゃうとつまんないね」


 「つまらないわけあるか! ただの紙が魔素を吸って、しかも溜め込んでることに気付かせないんだぞ!

  それに、今吸い込んでるってことは、そのうちまた光るんじゃないのか?」


 そう思いながらしばらく眺めてると、紙が光りだした。まだ魔素の流入は続いてる。


 「レイル、当たりだ。

  こいつ、紙っぺらのくせに、魔素を吸い込んで、暗くなると光るようになってんだ」


 「魔力の変換効率は相当いいね。

  これ、剣に刻んだら、僕の剣みたいなこともできるんじゃない?」


 随分突飛な発想だな。

 だがまあ、たしかにできたら便利だ。


 「それって、この紋様には何かの意味と法則性があるってことだよな。

  せっかくここに2つ魔法陣があるんだから、共通の部分とか探してみるか?」


 「洞窟の魔法陣も、多分魔素を吸収するよね。だったら、その辺り調べてみる?」


 「まぁ、なんかわかりそうではあるが…危なくないか? うっかり近付いて、俺達が魔法陣に吸い込まれるハメになったら大変だぞ」


 紙に書いた魔法陣を折ると効力を発揮しない、というのがなかったら、帰ってくる最中に俺達の魔力に触れて吸い込もうとしてたかもしれない。

 言っちゃ悪いが、そういう危ないもんを調べるのは、別の…できれば魔力を使えないような学者にでも任せておきたいところだ。


 「そう言われればそうだね。

  ギルドの方ではどこまでわかってるのかな。

  僕やフォルスみたいに魔素の動きに敏感じゃないと、この光る紙が魔素を吸い込んでること自体気付いてないかもしれないよ」


 「そこで恩を売って、成果のおこぼれをもらえたら、かなりおいしいな」


 「そこでそう考えるのがフォルスのいいところだね。

  それじゃ、恩を売りにいこうか」


 「お、珍しいな。

  言われもしないのに一緒に来るなんて」


 「僕としても興味があるからね。

  それに、交渉相手はセシリアあいつじゃないし」


 「なるほど。納得した」


 早速ギルドに向かうと、セシリアが走ってくる。

 珍しいな。こんな時間に外にいるなんて。というか、嫌な予感がする。多分、俺達を呼びに来たな、これは。


 「僕らに何の用? また面倒押しつけに来たわけ?」


 おいおい、いきなりケンカ売るなよ。

 セシリアは、案の定俺達の前で止まり、息を切らせながら話し始めた。


 「面倒ごとで申し訳ありませんが、大至急ギルドにおいでください。

 例の洞窟で大変なことが起こりました」


 ほらな、やっぱり予感が当たった。

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